長島フォーラム21

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国会質疑

2008年3月21日

【会議録】衆議院内閣委員会

【中野委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

民主党の長島昭久です。
 内閣委員会で初めて質疑をさせていただきます。大畠筆頭初め与野党の理事には、機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 きょうは、犯罪被害者の支援につきまして、岸田大臣、そして泉大臣にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 冒頭に、この犯罪被害者の支援という観点からいってきのうは一つのメモリアルデーに当たったのですが、岸田大臣、きのうは犯罪被害者との関連でどういう日であったか御存じでしょうか。

【岸田国務大臣】

オウムの地下鉄サリン事件の慰霊の行事が行われたと認識しております。

【長島委員】

今から十三年前、三月二十日、出勤のラッシュアワーをねらって無差別大量殺りくをもくろんだテロ、まさに国家テロが行われた、こういうことでございます。十二人の方が亡くなって、五千五百人に上る重軽症者を出した未曾有の事件でありました。昨日は、今岸田大臣がおっしゃったように、メトロの霞ケ関駅を初めとして各地で慰霊式を行った、福田総理も行かれた、こういうことでございます。
 オウム真理教をめぐっては、平成八年に破産宣告を受けてから教団の破産手続が始まりまして、元日弁連の会長を務められた阿部三郎先生が破産管財人になられて、これまで十二年間にわたって進めてこられましたが、認定された被害者への賠償総額が約三十八億二千万円、しかし最終的に配当された総額は、寄附金などを含めても全体の約四割にとどまりまして十五億二千万円、未配当は約二十五億円に上る、こういうことでございます。
 まず、岸田大臣に伺いたいのですが、このオウムの無差別テロによる被害者の救済の現状について、担当の大臣としてどのように今認識をされておられるか、ぜひ伺いたいと思います。

【岸田国務大臣】

オウムの事件における被害者の皆様方に対する支援、犯罪被害者対策を担当する大臣としまして大変重要な課題だというふうに考えております。こうした大規模なテロが発生したということは、我が国社会に大変大きな衝撃を与えたわけでありますが、こうした事件において被害を受けられました皆様方に対する、精神的にもあるいは経済的にも、さまざまな支援が求められているというふうに考えております。  ぜひ、日本の社会全体としてこの問題を深く受けとめ、そして何ができるのか、担当大臣としましてしっかりと考えていかなければいけない、このように考えております。

【長島委員】

オウムのテロが連続して起こった九四年、九五年というあの時期は、まだ被害者支援活動というのがなかなか国内にも浸透していない、そういう時代でありましたから、端的に言って、このオウムのテロ事件の被害者の皆さんというのは、国による支援措置がほとんどなされないまま、ほったらかしにされてきたというのが実は現状なんですね。大臣も今、どういう現状認識ですかという私の質問に対して、これとこれとこれと、こういうことをやってきましたというふうに胸を張っておっしゃることができなかったと思うんですね。そこは私は、きょうこの機会にぜひ改めていただきたい、こう思っているわけです。
 当時、サリンの後遺症というものが医学的に一体どういうものであるかということすら実は不明確だった、そういう時期でありました。したがって、サリンの被害に遭った、そして後遺症に悩まされている、電車にも乗れなくなってしまった、そういう方が、会社の理解を得られないで結局退職せざるを得なくなってしまった、こういう例が幾つも幾つもあるわけですね。それから、何カ月か何年かたってからその後遺症の障害が発症して、苦労されておられる方もいらっしゃる。  それから、きのうあたりテレビにも出ておられました、妹さんがたまたまその現場に居合わせてサリンの被害に遭って、以来寝たきりになってしまった、それを介護されるお兄様の姿が出ておりましたけれども、結局、その方も障害者自立支援法の適用を受けているわけです。しかし、委員の皆さん御案内のとおり、障害者自立支援法は改正をされて、そして自己負担がふえてしまった。そういう中で苦しんでおられるんですね。
 こういうことも含めて、国がきちんと、被害者救済という観点で、五千五百人の皆様方お一人お一人に対して救済をしていく努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っているんです。
 私、二年前にたまたま被害者の会の高橋シズヱさんと出会ってこの問題にかかわるようになったんですけれども、ちょうど二〇〇五年、今から三年前になりますけれども、アメリカの九・一一テロとこの日本のオウム・サリン事件、両方とも国家規模のテロであります。そして、被害に遭われた方の数はいずれも約五千五百人。死者の数こそ、日本の地下鉄サリンは十二名、九・一一は二千八百八十名と違いますけれども、被害に遭われた方の規模というものはほぼ同じ。それに対して日米両国がどういう対応をしたかということを国会図書館の力をかりて調べまして、私は結果を見て愕然といたしました。  特に、被害者に対する特別立法あるいは特別な基金という点においては、アメリカでは、アメリカ愛国者法というのがそのとき創設をされて、そして、九・一一のテロの被害者だけに特化した補償基金というものが一週間で立ち上がっているんですね。そして、そこから死亡者二千八百八十人全員に総額で約六十億ドル、日本円にして、今為替レートは随分円高になりましたから約六千億、負傷者二千六百八十人全員に対して約十億五千万ドル。一人当たり平均で大体百二十六万七千八百八十ドル、こういうことであります。一億三千万程度の補償がなされているわけです。
 この考え方としては、国がそういう被害者を守ることができなかった、つまりこのテロを防ぐことができなかった、そのためのコンペンセーション、つまり補償ということでこういう基金や法律が立ち上がって、被害者の皆さんの救済に当たっているんです。
 日本の場合は、もともと連続企業爆破事件があって、一九八〇年にできた犯給法、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律というものに基づいて給付金が支給された方、この地下鉄サリン事件だけに限って言えばたった二人。もちろんあとの方は労災で、労災の適用を受けた方も三千名以上おられるわけですけれども、しかし、犯罪被害者の救済ということについていえば、法律の適用を受けた方はたった二名。そして、その規模も極めて、まあ今回、法改正があって上限が大きくなる、自賠責保険並み、こういうことになるそうでありますけれども、当時はまだ死亡者で約一千五百万円、障害を受けられた方、いろいろな程度にはよりますけれども、大体一千八百万円、こういうレベルにとどまっているんですね。
 この考え方、日本とアメリカの、あるいは日本とヨーロッパの考え方を比べてみて、私、一つ気がついたことがあるんです。内閣府の当時の説明によると、こういう被害者に対する国の救済措置、経済的支援というのは何か、どういう性格のものか。これはお気の毒な皆さんに対する見舞金という性格だ、こういう説明を受けました。例えばドイツは、法律にはっきり、国が国民の安全を守れなかった、守れなかった補償制度であるということを明記しているんですね。この考え方の根本的な違いが、まさに被害者に対する救済の規模に直結しているんだというふうに私は思うんです。
 私は一日も早いこの理念の転換が必要だというふうに思うんですけれども、国務大臣、いかがでしょうか。

【岸田国務大臣】

犯罪被害者の方々に対する経済的支援につきましては、今委員御指摘のような状況に対しまして、さまざまな議論が今も行われています。
 そして、政府におきましても、犯罪被害者等施策推進会議の中に置かれております三つの検討会のうちの一つ、経済的支援に関する検討会、この検討会におきまして議論が行われました。この検討会の議論の最終取りまとめの内容としましては、やはり犯罪被害者に対する支援、給付制度という形での充実ということになっております。
 こうした考え方に基づいての支援ということになっているわけですが、この支援につきましては、いろいろな形で引き続き充実を考えなければいけない、その充実の中で、実際的な金額とか内容のみならず、哲学の部分につきましても議論は深めていかなければいけない、そのように思います。

【長島委員】

岸田大臣、積極的な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。  推進会議でいろいろな被害者の皆さんの声も聞いていただいて、検討会にも、オウムの被害者の会の会長さん、高橋シズヱさん、御主人は御承知のとおり霞ケ関駅の助役さん、最初にサリンのビニールを取り上げられた方で、即死だったということでございますけれども、その高橋シズヱさんも入っておられて、いろいろな意見を交換されたということは聞いております。
 ただ、今、哲学の転換というところまで踏み込んで御答弁をいただいたんですけれども、このオウム真理教の一連のテロ事件に対する被害者の救済というものは、一般の被害者支援における経済的支援のまさに試金石だというふうに私は思っているんですね。
 象徴的な事例だというふうに私は思っていますので、もう一段踏み込んでお考えいただきたいのは、先ほども申し上げました破産手続、これは、事件発生から十年以上経過しても被害者への賠償が四割にとどまる。阿部管財人ももう八十歳を超されて、今月の二十六日に最後の債権者集会を開いてもうこれは終結するということに決まっているそうでありますが、結局、被害者への賠償は進まない。一方で、オウムの残党であるアーレフとかひかりの輪、そういう団体は、一応監視団体の対象にはなっていますけれども、相変わらず活動を続け、資金集めも行っている。こういう状況なんですね。この理不尽な状況に対して被害者の皆さんがどう考えておられるかということをぜひ国として感じていただきたい、こういうふうに思うんです。
 アーレフなんかは、アメリカの国務省にテロリストグループとして指定をされている、そういうグループなんです。したがって、私たちは、国の責任で賠償問題に決着をつけて、そしてオウムの残党にこれ以上経済活動ができないようにしていく方法をやはり我々議員で考えなきゃいけない。
 先ほどお席におられた上川大臣も、もともとこのオウムの被害者に対する救済運動を頑張ってこられた方です。超党派の議員、今自民党でも議論をされている、公明党でも議論が続けられているというふうに聞いておりますが、私ども民主党では、特別立法の議員立法の法案を二月十四日に提出をさせていただきました。その一番のポイントは何かといったら、被害者に対してまだ六割が未配当です、国が未配当の被害額を立てかえ払いして、そして、国がその後オウムの残党から残りの債務を回収していく、こういう特別立法の構成にしているわけです。
 岸田大臣、経済的支援の理念も根本的に変えていかなければならない、そういう御意見も今披瀝をしていただきました。そういう立場も含めて、このオウム真理教による連続テロ事件の被害者に対する特別立法について、現時点での大臣のお考え、どのようなお考えを持っておられるか、お伺いしたいと思います。

【岸田国務大臣】

まず、政府としましては、犯罪被害者の皆様に対する経済的支援、先ほど御紹介させていただきました犯罪被害者等施策推進会議のもとに置かれた経済的支援に関する検討会において議論を行い、昨年十一月に一応結論を出したところであります。
 その中で、これから将来に向けての支援制度の見直しを盛り込んだところでありますが、このオウム犯罪被害者の皆様に対する救済という点については、今御紹介いただきました民主党での御議論、そしてその他の各党での議論、この議論をぜひしっかりと見守らせていただいて、こういった動きをしっかり注視させていただきたい、このように考えております。

【長島委員】

大臣を後押しする意味でも、高橋シズヱさんが去年の十月十日、院内における集会、被害者の皆さんとそれから国会議員、自民党から共産党、超党派の議員が出席をしたその被害者のための集会での御発言を少し引用して読ませていただきます。高橋さんはこんなことをおっしゃいました。僕は初めてこういうことを聞きました。
 十二年にわたって事件を風化させないように奔走してまいりました。振り返ると、結局、自分は夫の死に向き合えていなかったのではないかと最近感じるのです。事件の被害者が十二年も被害の救済を求めてあちこちに頭を下げて回らなければならないようなことが今後ないようにしていただきたいと思っています。こういうお話でした。
 そして、阿部管財人は、もう八十過ぎの御高齢でありますが、この方もそのとき破産手続の御報告をされて、こうおっしゃっていました。
 管財業務を結了するということになりましたが、しかし、これからの仕事は、被害者、弁護団ともども、国会議員の先生方にもお願いした中で、やはり特別法をつくってもらわなければならないと思っています。その作業に私どもも側面から全面的に参加して御協力申し上げたい。したがって、その法律ができるまでは、現在の心境としては、破産業務は結了に至ったとしても思い半ばの気持ちでございます。全くそういう心境でございます。そういうことで、本日のところ、つまりその業務は結了しますけれども、私はこの法律が、特別立法が実現できるまでは、あらゆる手段を尽くして頑張ってまいりたいというふうに思っています、こうおっしゃっておられるんです。非常に重い言葉だと私は思います。
 再度、岸田大臣にお伺いしたいんですけれども、このオウムの連続テロ事件の被害者の救済に対しては、恐らく一般の犯罪被害者との扱い方のバランスに相当苦慮なさっておられるんだろうというふうに思うんです。しかし、この事件というのは三つの点で特別だと私は思っています。
 まず一つは、大量無差別の殺りく行為、この重大なテロ行為というものに対して国はどうするかということが問われていること。それからもう一つは、この被害者の皆さんはどういう方かというと、オウムは国家や社会に対するテロをやったわけです。まさに、国の身がわりになって犠牲になられているわけです。そしてもう一つは、先ほどの高橋シズヱさんのお話にあったように、自助あるいは共助、自分で助ける、ともに被害者の皆さんの間で助け合っている、そういう自助、共助の措置を講じたにもかかわらず賠償の問題で半分以上の配当が残されているように、十分な救済を受けていないんです、損害賠償という点において。
 こういうことをきちんと考慮していただいて、これは議員立法で私どもやっていくしかないと思っておりますけれども、そういうことを政府としてぜひ受けとめて、テロと闘うという思いもぜひ込めていただいて、そして、損害賠償というのは単なる金銭の問題ではありません。これは損害の補てんという意味もありますけれども、もう一つは将来に対する違法行為の抑止という観点もあるわけです。そういうことも踏まえて、もう一言、ぜひ決意をお伺いしたいと思います。

【岸田国務大臣】

まず、オウム事件の関係者の皆様方の深い思い、この重たい思いはしっかりと受けとめなければいけないと思っております。その上で、この事件に対してどのように対応していくのか。今委員の方から三点御指摘をいただきました。この三点の指摘はしっかりと参考にさせていただかなければいけないと考えております。そして、その上で、各党で行われているこうした議員立法の動き、しっかりと注視していきたいと考えています。

【長島委員】

ぜひ、国として、大臣としてリーダーシップを発揮していただきたい、このように思います。  次に、きょうは泉国家公安委員長にもおいでをいただいておりますので、経済的支援の一環としてもう一点伺いたいんです。
 それは、犯罪被害者給付金制度、この実行の徹底といいますか、私、随分被害者の方とこれまでお話をさせていただきましたけれども、そもそも被害者給付金制度そのものを御存じないという方が結構いらっしゃるんですね。このことについて、恐らく警察が一番最前線で被害者の皆さんと向き合っておられると思うんですけれども、警察として、被害者の権利を被害者の皆さんにちゃんとお伝えをする、そして、中でも経済的支援について、こうこうこういうことになっていますよということをきちんとお伝えをすることの周知徹底はどのようになされているのでしょうか。

【泉国務大臣】

犯罪被害者給付金制度の周知が十分でないという御指摘でございます。この御指摘は、我々もさらに重く受けとめていかなきゃならないと思います。
 不慮の事故に遭われた方々は、まさにこういう制度を、通常は御承知ない、国民の多くの方々は御承知ない状況の中で不慮の事故に遭われるということでございますので、私どもは、通常、パンフレットでありますとか、あるいはホームページでありますとかポスターなどで広報活動をさせていただいて、広く国民に御了知いただくことに努めさせていただいておるところでございます。
 しかし、問題は、個々の事件が発生いたしましたときに、担当者が、その被害を受けられた方あるいは御遺族の方々に対して、こういう制度がありますよということを申し上げる、周知させていただくということが重要だと思っておりまして、「被害者の手引」という広報用のパンフレットをつくらせていただいて、直接語りかけさせていただいております。
 また、警察官は、採用試験あるいは昇任試験のときに、こういう制度の徹底を図るために日ごろから重要な項目として教育をいたしておりまして、これからもこの姿勢を続けてまいり、周知徹底を図っていきたいと思っておるところでございます。

【長島委員】

大臣、周知徹底を図っていくというのはよくわかるんですけれども、それが機能していない部分があるので私は質問しているんですね。
 つまり、制度的に何か担保しないと、昇任のときに、試験のときにきちんと周知徹底しています、警察官にもちゃんと研修やっています、警察官も多分やるでしょうというレベルでは、やはりこれは、被害に遭われた方、私、現に八王子のケースでいいますと、夫が銃撃されて死亡された、相手は暴力団員、残された奥様はもう本当に何が何だかわからない、そういう状況の中で、この犯給法の事実を知ったのは一年三カ月後、こういう状況なんです。それも、自助グループの皆さんたちから話を聞いて、ああ、そんな制度があるんですか、こういう状況なんですね。これは、やはり警察というのは被害者と一番最前線で向き合っている大変重要な方々でございますので、私は、もう少し踏み込んだ制度的な担保が必要だと思っています。
 そこで、言いっ放しであるといけないので、アメリカの例を少し御紹介したいと思うんですが、アメリカもやはり、これはペンシルベニア州ですけれども、こういうパンフレットを被害者の方に差し上げるんですね。それで、まあそのときに恐らく説明するんでしょう。そのときに、このカード、これはちょうど名刺大のカードです、ここに、どの警察官が被害者の方にいつ手渡したかということが記録に残るようになっているんです。警察の控えもある、それから、被害者の方の手元にも、どの方が何月何日何時何分に被害者の権利についてきちんと説明をしたという記録が残っているんです。警察署の側にも残るし、被害者の側にも残る、こういう仕組みになっているんですね。
 これは私、ぜひ参考にしていただきたい。こういう制度的な担保がないと、ああ、あの警察官は熱心にやっているけれども、この警察官はちょっとおっちょこちょいで伝え忘れちゃった、こういうことになりかねません。被害者の皆さんは本当に切実な思いで日々頑張っておられるわけですから、公安委員長として、こういう方法に踏み込む御意思があるかどうか、ぜひ明確にお答えいただきたいと思います。

【泉国務大臣】

委員今お話しいただきましたアメリカの例は、大変参考になると思って聞かせていただきました。
 先ほど私の方から申し上げました、今被害者の方にお渡ししておりますのはこういうパンフレットでございまして、この中にも、今先生御指摘いただきましたように、担当の警察官がだれであったか、そういうことはメモできるようにはなっておりますが、御趣旨を踏まえまして、さらに工夫する余地があれば工夫をさせていただきたいと思います。

【長島委員】

ぜひお願いいたします。
 もう時間が迫っているんですが、もう一点、岸田大臣に伺いたいところがあります。
 それは、十七年の基本法の中にも十八条で明記されている、犯罪被害者の裁判制度への参加の促進であります。
 私、ドイツの方の話を伺いました。ドイツの法廷には三つの席がある。一つは裁判官、もう一つは被告と弁護人、そしてもう一つが被害者の席。日本には今まで二つの席しかなかったわけですけれども、これから裁判への被害者の参加ということの道が開かれれば、法廷の中にもう一つの席が設けられることになると思うんです。そうなったときに、それを支えるインフラといいますか、ハードの面も実は整備しなければならないというふうに思っているんです。これは何かというと、裁判所において被害者専用の控室をつくってほしい、こういう被害者の皆さんの声があるわけです。
 現状、大臣としてどのような認識を持っておられるか、まず御答弁をいただきたいと思います。

【岸田国務大臣】

まず、被害者の方々に直接接する機会が多い裁判所において、この犯罪被害者等の視点に立った取り組みを充実させていくということは大変重要であるというふうに認識をしております。
 今、被害者の方々への専用の待合室の話ですが、犯罪被害者等からの意見聴取会、これは内閣府におきまして開いている意見聴取会ですが、こうした場、そして、犯罪被害者等施策関係省庁連絡会議、これも年に数回、内閣府において開かれている会議でありますが、こういった会議の場で、専用の待合室の設置の必要があるのではないかという議論が既に行われております。
 そして、そういった議論が行われる際には、最高裁判所からも直接参加をお願いしておりまして、参加をしていただいております。そういった場を通じて、直接こうした要望が伝わるように内閣府としても努めているところでありまして、ぜひこうした要望をしっかり伝えると同時に、裁判所において適切な判断をしていただけるように期待をしたいと思っています。

【長島委員】

裁判所に適切な判断をしていただきたい、期待をするという、まあ司法の独立で、なかなか行政府として思い切ったことが言えないのかもしれませんが、犯罪被害者支援というのは国の責務でありますから、裁判所も国家機関の一つなわけですから、ここは、裁判所にしても検察庁にしても、きちんと横並びで対応していただかなければならない。
 委員の皆さんにはなかなかぴんとこないかもしれませんけれども、例えば、八王子にある東京地裁の八王子支部での今の状況をちょっと御説明しますと、法廷の廊下に長いすがあるだけなんですね。そうしますと、この長いすの右端に被害者の皆さんが座る、左端に加害者側の、被告の側の関係者が座る、こういう隣り合わせで座らされるような状況なんです。これも、日本の場合は本当におくれている。アメリカは、法廷の中で日当たりのいい角部屋が被害者の皆さんの控室になっているんですね。それはなぜか、なぜ角部屋かというと、加害者の人たちと顔を合わせないようにするために配慮されているというんですね。
 今確かに、おっしゃっているように、東京と大阪と地裁レベルでもようやく控室が設置されましたけれども、これからまだ五十庁十支部、六十裁判所あるわけですから、そこにやはりこういう被害者の皆さんに対する専用の控室を設置していく、そのことは、国の責務としてぜひ努力をしていただかなければならないということを最後に申し上げて、質疑を終わりたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。