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長島コラム「乾坤一擲」

10月20日 (水)

日米同盟の揺らぎ

最近よく聞かれるのが、アメリカ大統領選挙の行方。誰にも予測することはできないだろう。まさに互角。まったく予断を許さない。10月に入ってとくに混沌としてきた。公開討論会における大統領のパフォーマンスの悪さに追い討ちをかけたのが、今月6日に公表された米政府イラク調査団の調査報告書だ。報告書は、「イラク戦争開戦時にイラク国内には大量破壊兵器は存在せず、具体的な開発計画もなかった」と断じ、ブッシュ大統領が叫びつづけてきたイラク戦争の大義を木っ端微塵に粉砕したのである。

それにしても、大統領にとって圧倒的に不利な政府の報告書を、選挙直前のこの大事な時期に堂々と公表するアメリカの民主主義の強さには改めて感心した。7月の参院選挙最大の争点だった年金制度をめぐる最も基礎となる出生率データの公表を選挙後に先送りした日本政府の姑息さと比較すれば、悔しいことだが、彼我の民主主義の強さの違いは明らかだろう。

もう一つ、このところ新聞各紙から集中的に取材を受けているのが、在日米軍再編問題。このテーマは、ワシントンにいた4年前から関心を持ってずっと追いかけてきたテーマでもあり、2年前に『日米同盟の新しい設計図』という著書にまとめた経緯がある。このたび改訂版を出版することになり、石破茂前防衛庁長官から帯メッセージを頂戴したことも記者の間で話題になっている様子。一昨日、毎日新聞に掲載されたインタビュー記事は、ただちにアメリカ大使館が翻訳してアメリカの日本研究者や政府関係者に配信されたそうな。恩師のジェームズ・アワー教授からお褒めのメール・メッセージが来た。

もとよりアメリカ人に誉められようと思って発言しているわけではない。この間の日本政府の怠慢ぶりに我慢ならないだけだ。先日も、アーミテージ国務副長官が来日して、「我々がまずキャンプ座間について、と言い始めたのは、順番が間違っていたかもしれない。10年、15年後の日米同盟の理念から議論を始めた方がいい」(日本経済新聞)と述べたことが報道されていた。

この発言を、新聞各紙は、アメリカ側のアプローチが誤っていたことを米高官が認めた、というトーンで一斉に報じていたが、ピントがずれている。アーミテージ氏は、日本政府への皮肉をこめて慨嘆したのだ!

ここ数年、日米政府は「戦略対話」を続けてきた(ことになっていた)。1996年の日米安保新宣言以来、ガイドラインの策定、周辺事態法、ブッシュ政権の下での日米協力の緊密化、昨年5月の日米首脳会談での「世界の中の日米同盟」合意などなど。アメリカ側は、そのような議論の積み重ねの上に、3年前の「4年ごとの国防政策見直し(QDR)」報告書に則って、このたび、米軍再編のアイディアを日本側に提示したのである。(つまり、こうなることは少なくとも3年前からわかっていたのだ!)

ところが、日本側には、これを機に日米同盟の将来像を一緒に構想し、同盟協力のあり方をさらに進化させようという姿勢はまったく見られなかった。そればかりか、昨年11月以来続けられてきた米軍再編に関する日米協議の場でも、ただただ「御用聞き」に徹してきた日本側交渉担当者の無気力、無関心、無責任ぶりに米側が何度呆れ返ったことか。痺れを切らした米側が日本のマスコミへ協議の一部をリークし、政府はそれに反発する地元自治体への対応に追われ、日米戦略対話どころではなくなってしまったのである。

そこで、アーミテージ氏の慨嘆である。これまで積み重ねてきた「戦略対話」(あくまでカギ括弧つき!)の土台の上に、つまり、「日米同盟の理念についての共通認識」という総論に基づいて、各論として米軍再編案を提示してみたが、結局、日本側は理念についての認識を真に共有していたわけではなく、ただ米側の議論に話を合わせていただけなのか・・・というため息なのだ。だから、もう一度振り出しに戻って「日米同盟とは何のために存在するのか」といった基本的な議論からやり直さなければならない・・・。

これが、アーミテージ氏の慨嘆の真意である。日本政府は猛省すべきであろう。こんなことでは、日本にとって手強いケリー政権が誕生したら、日米関係そのものが厳しい批判にさらされることになるだろう。これも、一日も早く日本の政権を交代して、対米外交を根本的に再設計しなければならない所以だ。