2018年11月13日13:00-13:10
【衆議院 安全保障委員会】
■北朝鮮への経済制裁には穴がある。新たな立法を検討すべきだ。

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2018/11/13衆議院 安全保障委員会 質疑要旨
○岸委員長 次に、長島昭久君。
○長島委員 新会派未来日本の長島昭久です。どうぞよろしくお願いいたします。
岩屋大臣、防衛大臣の御就任、まことにおめでとうございます。学生時代から岩屋さんを知る者として、申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、時間がありませんので本題に行きたいというふうに思います。
北朝鮮情勢は、まさに膠着状態であります。先ほど広田さんの方から、核実験も弾道ミサイルの発射もこの一年なされていない、こういう指摘がありましたが、けさの報道にもあるように、北朝鮮は依然として核開発、そして弾道ミサイル開発をやめていない、継続をしております。
他方で、中国、韓国、ロシアは、しきりに、制裁を緩和していこう、こういうことを言っております。このまま制裁を緩和すれば、まさに北朝鮮の思うつぼではなかろうかと思いますが、日米は、国連の制裁の徹底履行を柱とする、いわゆる圧力路線というものを維持することで一致をしているというふうに思いますが、河野大臣、この日本政府の方針にいささかの揺るぎもありませんね。
○河野国務大臣 いささかも揺るぎございません。
○長島委員 そこで、きょうは北朝鮮に対する国連制裁の履行状況についてお尋ねをしたいというふうに思います。
最も直近の事案に沿って質問をさせていただきます。
八月十日、韓国政府は、四隻の貨物船の入港を禁止いたしました。韓国関税庁の発表によると、北朝鮮産の石炭をロシア経由で不正輸入していた疑いがあるということで、九件の事案を捜査し、七件の犯罪事実を確認し、輸入業者等三名及び関連法人三カ所を送検をするということを決めたということでございます。
言うまでもなく、石炭というのは、北朝鮮の外貨稼ぎのための重要な、いわば戦略物資ともいうべきものであります。あれだけ貧しい北朝鮮が核やミサイルを開発し続けることができたのも、まさしくこういった外貨稼ぎのたまものと言っても過言ではない。したがって、国連は昨年の八月五日にこの石炭を全面禁輸といたしました。国連決議、安保理決議二三七一号であります。
そこで、海上保安庁にお尋ねをしたいと思います。
韓国政府の入港禁止措置にもかかわらず、この四隻の貨物船は、これまでどおり我が国に寄港を繰り返しているという報道がございますが、石炭の全面禁輸の国連決議二三七一を受けて、韓国政府が調査を開始した昨年の八月以来、我が国に、この四隻の貨物船、それぞれ何回寄港したか、お答えいただけますか。
○星政府参考人 御指摘の四隻の船舶が過去に我が国に入港した実績と、海上保安庁による立入検査の実績につきましては、安保理決議第二三七一号が採択された日以降、昨日までは、入港実績六十一回、立入検査回数二十四回となっております。
○長島委員 六十一回。韓国政府が入港禁止をした貨物船が、依然として頻繁に日本の港に出入りをしているという事実が今明らかになりました。
時間がないので私の方から説明いたしますが、この四隻は、韓国とは関係のない中国企業が所有、運航しております。しきりにロシアと日本との間を往来していることが既に確認をされております。
しかも、そのうちの一隻を所有する中国企業の事実上の支社が日本にはあります。
さらに、ことし三月に公表された国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの年次報告書によれば、そのうちの二隻が北朝鮮産石炭のロシア経由による不正輸出の容疑で捜査対象になっているんです。
通常であれば、これだけの情況証拠がそろえば、しかも、韓国政府が、あのゆるゆると言われている、制裁には後ろ向きの韓国政府でさえ入港禁止措置を行った事実を受けて、我が国も入港禁止措置を検討してもおかしくないと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。
○河野国務大臣 当該船舶につきましては、立入検査を行った結果、問題がなかったというふうに認識をしております。
一度やったからといって、いいというわけではございません。入港禁止措置の必要があるというふうに判断されれば、そのときにはしっかり対応してまいりたいというふうに思います。
○長島委員 二つ、河野大臣に指摘をしたいと思います。
まず一点は、二〇一三年三月の国連安保理決議二〇九四。これは北朝鮮の三回目の核実験の後、国連で制裁決議がなされた。それ以来、国連の制裁レジームというのは大きく転換しているんです。
後でそれは説明します。もう一つ、それにもかかわらず、今の日本の国内法は、そのような国連制裁の新しいレジームに対応し切れていないのではないか、私はこのように考えているので、質問したいと思います。
まず、皆さん、お手元に国連決議二〇九四を配付をさせていただきました。ごらんいただいても、国連の決議文というのはなかなかごちゃごちゃしていて、下の方に全文をつけておきましたので、後でゆっくりごらんいただきたいと思うんですが、一番上に、途中省略した条文第十一項を載せてあります。
煎じ詰めて言うと、まずここで言っていることは、国連の制裁違反に貢献し得る、つまり可能性のあるもの全て、あらゆる資産、当然に船舶も含まれます、あらゆる資産の移転の阻止を加盟国に義務づけています。これが第一点。
それからもう一つは、これまでは、国連やアメリカがこれこれの個人あるいは団体あるいは船舶、特定の船舶や個人や団体を指定して、一々制裁対象に、それを待って、日本は、リストに加えながら、日本の制裁レジームというのを拡大してきた、こういう経緯があるんですが、この国連決議二〇九四は、国連が制裁対象を特定するのを待たずに、加盟各国が独自の判断で制裁措置を講ずることを義務づけているんです。
なぜならば、北朝鮮はこの数十年かけて、実に巧妙に世界に密輸ネットワークを張りめぐらしてきたからなんです。これを封じ込めるためには、加盟各国が、待っているのではなくて、積極的に、制裁措置によってこれを遮断をしていかなければいけない。
これが国連加盟国の義務であり、とりわけ、河野大臣や安倍総理を始め圧力路線を主導してきた日本の責任だというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
河野太郎 外務大臣
○河野国務大臣 日本として安保理決議をしっかり履行するのは当然のことだと思っております。
○長島委員 大臣がそういうおつもりでも、国内法に制約があれば、それはできないんです。
今、もう時間がありませんので、たった一つだけ実例を挙げたいというふうに思います。
特定船舶入港禁止特措法、御存じですね。これはもともと万景峰号を入港禁止にするためにつくられた。しかし、その後、北朝鮮がミサイルを発射したり核の実験を行うたびに、その制裁の対象範囲を広げて今日に至っています。今日には、北朝鮮の船舶は全面的に入港禁止というふうになっているのは、もう既に委員御承知のとおりであります。
しかし、ここからが大事。実態は、まず第一番目、北朝鮮籍の船だけなんです、対象は。つまり、どこかの、シエラレオネとかパナマ船籍の船は対象にはならないんです。二番目、北朝鮮の港に寄港した記録がある場合の船舶のみなんです。したがって、北朝鮮を通らないで、例えばロシアから直接日本に何かを運んできた場合にはこの対象になっていない。それから三番目は、国連の制裁で指定された、先ほど言ったような船舶。
これでは、大臣、北朝鮮の意を受けた中国の企業が所有、運航するパナマ籍船の第三国迂回、つまりロシアを迂回したような積み荷についての密輸は防げないんですよ。これが今の日本の国内法体系の実態なんです。だから、二〇九四始め、国連のさまざまな制裁決議があるにもかかわらず、韓国のようなプロアクティブな対応が日本はできないんです。
この点、ぜひ、もう一回、金曜日に続きをやりたいと思いますけれども、今後、国内法は今までずっと進化を続けてきています。いろいろな事案が出るごとにリアクティブにやってきていますけれども、この辺で河野大臣の指導力を発揮して、もう少しプロアクティブな国内法を整備するような方向に踏み出していただければというふうに思いますが、最後に一言、お願いします。
○岸委員長 河野外務大臣、簡潔にお願いします。
○河野国務大臣 安保理決議に資するこうした法律の整備については、しっかりと検討してまいりたいと思います。
○長島委員 ありがとうございました。

河野太郎 外務大臣