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長島コラム「乾坤一擲」

3月31日 (水)

台湾総統選挙視察報告 その4・最終回

現状と展望に触れる前に、総統選挙の総括をしておこう。

台湾の有権者はじつに絶妙のバランス感覚を発揮したと思う。統一や中国の干渉を許すあからさまな親中路線にはNOを突きつけつつ、独立へ向けて一気呵成にことを進める動きにも一定のブレーキをかけたのである。同時に行われた公民投票の不成立も微妙な数字によってもたらされた。全有権者の45%強が投票したということは、初めての試みであることと、連宋陣営が投票ボイコットを呼びかけたこととを考え合わせると、まずまずの投票率だったと思う。同時に、これを一応不成立にしたことで、公民投票の結果に神経を尖らせていた中国政府を安堵させることができた。それでも、まったく成果がなかったわけではない。今回の試みを端緒に次回以降の公民投票の可能性を大きく開くことになったからだ。

現状については、日本へも刻々と伝えられているが、@陳総統が、じつに潔く再集計を受け入れ、A国民党内の世代交代が加速化するとともに国親連合の亀裂が次第に明らかとなり、B静観していたアメリカが、中央選管の当選証書交付を受けて、陳総統に対し祝福メッセージを発したことにより、事態は遠からず収拾される方向へ向かって動き出すと思う。「かんべえ」こと畏友・吉崎達彦兄の言を借りれば、「自らの安全保障の基盤である民主主義を、台湾の人々が取り返しのつかぬ程まで傷つけるようなことはしないだろう。」

今後を占う上で、重要なポイントは3つあると思う。第一に国内融和。12月に控えている立法院選挙(総選挙)へ向けて、野党側の内紛も予想される中で、どこまで安定政権の基盤を整えられるか、が陳政権の2期目のカギを握る。

第二に、そのためにも、今回ギクシャクした米台関係を早急に修復しなければならない。その点で、米国の台湾代表部のダグラス・パール氏(駐台大使にあたる)の話はアメリカの懸念を端的に表すものであった。すなわち、陳政権の持っている3つの潜在的な脆弱性である。@「中国は決して軍事的な冒険には出てこないだろう」という過信、A「いざとなったら必ずアメリカが助けてくれるであろう」という過信、B中国研究に深くかかわる人々を「危険人物」として排斥する傾向がもたらす大局的見地の未成熟、が台湾政府の状況判断ミスにつながる可能性を指摘された。

Bについて、私からは、元国民党の最高指導者であった李登輝前総統の対中認識と戦略性を過小評価すべきでない、と指摘させてもらったが、たしかに、中台関係のような一触即発の危機をはらんだ情勢においては、相互の「状況判断ミス」が大事に発展する危険性を常に考えなければならない。この点は、日本も常に念頭に置きながら、友人として、時宜にかなった真摯なアドヴァイスをして行くべきであろう。

第三は、これら国内的、国際的基盤を固めなおした上で、どこまで大胆に対中政策を転換し、中国との両岸交流を促進できるか、が最大の課題だ。

いずれにしても、台湾海峡をめぐる情勢は、中国の軍近代化の動向やアメリカのこの地域へのコミットメントの推移とあわせ、私たち日本としても目が離せない。単なる現状維持政策では現状を維持できない、という世界史の現実を直視して、地域の平和と安定を確保するための不断の努力をしていかねばならない。