長島フォーラム21

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国会質疑

2008年2月22日

【会議録】衆議院安全保障委員会

【嘉数委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

 民主党の長島昭久です。
 石破大臣、こういう形でことし初めての安全保障委員会の質疑が行われることになった。私は、大変残念な気持ちでいっぱいであります。
 テロ特措法の議論が収束をして、これから一般法の議論に移っていこう、こういうときでもあり、また昨年は、事務方のトップがああいう大汚職事件の中で逮捕される。こういう中で、防衛省改革がいよいよ緒につくのかというところで、石破大臣もさまざまな改革案を示されて、アメリカのトランスフォーメーションじゃありませんけれども、日本の防衛省・自衛隊もいよいよトランスフォーメーションが始まるか、こういう段階になって、私も、ぜひことしは、この安全保障委員会で大いに防衛省の改革論議を防衛大臣としたいな、こう思っていたわけでありますが、その足元ががらがら崩れるようなこういう事件は、防衛大臣としても大変悔しい思いもおありだろう、こういうふうに推測もするわけです。
 二月十九日、この事故があった日はちょうど防衛省の改革推進チームの立ち上げの日だった、これも延期せざるを得なかった、こういうことでありますが、けさは、四日目の朝を迎えて、漁業関係者の皆さん含めて、朝三時から現場に救助活動に向かわれている、捜索活動に向かわれている、こういうことであります。
 今、鳩山委員、そして渡辺委員からも話がありました。まず、防衛省の対応がどうも二転三転しているということが、地元の皆さんの怒りと、そして国民の不安をかき立ててしまっている。この事実をぜひ改めて指摘しなきゃなりません。
 二十年前の「なだしお」の事件のときも、海難審判の過程で、航泊日誌に改ざんがあったり、あるいは海図を一部書きかえていたり、こういうことがあったわけですね。今回も、私きょう、時系列で皆さんにお配りをさせていただきましたけれども、さっきも渡辺委員から話がありました、三時五十五分に「あたご」の乗組員、見張り員が漁船と思われる灯火を視認する前の段階での情報は全くないわけでありますけれども、これ以前に灯火の視認があったのかどうか、お答えいただけますか。

【石破国務大臣】

三時五十五分という発表をしておりますが、それ以前にあったかということでございますが、それ以前にあったという報告は現時点で受けておりません。

【長島委員】

そんなはずは実はないわけでありまして、レーダーには映るわけでしょう。そこの報告すら上がっていないというのは大変不可解だと思うんですね。しかも、この日は、天候は晴れ、視界は良好、波はなぎに近い、五十センチですからね、そういう状況下で、海自関係者の間でも、何でこんなことが起こるんだろうか、信じられない事故だ、こういうことであります。
 海上自衛隊、ここのところ、いろいろな不祥事が重なっております。ちょっと挙げるだけでも、覚せい剤の汚染があったり、あるいは中国への無断渡航があったり、ウィニーの情報流出があったり、給油データの取り違い、航泊日誌の誤破棄、そして護衛艦に失火、イージス艦の機密漏えいと、枚挙にいとまがないぐらいあって、今回このような、まさに信じられないような事故を起こしてしまった。
 海上自衛隊、何が起こっているんですか。最高司令官として、今、海上自衛隊の中で起こっていることをどういうふうに把握されていますか。(発言する者あり)もちろん、そうです。

【嘉数委員長】

質疑中、やじは飛ばさないようにしてください。

【石破国務大臣】

 海上自衛隊に特にこういう事案が多い、だから陸や空は完璧だということを私は申し上げるつもりはございませんし、ただ、何で海上自衛隊にこんなに起こるんだということは、私は、問題意識として持たねばならないんだと思っております。
 それは、一つは、当たり前の話ですが、陸は、常に陸におるわけですね、もちろんゴラン高原に出たりサマワに出たりということはございますが。空は、一回上がれば、何時間かたつと帰ってくるわけですね。海の場合には、一回出ると何カ月帰ってこないという、一種違う状況というものがあるというのは、それは戦前から言われておったことでございます。ですから、海軍というのは一歩離れたところということがある。
 私は、だからいいという話じゃなくて、これをどのようにしてきちんと厳正な管理のもとに置いておくか。しかし、厳正な管理をするといっても、純粋なお役所ではない、銀行でもないわけであって、厳正に管理はされましたが、戦の能力はどうですかということもある。この両立をしなきゃいかぬのだが、まさしくそれが、エフェクティブネスとアカウンタビリティーの両立というのをどう図るかというお話なのだと思います。
 海上自衛隊に極めて問題が多いということは、もう一度、これは文化の問題などということで、そこに話を持っていくのではなくて、本当に、文書管理からいろいろな規律の厳正性から、委員お話しになりませんでしたが、あとは、海上自衛隊の中の、いろいろな報道されていることもございます。もう一度再点検をしていかねばならぬのではないかというふうに私は思います。
 何が起こっているのかと聞かれて、こういうことが起こっていますということを一言でお答えするのは難しいのですが、海上自衛隊について本当にどうなのだということは、再点検の要があると私は思います。

【長島委員】

 今大臣、厳正管理と戦闘力、これを両方両立させなきゃいけない、全くそのとおりだと私も思いますが、厳正管理もさることながら、戦闘力にも問題があるんじゃないかということが今回明らかになりました。それはどういうことかというと、これは渡辺喜美大臣ですか、閣議後にコメントを出されて、これが自爆テロだったらどうするんだと。私も全く同じ感覚を持ちました。
 先ほど別の委員がおっしゃっておられましたけれども、ハワイで訓練をして、四カ月間外にいて、もうまさに寄港地、横須賀目前、あと四十キロ、ある種の安堵感もあったのかもしれない。しかも、明け方ですから、何となく人間の生活のリズムからいったら、ちょうど緩むような時間帯だったのかもしれません。
 しかし、このタイミング、この二月十九日というタイミング、私は、去年の二月十九日とことしの二月十九日は意味が全然違うと思っているんです、実は。それはどういうことかというと、きょうは高村大臣もおられますけれども、ことしは日本でサミット、先進国首脳会議が行われる。サミットは七月かと皆さん思っておられるかもしれませんが、実はもう始まるんですね、関係国首脳会議が。G20というのが来月の十四日、千葉の幕張で行われる。
 つまり、ことしは、年が明けてサミットの年になった。テロを警戒しなければいけないというのはまず、恐らく、自衛隊の最高責任者としては一番最初に頭に浮かぶことだろうと思います。もちろん洞爺湖の周りの、周辺の安全も確保しなきゃいけないけれども、しかし、もしかしてテロリストがねらうとしたら大都市かもしれない。そういう意味でいったら、東京周辺、しかも近海、こういうところは、極度の緊張状態の中で自衛官の皆さんも通過をする、あるいは海上保安庁の皆さんも、恐らく相当な警戒態勢を年明けからしいているんだろうというふうに思っているんです。
 そういう中で、漁船に紛れてもしかしたら自爆テロの船が潜んでいるかもしれないような状況の中で、さっきの鳩山委員の話ではないけれども、イージス艦が通る、漁船団の中に真っすぐ突っ込んでいく、そういう状況を許してきた、私は、その感覚が信じられないんです。
 きょう、海上保安庁の方もお見えだと思いますけれども、この現場の状況、日本の近海、特に東京湾の入り口である、船舶銀座と言われているようなこの近海の警備の状況、つまり、サミットの年を迎えて、この年明けからどのくらい通常とは違う形の警備体制をしいているか、差し支えない範囲で結構です、国民の皆さんに説明していただきたいと思います。

【石橋政府参考人】

 本年七月に開催されます北海道洞爺湖サミット、米国の九・一一テロ以降初めて我が国において開催されるというサミットでございます。また、関連の閣僚会議、来月の十四日から十六日までの間、千葉の幕張で開催されますG20グレンイーグルズ閣僚級対話を皮切りに、六月までの四カ月の間に全国十カ所において開催されると承知しております。
 このため、海上保安庁では、巡視船艇、航空機による会議場周辺海域の警戒、臨海空港の警戒、全国の原子力発電所など重要施設の警戒などのテロ対策を強化すべく、本庁に海上警備対策準備本部、それから、会議が開催されます管区に海上警備対策本部を設置し、必要な訓練を行うなど、全庁一丸となって警備体制の構築に努めているところであります。
 また、今般のサミット、テロの脅威のみならず、過激な環境保護団体等の活動も懸念されるなど、厳しい警備情勢下にありますけれども、関係省庁と連携して、サミットにおける海上警備に対処していく所存であります。

【長島委員】

 こういう状況ですよね。当然、防衛省・海上自衛隊は、海上保安庁とある意味連携をとりながら日本近海の警戒に努めていると私も信じておりますし、国民の多くはそういうふうに信じていると思うんですね。そういう中で起こった今回の事故なんです。
 自爆テロの話をして思い出すのは、二〇〇〇年の十月十二日にイエメンのアデン港沖で起こったアメリカの駆逐艦コールに対する自爆テロ、あのときは、十七人死亡、三十九人負傷、縦六メートルの穴が駆逐艦にあいた、こういう事故であります。
 防衛大臣に伺いたいんですが、そのときの教訓、海上自衛隊の中でどのように共有されていたのか、あるいは米海軍との間で緊密な連携がとられているわけですけれども、このときの教訓をどのように情報交換をして対処してこられたのか。今回の事故にかかわる文脈で御説明いただければありがたいと思います。

【石破国務大臣】

 コールの事案につきましては、これは私も強い関心を当時から持っております。
 アメリカの調査文書は、情報公開請求によって開示されたものがございます。その内容は委員御存じのことだと思いますので、私が繰り返すことはここではいたしませんが、その中で幾つか気になることというのは、こういうことがございます。
 コールは、脅威レベルが低いほかの海域からイエメンに入ってきておるわけでございますが、この時点で脅威レベルをハイ、高に上げておるわけでございますけれども、この認識が低かった。実際に高になっている、高いレベルになっているんだけれども、そこの乗員に対してその認識の徹底がなされていなかったというふうにアメリカは言っております。
 任務中の乗員の一部は、高、高い脅威度にあるとの認識がなかった。あるいは、コールは、指揮系統の直近の、間近の上位者に実際の部隊防護体制を通知していなかった。任務中の乗員が適切なブリーフィングを受けていなかった。ブリッジには乗員がいなかった。並走するボートに対する統制はほとんど行われていなかった。艦長を含めだれもコールに近接するボートに対する警戒感を抱かなかった。昼食時、お昼御飯でございますが、昼食時であったにもかかわらず、上甲板には上級指揮官がだれもいなかった。こういう指摘がなされ、アメリカは反省し、教訓としているということを承知いたしております。
 今回の事故というものと自爆ボートというものを同列に論じるということが必ずしもふさわしいわけではないし、そのこと自体適切を欠く部分もあるだろうと思っていますが、委員御指摘のように、夜間こういうボートが近づいてきたら、あるいは停泊中にこういうことが起こったとしたら、「しらね」の火災にしても、何で起こったか、なぜ防げなかったか、いろいろなことはあると私は思います。
 自爆ボートが近づいてきたときに大丈夫かと言われたときに、今回のことでこうでしたからということを申し上げるのは、必ずしも状況が違いますので適切ではありませんが、それはそれとして、なぜこういう小さい目標が発見できないのか、できなかったとすれば、どう対処すべきなのか、見張りはどうあるべきか、当直士官はどのような対応をすべきかということは、もう一度検証します。しなければならないことであります。
 今回の事故が起こってはならない、そのために全力を挙げるということと、こういうように国民の皆様が思っておられる御心配にきちんとこたえるということ、その二つはやっていかねばならないことだと思います。

【長島委員】

 恐らく、アメリカの教訓の中で一番のポイントは、高い脅威レベルであることを乗組員だれもが認識していなかった。これは、今回の「あたご」の乗組員そのものじゃないですか。
 自爆テロというのは、向こうから意識を持って体当たりしてくるわけです。今回の場合は、当たりたくない、衝突したくないという船を回避できないで突っ込んでいったわけでしょう。漁船団が五そうぐらいあったという話ですね、関係者の証言によると。そこに真っすぐ突っ込んでいったわけでしょう。そのときに、コールの事件、あるいは、もしや自爆テロがあるかもしれない、こういう認識は全くなかったということですか。もう一回お答えください。

【石破国務大臣】

 それは今回、艦長から二等海士に至るまで、本当にどのレベルの人間にどんな意識があったかということは、捜査の進捗を見ながらきちんと聞き取りをしなければいけないことだと思っております。
 私どもとして、今回のハワイから横須賀に回航しますこのコースをどのような脅威レベルにしておったか、あるいはこれがどういうミッションを持っておったかによってそれはまた異なることでございますが、だれがどのような脅威認識を持たねばならないか、それが二十四時間、三百六十五日、常に日本全国あちらこちらで動いております護衛艦、自衛隊の艦船、あるいは海外にも出ておるわけでございます。それがそういう認識をどのように持っているかということは、これは至急点検をし直します。

【長島委員】

 ぜひ点検していただきたいと思うんですが、防衛大臣として、先ほど海上保安庁の説明があったように、ことしに入って非常に近海も緊迫している、こういう認識に基づいて、海上自衛官あるいは陸海空の自衛隊に、ことしは特に気をつけなきゃいかぬぞ、例えば、ハワイから帰ってきて、通常の航路を使って横須賀に入ってくるかもしれないけれども、近海は、例えば午前四時ごろは漁船も多いし、商船もだんだん出てくる、入ってくる、こういう時間帯だよという特別な通達でも何でもいいんですけれども、指示、注意喚起はされたんでしょうか。

【石破国務大臣】

 防衛大臣名では、そのように特別な注意喚起はいたしておりません。海上幕僚長以下、自衛艦隊司令官あるいは護衛艦隊司令官、それぞれの指揮レベルでどのような通達がなされておるかということについて私自身正確な知識は持っておりませんので、きちんと調べました上で早急にお返事をするようにいたします。
 ただ、どんな状況であれ、とにかくテロの脅威というのは、去年のテロ特措法のときからずっと私が申し上げているように、いつ、どこで、だれが、だれから、なぜ、どのようにして攻撃を受けるかわからないのがテロなのだ、まさしくそういう時代に我々は生きているのだということが本当に徹底できているかどうかは、私としてきちんと検証を早急に行う責務があると思っております。

【長島委員】

 ぜひ、これは相当真剣にやっていただかないといけないと思います。
 一点、事故原因で、先ほど渡辺委員も幾つか質問されて、今は捜査中なので答えられないというお話だったのですが、自動操舵でこの近海へ突っ込んでいったのですね。この事実は恐らく否定はされないんだろうと思いますが、河野海幕防衛部長も、自動操舵というのは、とにかく安全な大海原を航行するときに使う操舵方法だと。こういうことでありますから、私は素人でありますけれども、この危ない近海に入ってくるわけですから、そういうときには、当然のことながら自動から手動に切りかえていくのが私は常識的な対応だったと思うんですけれども、この点だけ、いかがですか。

【石破国務大臣】

 今回の事故の状況においてどうであったかということについて、これまたおしかりをいただくかもしれませんが、今捜査が進められているところであります。
 それはそれとして、一体どういう状況であればマニュアルであり、どういう状況であれば自動なのかということ、これは、太平洋の大海原と、この事故が起こった海域と、一番ふくそうする浦賀水道と、レベルは幾つもあるのだと思いますが、どの時点で自動操舵にすべきだったのか、そしてそれが、船によって、あるいは当直士官によって、艦長によって違うなんということがあっていいのかということだと私は思っているのですね。
 どういう場合に手動にするか、どういう場合に自動にするか。ただ、自動にした場合に本当にみんながぼんやりしちゃうかというと、それを自動にすることによって余力が出て、見張りをもっと厳となすという考え方もないわけではないのかもしれないけれども、その基準、判断者、その適正性、そのことが我が艦船において、全艦どのようになっているかということは、これは早急に調べろという指示は出してございます。このことについて明らかにしていかねばならない。それが船によって違うなぞということ、判断者によって違うなぞということ、それはあってはならないことだと思います。
 基本的に、こういう海域においては、私自身、手動で運航すべきものと考えますが、自動から手動に切りかえるという操作はそれほど難しくないというふうに聞いておりまして、自動にしておっても見張りを厳として、すぐ手動に切りかえる、そういう体制も体制としてはあるのかもしれない。それが適切に行われたかどうかはまた別の問題でございます。

【長島委員】

 この自動操舵の問題はかなり深刻な問題だと私は思いますので、先ほどの危機意識の欠如と直結している問題だと思いますので、早急に点検をしていただきたいというふうに思います。
 残り時間が少ないんですけれども、今回の問題でいろいろ深刻な問題があるんですが、この報告、連絡体制の不備が明らかになったと思います。
 先ほども話がありましたが、今回の事故で、私もクロノロジーをつくってみて改めて感じたのでありますが、事故が起こってから海上保安庁へ無線の通報をする、これに十六分、そして、その後さらに十分後に、直近の上部機関、つまりは護衛艦隊の司令部、横須賀の司令部に連絡、ここの時間がかかり過ぎているのかどうなのかというのは、これはなかなか私は即断することはできないと思うのでありますが、決定的なのは、海幕からあるいは統幕から内局に伝わってから大臣に上がるまでに四十分かかっているという、ここなんですね。
 まず一点伺いたいのは、今回のような、最初の報告、最初の海上保安庁への、第三管区海上保安本部への第一報、これはかなり詳細な第一報になっているんですね。最初は位置を言って、その後、護衛艦「あたご」と漁船清徳丸、約十五メートルが衝突、同漁船の船体は二つに分断し浮いている、護衛艦「あたご」が捜索中であるが、漁船乗組員は行方不明、つまり、国民の生命が脅かされている状態ですよね。
 この段階で、海上自衛隊あるいは防衛省、この情報に接したときに、これは軽微な情報ではない、通常の情報ではない、重大な情報だと直ちに、速やかに判断できる、そういう状況になっているんでしょうか。

【石破国務大臣】

 まず、なぜ海上保安庁にそれだけの、十六分ですか、四時七分に発生してから海上保安庁に行きました四時二十三分、この間のことについてはまだ検証中でございます。
 それがすぐ上がるようになっているかということは、上がるんだったらこんなことにならないわけですね。
 実際に今出しております通達におきましては、通常の報告、連絡につきましては、事件、事故が発生した部隊または機関が当該事件、事故の発生を承知した後、速やかに当該報告、連絡が実施されるよう措置するものとなっておりまして、その下に、各幕または各機関の担当部署は、事件、事故発生部隊等から事故の連絡を受けた後、直ちに防衛大臣秘書官を通じて防衛大臣、及び防衛副大臣秘書官を通じて副大臣に対して報告するとともにと、こういうことになっている。
 そうだとすれば、今回、連絡がすぐ来ていなきゃおかしいんです。重大な事故でなくてもそうなっているわけであって、私は、幕僚長が知ったときに、それは幕僚長から速報を大臣に上げるというような改正は即日行いました。
 ただ、軽微な事故、もう一つ上のレベル、もう一つは国政に重大な影響を与えるようなレベル、そこをもう一回整理し直して、だれが軽微と判断するのか、こういうことはどれぐらいの重大性を持つのかということについて、それを現場のオペレーションルームにいる人に任せてしまっていいのかということはあります。そこのところは、私はもう一度この通達自体を全面的に見直すようにというふうに申しておりまして、これを早いうちに、できれば、原案というものは、来週初めには私のところに上げるように申しておるところでございます。

【長島委員】

 通達には、確かに制服から大臣に直接上がるようになっているんですね。これは、軽微なものでもなっているんですよね。それがそもそも動いていないんです。
 ところが、過去の例を調べると、練習潜水艦「あさしお」がパナマ船籍のケミカルタンカーと衝突した事例、二年前の十一月二十一日の事例、このときは、海上幕僚長から防衛庁長官に直接報告が上がっているんですね。
 ですから、先ほどの、なぜああいう形であの近海に無防備に突っ込んでいったかということもさることながら、事故が起こってからの報告体制でも、事の重大性を認識したとは到底思えないようなやり方をしているんですよ、過去の例に照らしても。
 ここで、ちょっと気になるコメントが一つあったんですね。これは、今は自民党の参議院議員になられていますが、佐藤正久さんが、元陸上自衛官でありますが、新聞のコメントで、これはきのうの日経ですけれども、自衛官には、情報を直接防衛大臣に伝達するのにためらいがある、こういうふうにおっしゃっている。それから、別の防衛省幹部も、各幕僚監部は、防衛相に直接連絡をして責任をとらされることを嫌がり、内局は、各幕僚監部の情報が間違っていて防衛大臣に怒られるのを嫌がるという責任のなすりつけ合いの構図がある。
 これはゆゆしいことですよ。国家の一大事に対して、責任をとらされるのが嫌だからとか、確かに、情報伝達というのは難しいと思いますよ。正確性を期しなきゃならない、しかし、迅速性も担保されなきゃならない、このジレンマというのは常にあると思いますよ。しかし、こんなメンタリティーが制服と内局の間にある。このこと自体が、まさに石破大臣が、制服と内局の間の連携あるいは統合をしていこう、こういう改革案を示されましたその一番の原因なんだろうと私は思いますけれども、今現在、こんな状況が防衛省の中にあるのかないのか、ちょっとお答えいただきたいんです。

【石破国務大臣】

 あると思います。私は、あると思う。それは、中の人はいろいろなことを言うかもしれない。そんなことはないと言うのかもしれない。
 ただ、私は、やはり制服としては、もう内局に伝えたら内局から上がるはずだという思い込みがあるのではないか。あるいは、内局は、制服は制服としてちゃんと上げるルートがあるだろう、何でそれを上げないのということがある。結果として、正確な情報は遅い、早い情報は間違いがある、どっちもよくない、それですくんでしまうということがあるんだと思うんです。
 だけれども、判断するのは大臣ですから。私が発生直後に言ったのは、とりあえずでいい、正確でなくてもいい、判断するのは大臣が判断する、責任も大臣が負う、だから、一報はすぐ上げなさいということを申し上げておるのでございます。その判断を間違えるとすれば、それは大臣の責任であり、そのような間違えるような判断をするような人は大臣になってはならないということだと思います。

【長島委員】

 この問題は、まさに防衛省改革の一番のポイントになると思いますので、今後ともこの点についてはきちんと議論していきたいというふうに思います。
 確かに、今回、防衛省・海上自衛隊のていたらくは、もう国民の皆さんも唖然とされている、こういうふうに思うんですね。しかし、私は、今回いろいろ時系列で調べてみて、ふと思ったのでありますが、平成十五年の閣議決定がございますね。きょう、皆さんにもお配りをさせていただきました二枚目、三枚目でありますが、この閣議決定が全く今回機能していないということに私は気がついたんですね。
 これはちょっとポイントを読みますけれども、ちょっと飛ばしながら読みますよ。政府は、国民の生命、身体に重大な被害が生ずるような緊急事態に対し、下記により政府一体となった初動対処体制をとることにより、速やかな事態の把握に努めるとともに、被災者の救出に全力を尽くす、こういう趣旨ですよ。
 「緊急事態に関する情報集約」、ここに書いてあるのは、まず第一番目、「関係省庁は、緊急事態及びその可能性のある事態を認知した場合は、直ちに内閣情報調査室へ報告するとともに、事態の推移と対処の状況についても適時に報告する。」。
 これは、クロノロジーを見てください。防衛省からこの内閣情報調査室内閣情報集約センターに第一報があったのが事故から二時間半後。ルートは、実は、防衛省のルートだけじゃないんですね。この情報集約センターに入るルートはもう一つある。それは、海上保安庁から国交省を通じて入ってくるルートなんです。
 先ほども見ましたとおり、事故から十六分後には海上保安庁の第三管区海上保安本部に無線連絡が入っているんです。そこから約四十六分かかって海上保安庁の本庁の運用司令センターに連絡が入り、さらに、そこから官邸に上がっていくのに約一時間半かかっているんです。防衛省もとんでもないけれども、実は海上保安庁も、このクロノロジーでいくと相当スローですよね。
 さっき、相当緊張感を持ってやっておられるというお話がありましたけれども、これはどうしてこんなに時間がかかるんですか、海上保安庁。

【石橋政府参考人】

 海上保安庁として、国土交通大臣を初めとする幹部への報告に時間を要したことについて、非常に重く受けてとめておりまして、今後は報告を迅速に行うよう、関係職員に対して徹底したところであります。
 なお、今回の事案に関し、初動の措置としては、漁船清徳丸の所属漁業協同組合、乗組員の人数等の情報収集、それと巡視船艇、航空機及び特殊救難隊の発動指示、付近通航船舶への無線による海難発生情報の提供などを行っておりました。

【長島委員】

 いやいや、だって、自衛艦から、現場から第一報はかなり詳細に入っているんですよ。船が二つに割れちゃっている、乗員は行方不明だと。これは速報しなきゃいけないんじゃないですか。そんな、船の名前がどうだこうだとかじゃなくて。そこはどうなんですか、通常の体制。

【石橋政府参考人】

 御指摘のとおり、非常に重く受けとめておりまして、先ほど言いましたように、関係職員に対して、迅速な報告を周知徹底しております。

【長島委員】

 いや、これは海上自衛隊もそうなんですけれども、海上保安庁として、今回の事件、第一報に接して、これは重大な事件だ、事故だという認識はあったんですか。

【石橋政府参考人】

 ただいまの御指摘のような認識はございました。
 ただ、乗組員が何人乗っていたか等やはり把握したくて、そちらの方に、作業に入っていたという状況でございます。

【長島委員】

 これは本当にゆゆしいことだと思いますよ。
 きょう外務大臣にお見えいただいて、一般法の質問をちょっとしたいと思ったんですが、時間がなくて申しわけございません。
 しかし、これは防衛省固有の問題のように今、世の中で報じられています。もちろん、防衛省の問題は弁護のしようがない、本当に重いと思いますが、実はこれは政府全体の問題ですね。危機管理体制が、防衛省、海上保安庁の別なくほとんど機能していないということが今回わかったと思うんです。これは、まさに福田政権そのものの危機管理能力あるいは政権担当能力に直結するような問題だというように私は思います。
 今後も引き続いて追及をしていきたいと思いますけれども、ぜひ、これは救助ももちろんですけれども、これに対する原因の究明、そして再発防止、きっちりと対応していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。