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2005年7月20日
【会議録】第162回通常国会 文部科学委員会
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【斉藤委員長】
長島昭久君。
【長島委員】
民主党の長島昭久です。どうぞよろしくお願いいたします。 きょうは、ことしがちょうど中学校の教科書の採択の年に当たりますので、これは八月の末で採択が終わりますので、ちょうどこの機会しかございませんので、教科書の問題について少し質問させていただきたいというふうに思います。 皆さん御承知のとおり、八〇年代以降、我が国の教科書検定あるいは採択というものは、国の内外で大きな論争を巻き起こしてまいりました。時に行き過ぎた外圧があったり、あるいは偏った言論によって、まあ内圧といいますか、かなりの風圧にさらされたということは、委員の皆さん御案内のとおりだというふうに思います。 そういう中で、毎年、小学校、中学校、高校の教科書の検定、採択そして生徒が使用するという、このサイクルがずっと続けられてきたわけなんですけれども、私は、一人の大人として、あるいは主権者、国民に直接選ばれた衆議院の文科委員会の委員として、子供たちにどのような教科書を提供していくか、こういうことを真摯に議論していく必要がある、そのことは私たちの大変重要な責務の一つだ、こういうふうに思っております。
特に、昨今議論がかまびすしい歴史教科書については、大変重要な問題があるというふうに思っております。先輩方がつくり上げてきた日本の歴史でありますから、その歴史をどのように次世代に伝えていくかというのは大変重要なことだと思います。その歴史は、やはり人間が営むわけですから、光の部分もあれば影の部分もある、成功もあれば失敗もある。失敗の歴史にこそ教訓がたくさん詰められているというふうに思いますし、また、成功例から大いに刺激を受けて、みんなで頑張ろう、こういう子供たちをはぐくんでいくことは非常に重要だというふうに思うんですね。そういう総体として、我が国の歴史に愛着を感じて、あるいは国に誇りを持てるような、そういう歴史教育のガイドブックといったものを子供たちに提供していきたい、これは私の心からの願いであります。 その意味で、私は以前から少し気になっていたことを冒頭にまず御質問させていただきたいというふうに思っているんですが、それは、検定基準に一九八二年につけ加えられましたいわゆる近隣諸国条項と言われるものであります。 これはもう一度皆さんと記憶をたどっていきたいと思うので、八二年の六月に始まった出来事についてちょっと振り返ってみたいと思います。 六月二十六日に、新聞が一斉に、検定によって歴史教科書の中の記述、とりわけ、これまで検定前は侵略というふうに言われていたものが進出という形に検定を通じて書き改められた、こういう報道を一斉にいたしまして、一月たってから、七月に、中国の政府を皮切りに、主に中国、韓国ですけれども、この二つの国から、教科書の記述を是正するように、こういう大きな批判の声、非難の声が上がったんですね。 しかし、その後、これは七月の三十日でありますけれども、当時の鈴木初等中等教育局長が国会で答弁をしておりまして、実は五十六年度、つまり前年の八一年の検定の中において、日中の戦争に関して、検定の結果、「侵略」の表記が「進入」というふうに改まった例はあるけれども、「進出」というふうになった例はないんだ、つまり事実無根なんだと。万犬虚にほえるという言葉が当時はやったのを覚えておりますけれども、虚報だったということが明らかになったわけですけれども、しかし、一たん火がつきますと、外国からの、中韓からの批判はやまず、八月二十六日に当時の官房長官でありました宮沢元総理が歴史教科書についての官房長官談話というのを発表して、事態の収束を図ったんですね。 ここには幾つか項目があるんですけれども、一つは、日韓共同コミュニケ、日中共同声明の認識は現在においてもいささかも変化がない、こういう点が確認をされて、そして、この二つのコミュニケ、声明の精神は我が国の学校教育、教科書の検定に当たっても当然尊重されるべきものであり、我が国教科書の記述についての韓国、中国等の批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正をする、こういうことが談話として発表され、そして九月十四日、当時の小川文部大臣から、教科用図書、つまり教科書の検定調査審議会に対して、「歴史教科書の記述に関する検定の在り方について」の諮問がなされて、そのときの指針によって、今後の検定において、韓国、中国を初めとするアジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議を依頼した、こういうことであります。 そして、十一月の十六日、二月後に、この審議会から文部大臣に対して「歴史教科書の記述に関する検定の在り方について」という答申が行われ、その結果、検定基準の中に次のような一項目が挿入されました。それは、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること。」こういう一項が挿入をされたわけであります。 これをいわゆる近隣諸国条項というふうに呼んでいるわけですけれども、この近隣諸国条項がどの程度検定に実際に、八二年以降今日に至るまで影響を与えてきたか。一方の論者は非常に影響を与えてきたと言うし、そうでもないと言う人たちもいるわけですけれども、これが実際どのように影響を与えてきたかということについて、きょうは少し文部科学省から説明をしていただきたい、こういうふうに思うんです。 当時の新聞を見ますと、これは読売新聞の八二年の十一月二日、いや、その前に十月の十六日、この十六日の読売新聞の朝刊によりますと、文部科学省は検定方針を大転換した、そして、中国侵略あるいは三・一独立運動、これなど十一項目についてはあえて検定の意見を控えるということを決めたというふうに報じられているんです。 ちなみに十一項目の内容なんですが、中国関係では日中戦争の侵略あるいは南京事件、それから韓国関係では韓国に対する侵略行為、あるいは土地調査事業、三・一独立運動、神社参拝、日本語の使用、それから創氏改名、強制連行、その他東南アジアへの進出、沖縄戦、この十一項目が列挙されて、この点については近隣諸国との関係に配慮して教科書の執筆者の表記、表現をいわばノーチェックで通していく、こういうことが決められた。 これはいろいろな方が批判をしておりますけれども、本当にこれでいいんだろうか。近隣諸国との善隣友好というのは大変重要なことだと思いますけれども、我が国の教育というのは我が国の主権の発露でありますから、この我が国の主権を一方的に外国に譲っていいんだろうかという意見があるわけなんです。 文部科学省にお尋ねをしたいんですが、実際に八二年にこの宮沢官房長官談話が発表され、小川文部大臣から審議会に諮問がなされ、そして最終的に検定の基準が一つ加えられた。この過程の中で、その審議会で、今申し上げた十一項目について検定意見を特に付さない、こういう方針が実際に決められたのかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
【銭谷政府参考人委員長】
お答え申し上げます。 ただいま先生の方からお話がございましたように、昭和五十七年当時、教科用図書検定調査審議会におきましては、中国や韓国などアジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議を行ったわけでございます。昭和五十七年の十一月十六日に、我が国と近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに当たっては、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることとする旨を検定の基準として加える必要があること等の答申を行ったわけでございます。 この答申を踏まえまして、教科用図書検定基準が改正をされ、いわゆる近隣諸国条項が追加されたわけでございますが、先生御指摘のような検定方針というものはございません。 歴史教科書の検定は、あくまで学習指導要領と教科用図書検定基準に基づき、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本とし、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て実施をしているところでございます。
【長島委員】
今の銭谷局長の答弁、私は全く異論ないんですけれども、ただ、昭和五十七年、八二年の十一月二十五日付の文部広報に、その二面に、当時答申に当たった社会科の担当の第二部会部会長の談話が掲載されているんですが、そこにこう書いてあるんですね。「この答申においては、我が国と近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに当たっては、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることとする旨を検定の基準に加える必要がある」、「この基準の適用により、例えば、今後「侵略」の表記については、原則として検定意見を付さないことになろうかと思います。」こういう談話を発表しているんです。 今の局長の御答弁とこの第二部会長の談話と食い違うんじゃないかと思うんですが、もう一度御説明いただけますか。
【銭谷政府参考人】
お答えを申し上げます。 ただいまお話のございました当時の第二部会長のコメントは、当時、教科用図書検定調査審議会において、アジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議をし、新たな基準を設けることなどを答申したことに付随いたしまして、今後の検定について予想したもの、こういうふうに考えられるわけでございます。 先ほど申し上げましたように、十一項目云々といったような検定方針というものはないわけでございまして、歴史教科書の検定というのは、学習指導要領といわゆる近隣諸国条項も含めた教科用図書検定基準に基づいて、検定の時点における客観的な学問成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として、厳正に実施をしております。 なお、この第二部会長談話でも、最後の部分で、「教科書検定は、いうまでもなく教科書の記述が客観的で公正なものとなり、かつ、適切な教育的配慮が施されたものとなるようにとの見地から行われるべきであり、」というふうに部会長御自身もコメントをしているところでございます。
【長島委員】
では、少し角度を変えて質問させていただきますが、それでは、八二年以降今日までの検定の過程で、近隣諸国条項に基づいて検定意見が付された事実はありますか。あるとしたら教えていただきたいと思います。
【銭谷政府参考人】
検定意見を付す場合には検定基準上の根拠を示すわけでございますけれども、過去の近隣諸国条項の適用例としては、例えば平成三年度検定の中学校社会科、公民的分野について、アジアの諸国の人々に第二次世界大戦で大きな被害を与えるなど「過去に迷惑をかけた歴史を持っていることを忘れてはならない」という記述に対しまして、「「迷惑をかけた」という記述では、近隣のアジア諸国との間の歴史事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされているとは言いがたい」という検定意見を付した例がございます。 なお、今回の平成十六年度中の中学校用の教科書の検定においては、いわゆる近隣諸国条項そのものを適用したという例はございません。 具体の検定意見は、従来から、それぞれの記述の欠陥の趣旨を最も的確かつ具体的に指摘でき、申請者による修正が最も適切に行われやすい条項を一つ選んで適用しているといったようなことから、ことしの検定においては近隣諸国条項の適用の事例はないということでございます。
【長島委員】
ちょっと大変あいまいな御答弁だったような気がするんですが。
基本的に、この近隣諸国条項というのは私はいかがなものかと思うんですね。これは非常に微妙な問題だと思うんです。国際協調というのはすごく重要だし、さりとて、自分の国の歴史をどのように自分たちの子供たちに教えるかということは、押しなべてこれはその国の大人がしっかりと主体的に考えなければならない、こういうことだろうと思いますので、これをどうやってうまくバランスさせるかということで皆さん知恵を絞られたんだというふうに思うんですが、原点に返って考えると、この近隣諸国条項なるものが出てきた経緯というのは、まず最初に新聞、マスコミの大きな誤報から端を発しているということは、もう一度今日振り返る必要があるのじゃないか。 先ほど銭谷局長もおっしゃっておられたように、検定というのは、もちろん検定基準も重要ですけれども、そもそも学習指導要領にのっとって行われるわけです。学習指導要領に書いてあるんですね、国際協調の精神を養うというのは。これは歴史的分野の目標の第三番目のところに、「歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ、我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに、他民族の文化、生活などに関心をもたせ、国際協調の精神を養う。」と。 ですから、余りこれまでも使われてこなかった、あるいは誤解を招いてきた近隣諸国条項なるものを、今後もそのまま維持しておくことにどれだけの意味があるのだろうかというふうに思うんですが、文部科学大臣、近隣諸国条項の扱い方も含めて、ぜひ大臣の御所見をお伺いしておきたいというふうに思います。 いや、大臣。もう局長のおっしゃることはよくわかりましたので、大臣の所見だけ。
【中山国務大臣】
学校教育におきまして、国を愛する心や我が国の歴史に対する理解を深めるとともに、国際理解あるいは国際協調の精神を培うことは極めて大事である、このように考えているわけでございまして、中学校の学習指導要領の社会科、歴史的分野の目標におきましては、我が国と諸外国の歴史や文化が深くかかわっていることを考えさせるとともに、国際協調の精神を養うこととされているところでございます。 今話が出ていますけれども、教科書検定におきましては、昭和五十七年に、特に我が国と近隣アジア諸国との相互理解、相互協調を一層進める上で、教科書の記述がより適切なものになりますように、近隣諸国との国際理解と国際協調の観点から配慮する旨の新たな検定基準を設けたところでございます。
御指摘ありましたように、これはそもそもはマスコミの誤報から始まったんだという話もございました。また、近隣諸国条項に過度にあるいは反応したというような面もあったかもしれませんが、こういった精神というのは、私はずっと続けてあるべきだ、こう思っているわけでございまして、文部科学省といたしましては、今後とも、このような学習指導要領や検定基準に基づきまして適切に教科書の検定を行ってまいりたいと考えております。
【長島委員】
ありがとうございました。
私も、歴史認識というのはなかなか共通化することは難しい、それぞれの国が歴史の認識を持っていて、それを国際協調の観点でうまく調整するのがまさに外交の役割だというふうに思いますので、歴史教科書にまで外交の役割を担わせるというのは私は少しやり過ぎじゃないだろうかと思います。思いは共有をさせていただいているというふうに理解をして、次の論点に進んでいきたいと思います。 さて、検定ですけれども、昨年の四月から開始をされて、ことしの四月の五日に検定結果が一斉に発表されました。いよいよ今、全国の教育委員会で採択に向けた作業が進んでおります。八月三十一日がその期限とされておりますが、今、全国の教育委員会で進められている採択作業の進捗状況といいますか、現状報告を簡単にしていただきたいと思います。
【銭谷政府参考人】
教科書の採択でございますけれども、それぞれの採択地区におきまして、ことしの八月の三十一日までにその採択地区としての使用する教科書について決定をするということになっております。 現在、順次、各採択地区において協議会を開催して、採択事務が取り進められている状況でございまして、一部には、もう採択する教科書を決定した協議会もあるという状況でございます。
長島委員
そういう状況の中で、今文部科学省が最も心を砕いているポイントをお示しいただきたいと思います。今こういう採択のプロセスの中で、文部科学省は何に一番気を使っているか、心を砕いているか、御答弁いただきたいと思います。
【銭谷政府参考人】
教科書の採択につきましては、毎年、文部科学省として指導通知を出しているわけでございますけれども、そのポイントとするところは、採択をする採択権者がその権限と責任のもとに、教科書の内容について十分な調査研究を行い、適正な手続によって行われるべきであるということを徹底しているところでございます。
すなわち、適正かつ公正な採択の確保ということが大変重要でございますので、今はそのための各採択権者の対応ということを強く求めているところでございます。
【長島委員】
今適正、公正というふうにお話がありましたけれども、その中でも非常に重要なのが、四月十二日付の局長名で出されている通知にもありますが、静ひつな採択環境を確保する、こういうことなんだろうというふうに思いますね。 その点で、今栃木県の大田原市で起こっている出来事というのは、私はちょっと看過できないと思っておりますので、触れさせていただきたいと思います。 七月の十三日に栃木県の大田原市で、論争を呼んでおります扶桑社が発行する歴史教科書、これが全国に先駆けて採択をされました。しかし、大田原市の教育委員会にはこれに反対する人たちから抗議の電話やファクスが殺到して、千通まで数えたけれどもそれ以上は数え切れないと言っていましたけれども、その十三日の採択の前日の十二日には、扶桑社教科書の採択をやめないと大田原市の子供を次々に殺す、こういう脅迫電話まで市の教育委員会に飛び込んできた。これは常軌を逸していると思うんですね。 市内の子供たちを次々に殺すというのは、これはまさに脅迫以外の何物でもないわけですが、これが市の教育委員会では対応を県警に相談しているというふうに報道されておりますけれども、今、現状を文部科学省としてどのように把握されているか、お答えいただきたいと思います。
【銭谷政府参考人】
大田原市の件についてお尋ねがございました。 文部科学省から栃木県教育委員会に確認をいたしましたところ、七月十二日の朝、大田原市教育委員会に対して、男性から、扶桑社の教科書採択をやめなければ市内の子供を次々と殺す旨の電話があり、大田原市教育委員会では栃木県警に連絡をして対応している旨承知をしているところでございます。
このほか、先生からお話がございましたけれども、大田原市教委に対してファクスやメールが送られてきているわけでございますけれども、ファクスやメールについては、支持する内容のもの、抗議する内容のもの、それぞれあるというふうに聞いておりまして、先週の木曜日、七月十四日までの状況では、約三千八百件ほどファクス、メールが来ているというふうに教育委員会を通じて把握をいたしているところでございます。 なお、採択自体は、採択権者でございます大田原市教育委員会の権限と責任において適正、かつ公正に行われたものと考えております。
【長島委員】
子供たちの安全を確保する、あるいは教育委員を初め関係者の身辺の安全を確保するというのは大変重要なことだと思いますし、先ほどの通知にも、円滑な採択事務に支障を来すような事態が発生した場合や違法な働きかけがあった場合には、各採択権者が警察等の関係機関と連携を図りながら毅然とした対応をとることというふうになっております。
きょうは警察庁にもお越しをいただいていると思いますが、現在の大田原市の状況、あるいは警備その他、子供たちや関係者の安全を確保するための施策について御答弁をいただきたいと思います。
【和田政府参考人】
お尋ねの脅迫電話につきましては、市の教育委員会の方から警察の方に通報がございまして、必要な捜査をしております。 あわせて、子供たち、あるいは学校関係、あるいは教育関係の皆さんの安全につきまして、教育委員会あるいは学校と連携をしまして、必要な箇所、必要な時間帯における警戒を行っておりまして、違法行為の防止の万全を期してまいる所存でございます。
【長島委員】
大臣、これはリーディングケースになりますので、全国に先駆けて採択を発表してこういうことに遭っているわけですから、全国の教育委員の皆さんが注視をしておられると思うんですね。四年前も、杉並区の教育委員の自宅にかみそりの刃が送られてきたり、あるいは新しい歴史教科書をつくる会の事務局が過激派によって放火をされたり、こういうことが続発をしておりますので、ぜひ万全の警備体制といいますか、安全確保の施策を講じていただきたいというふうに思うんです。 この採択を決める教育委員会の会合を外部の雑音や妨害からある意味で守るという手だては、文部科学省として、これは起こってしまってからでは遅いわけで、どのように考えておられるか、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。さっき、採択権者は毅然とした対応をというふうにおっしゃいましたけれども、毅然とした対応というのは限界があると私は思うんですね、個々の教育委員にとりましては。ですから、それをサポートするような何らかの施策が講じられるべきだと思うんですが、その点、いかがでしょう。
【銭谷政府参考人】
去る四月に発しました通知でも示しているわけでございますけれども、やはり採択というものが静ひつな環境のもとで行われる必要があるわけでございます。 円滑な採択事務に支障を来すような事態が生じた場合や違法な働きかけがあった場合には、各採択権者が警察等の関係機関と連携を図りながら毅然とした対応をとっていただきたいということと、今お話のございました採択に係る教育委員会の会議を行うに当たりましては、適切な審議環境の確保等の観点から検討を行いまして、会議の公開、非公開を適切に判断するとともに、公開で行う場合には傍聴に関するルールを明確に定めておくなど、適切な採択環境の確保に努めることが重要で、そのような対応を求めているところでございます。 なお、大田原市の事例で申し上げますと、十三日の教育委員会で当日の議事を非公開にすることを決定し、傍聴者に退席を求めた際に数名の傍聴者から抗議の声は上がったそうでございますが、退席は比較的スムーズに行われたというふうに承知をいたしております。 いずれにいたしましても、静ひつな採択環境の確保に努めるということが極めて重要でございますので、そういう観点から引き続き対応してまいりたいと考えております。
【長島委員】
確かに地域の主体性というか独自性というのは尊重しなければならないわけですけれども、しかし、こういう場合のルールづくりというのはやはり文部科学省としてももちろん考えていかなければならない。要するに、全部地方にお任せというのでは、なかなかこれは難しいんじゃないかというふうに思うんですね。
次の論点に移りたいと思うんですが、これもまた関連していることなんですけれども、別の意味で混乱が起こっているんですね。昨日の産経新聞の朝刊の一面を飾ったニュースですけれども、茨城県の大洗町の教育委員会が共同採択地区の協議会の決定に反旗を翻した、こういうことなんですね。 それはどういうことかというと、大洗町の教育委員会では、今月の六日に全会一致で、これまた扶桑社なんですけれども、扶桑社の歴史教科書の採択を決めていました。ところが、大洗町というのは、水戸市やひたちなか市などと五市八町一村で同じ教科書を選びなさいという第三採択地区を構成しているんですね。そこで、その地区協議会が八日に開かれました。そこで多数決で別の教科書、日本文教出版の教科書が選ばれた。このことに不服を申し立てて、改めて、十二日に自分たちの町に帰って教育委員会を開いて、その協議会の決定を否決した、こういうことなんです。このため、第三採択地区協議会では今週中にも、もう今やっているのかもしれませんが、異例の再協議を行うということが決まったそうであります。 しかも、これはおまけがついておりまして、再協議でも大洗町の教育委員会の方針が退けられた場合には、あくまでも自分たちは扶桑社の歴史教科書を使いたいということで、国の教科書無償配付とは別に、町の予算で歴史教科書を購入していく措置をとる、こういう方針を決めているということなんですが、これも現状をどう把握しておられるのか、文部科学省の見解を承りたいと思います。これは政務官でしょう。
【下村大臣政務官】
私の方からお答えをさせていただきたいと思います。 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律におきまして、教科書採択の権限がその学校を設置する教育委員会にある、つまり、基本的には市町村にあるということを前提としておりますが、採択地区内の市町村教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないということになっておりまして、つまり、このお話の中では第三地区ということになるわけでございます。 平成十三年度の採択の際、採択権者である市町村教育委員会と採択地区との関係が明確でない、御指摘のようなことでございます。また、市町村教育委員会の意向が適切に反映されにくい、こういうことから、採択手続に関してさらなる改善を求める声が出され、それを受けて、平成十四年七月に教科用図書検定調査審議会に改善方策の取りまとめをしていただきました。 その検討のまとめにおきまして、例えば、採択地区協議会等、他市町村の教育委員会との協議に臨む前に、それぞれの教育委員会としての採択の方針等をあらかじめ決めておくことや、協議が今回のように一度で調わない場合も想定して再協議が可能なスケジュールで採択事務を進めるとともに、再協議の場合の手続を定めておく、このように採択事務に関するルールをそれぞれの地区で定め、あらかじめ公表することによって、採択手続を明確にしておくなどの取り組みが考えられるということがこの検討会のまとめで出されました。また、市町村教育委員会間の協議が調わない場合においては、都道府県の教育委員会が適切な指導助言を行い、採択の適切な実施を図っていくことが必要であるというふうにされております。 これを受けまして、平成十四年八月に文部科学省から各都道府県教育委員会に対して検討のまとめを添付して通知を配付しました。その中で、 それぞれの採択地区において、市町村教育委員会間で採択事務に関するルールを定め、予め公表するなど、採択手続を明確にしておく取組を進めるよう市町村教育委員会に対する指導に努めること。また、市町村教育委員会間で行う同一の教科書を採択するための協議が整わない場合には、適切な指導・助言を行い、採択の適切な実施に努めること。 このように指導しております。 文部科学省としましては、各教育委員会がそれぞれの権限と責任において、ただいま御説明を申し上げましたような取り組みを行い、採択地区内において同一の教科書を採択するための協議の方法等を含め、適切な採択事務を行うよう引き続き指導してまいりたいと思っております。 今回のこの大洗町に関しては、基本的には、現段階においては第三地区の採択に従っていただきたい。しかし、それでもどうしてもということであれば、御指摘のように、副教材のような形で大洗町が独自に教材を購入していただいて使うということは可能であるというふうに考えております。
【長島委員】
最後のポイントは非常に重要だというふうに思います。副教材の可能性も否定しないという、これは御答弁としてすばらしいと思います。
文部科学省として改善の努力をずっとこの間されていたのは今の説明のとおりなんですが、実は、四年前に今回と逆のケースが起こっているんですね、やはり混乱して。
これは下都賀地区、これも共同採択地区でありますが、栃木県の小山市など二市八町でつくる下都賀地区の教科書採択協議会での混乱がありました。このときは、一たん、その共同採択地区で多数決で、これまた扶桑社なんですけれども、教科書が決まった。決まったんだけれども、その後、それぞれの単位教育委員会がそれぞれに帰ったところに、二週間の間に猛烈な抗議、こんな教科書を採択していいのかという抗議が、マスコミの取材、それから中国の大使館まで動員して、電話やファクスあるいは嫌がらせの電話、こういうことが続いて、全部これはひっくり返ってしまったんですね、各単位教育委員会の決定で。そして、もう一回集まって協議したところ、十市町のすべての教育委員会で採択協議会の決定が覆ってしまって、結局別の教科書に決まった。 こういう事例があって、恐らくそういうことの反省に立って平成十四年の答申がなされたんだろうというふうに思うんですが、私は、今回この事例を検討してみて思ったんですが、やはり現行法に少し不備があるんじゃなかろうかと思うんですね。これは立法府ですから、一義的には我々の責任ですので、我々がこれは是正していかなければいけないと思うんです。 まず一つは、教科書の採択権がどこにあるのかという問題なんですけれども、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、地教行法と呼ばれているそうですが、教科書採択の権限を教育委員会の職務だ、こういうふうに位置づけているんですね、これが二十三条の六号。つまりは、単位教育委員会に採択権の最終的な決定権があるというふうに読めるわけです。 それと同時に、採択については、先ほど採択地区の話がありましたけれども、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律、これは無償措置法と呼ばれておりますけれども、隣接自治体による共同採択の場合は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない、これは十三条の四項、というふうに決められているんです。 しかし、共同採択協議会でもし意見が通らなかった場合に、単位教育委員会の採択権がどう保障されるかということは、法律にはどこにも書いていないんですね。ですから、この二つの法律がいわば並列しているような形になっているので、ある地域では教育委員会の方の決定がある意味では優先され、ある地域では採択協議会の同一の教科書をとりなさいという多数決が優先され、この間で混乱が起こっている。その中で静ひつな環境が阻害されるような事件が続発している、こういうことで混乱に拍車がかかっている。 では、それを調停するような機関が定められているかというと、この無償措置法には、いわば上部組織である都道府県の教育委員会が適切な指導、助言または援助をするというふうに書いてあるんですね。しかし、それはあくまでも適切な指導や助言にすぎないわけであって、両者を調停して、いや、今回はこっちだとか、今回はこっちの決定に従いなさいということまではやらないんです。書いてあることは、協議せよと書いてあるだけなんです。ですから、場合によっては、延々と集まって協議し、十市町村あった場合に、一つの町の教育委員会が、いや、我々はこの教科書に固執したいというのであれば協議がまとまらない、それで八月三十一日の期限切れを迎える、こういうことのケースが恐らくこれから起こってくる可能性があるんだろうと思うんですね。 そのことを私は、法律によって是正するか、あるいは、さっき政務官がおっしゃったようにルールを明確化してやるか。今、文部科学省のお立場はルールを明確化しろということなんですけれども、しかし地方丸投げではなかなか、これは地域によって運用の仕方が違うわけですから、私はここは二つに一つ。一つは、今言った二つの法律をある意味で調整するような別の法律あるいは法律改正を行うか、もしくはルールをしっかりと文部科学省が決めて、これは別に中央集権とかいうことではないと思うんです、こういう採択のルールを文部科学省が決めて、そのルールに従って公正に、適切に手続を進めてほしい、あとの選択についてはそれぞれの地域に任せる。これは別に地方分権に逆行するような施策ではないと思うんですが、大臣の方から、ぜひこの改革案についての御所見を含めて、お伺いしたいと思います。
【中山国務大臣】
教科書採択につきまして、そのたびごとにこのような騒ぎが起こるというのは嘆かわしいことだ、こう思っております。教育委員会の委員の方々も本当に大変だなと思うわけですけれども、ぜひ公正、公平な立場から教科書採択をやっていただきたいし、また、反対だからといって、脅迫だとかそういったことは、もうこれはやめてもらいたいと本当に心から念じております。
その中で、では、採択権者といいますか、範囲をどうするかということでございます。今まさに御指摘ありましたように、いろいろなケースがあるわけでございます。
私どもとしては、いつも申し上げていますが、教育というものをできるだけ現場におろしたい、子供たちそして保護者の身近なところにおろしたい、こういう気持ちはございますので、採択の範囲というのをもう少し狭くできないのか、また、その上で、どうしてもこの教科書を使いたいというところがあれば、それが使えるようなことも考えて、今後どうしたら採択につきましてそういった混乱を防ぐことができるのか、そして、静ひつな、静かな環境のもとで、本当に子供たちのために、自分たちの地区の子供たちはこのように育てるんだ、そういう学校とか市町村、地区の方々の思いが通じるような、そういう採択の方法というものを考えていかなければいかぬな、このように考えておるところでございます。
【長島委員】
今大臣がおっしゃった、教育はなるべく現場におろしていきたいという考え方は私も尊重したいと思いますし、今おっしゃった採択の範囲というのを狭めていこう、つまりは単位教育委員会を基本にしてやっていこう、教育委員会同士の間でそごを来さないような、そういう環境をつくっていくというのは大変重要だと思います。
やはり、全国の教育委員がいわば身の危険を感じながら今回の採択作業に当たっているということを、ぜひ私たちも肝に銘じて、そういう方たちが本当に静ひつな、安定した環境で公正な採択ができるような、そういうルールづくりをぜひこれからお互いに考えていきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
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