長島フォーラム21

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国会質疑

2008年4月11日

【会議録】衆議院安全保障委員会

【嘉数委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

民主党の長島昭久です。  きょうは法案審議ということなんですが、ぜひ本質的な議論を大臣とさせていただきたいと思います。
 三年ぶりに防衛大臣に返り咲かれて、テロ特を何とか通すというのが最初の使命だったと思うんですけれども、それが、データの取り違えとか航泊日誌の誤破棄とか、本当に予期し得ぬいろいろなことが起こったわけであります。それが片づいた途端、今度はイージス艦「あたご」の衝突事故。大臣としては、腰を据えて防衛省の改革あるいは日本の安全保障について、じっくり議論をしたり考えたりする暇がなかなかなかったのではないか、こういうふうに拝察をしているんですが、きょうは短い時間ですけれども、少しそういった議論をさせていただければというふうに思います。
 冒頭に、これは通告していないんですけれども、昨日の新聞に、防衛大臣が訪米を断念されたという記事がございました。「ゲーツ国防長官との会談を断念」「会談の日時や場所がほぼ決まっていたにもかかわらず、訪問自体が取りやめとなる異例の事態だ。」こういう報道なんであります。
 私も、ラムズフェルドさんあるいはゲーツさん、存じ上げておりますけれども、お二人、性格は全く違いますけれども、ゲーツさんも非常に見識の豊かな、経験の豊かな方で、できれば防衛大臣にぜひこの連休中にワシントンに行っていただいて、日米同盟関係の将来像あるいは我が国の安全保障、そして日米の間でどういう役割分担をしていくか、そういう将来に向けての本質論をぜひしていただきたかったなと。
 どうもいろいろな事故や事件の中で大臣御自身が内向きになってしまっていやしないか、そのことをちょっと危惧しておるんですけれども、なぜ訪米をされないのか、御説明いただければありがたいと思います。

【石破国務大臣】

訪米を決定して、それを中止したというようなものでもなく、どうしようかという議論をやっておる中において、今回、非常にタイトな日程、そして国会情勢も非常に厳しい、あるいは委員が御指摘いただいたように、いろいろな事件、事故が重なり、当省をどのように変えていくかという議論も加速をしていかねばならない、そういう状況の中にあって、あえてこの時期に訪米をする必要はないのではないかということだと私は思っております。
 昨年、ゲーツ長官が訪日されて、二人だけで話した時間、あるいは全体の会合の時間、あるいは夕食の時間も入れれば、三時間以上のお話をいたしました。かなり本質的な話をいたしました。また、この先も会う機会というのは何度かあると思っております。そうしますと、極めて厳しい日程の中で、あえてこの時期にという必要性を判断するに至らなかったということだと思っております。
 委員御指摘のように、本当に内向きになっているわけではありません。ただ、お互いの関心事項というものをよくすり合わせて、我々として広範な議論をしたい、恐らく委員からこの後御質問があるのかもしれませんが、任務、役割あるいは能力について、あるいは日米同盟の将来について、そういうことについて、本当にお互いに共通の議題、共通の認識で、一番ベストな状態でやりたいなというふうに私は思っておるところでございます。

【長島委員】

ぜひこれからも機会をとらえて会談を続けていただきたいと思います。
 タイトな日程というのは、いつも大体タイトでありますから、それは余り理由にならないと思いますし、国会情勢でそういう会談を取りやめるというのも、私は大臣としては非常に寂しい御答弁だったというような気がするので、ぜひそこは引き続き掘り下げた議論をやっていただきたいというふうに思います。
 きょうは、日米同盟について、実は本質論をやりたいと思っております。思いやり予算、特別協定の議論を、あれは外務委員会でしたので、私も質疑に立つ機会がありませんでしたけれども、ちょっと聞いていて違和感もありましたものですから、そのことも含めて質疑をさせていただきたいのですが、きょうは法案審議の場でございますので、一点だけ、設置法の改正案についてただしておきたいと思います。
 自衛官の定数削減についてであります。今回、三百四十四名の自衛官の削減で、皆さんのお手元に平成九年からことしの改正分まで含めて自衛官の定数の推移という表を、これは折れ線グラフにしておけばよかったんでしょうけれども、表をお配りいたしました。平成九年比で、陸上自衛隊の場合は実に一五%近く定数が削減されて、今回も千人以上の削減、こういうことになっているわけですけれども、私は、最初に大臣に、陸上自衛隊の任務、役割と人員とのバランスについて、現状どんな御認識かということを伺いたいんです。
というのは、イージス艦の事故の後に海上自衛隊の指揮官会議を緊急に招集されましたね。そのときに大臣が訓示の中で、相次ぐ不祥事にはなぜという思いを禁じ得ない、人はふえない、任務はふえる、責任は重くなる、何が起きているのか、どうすればいいのか、こういうようなお話をされたというふうに報道で読ませていただきましたけれども、同じことが実は陸上自衛隊にも起こっているのではないだろうか。
 つまり、今までは、本格的な侵略事態に備えようということでやってきた。しかし、新たな脅威が生まれてきた。そういう中で、多様な事態に対処できなきゃいけないということで、ゲリラだ、特殊部隊だ、テロだ、あるいはそういうことをしなきゃいけないということで、市街戦の訓練もしなきゃいけない。一方で、PKO法の定めに従って、二千人からの陸上自衛官を即応態勢に毎年置いておかなければならない。あるいは、雪祭りから、最近は何か援農、農業支援までしておられるということ、そして災害派遣は度重なる。
 こういう中で、今少し触れたように、どんどん人員が削減されていく。まあ、定数ですけれども、これは実数に合わせたという説明もできるかもしれませんけれども、こういう状況の中で、やはり陸上自衛官の皆さんも、将来どうなっていくんだと。少子化になる、財政もますます厳しくなる、そういう中でミッションをどうやって果たしていけるんだ、自分たちは、これからどういう方向性を持って陸上自衛隊というのは動いていくんだということ、多分、相当懸念も部内にあるんだろうと思うんですね。
 その辺のところをぜひ大臣から、定数の問題とこれからの陸上自衛隊のあり方を含めて、ミッションと人員のバランスについて御答弁いただきたいと思います。

【石破国務大臣】

現大綱をつくるときも相当議論をいたしましたし、ここでもそういう議論があったと記憶をいたしております。
 英語で言えば、結局、陸上自衛隊はファイナルゴールキーパーとよく言われますが、やはり、陸の守り、本土においてといいますか、日本国内においてファイナルゴールキーパーとして役割を果たすというその意味合いがいささかも減ずるものではないと考えております。
 ただ、では、ああ堂々の戦車戦みたいなことがこれから先起こるんだろうかというと、全く絶無とは言いませんが、蓋然性はやや低くなってきたのだろう。そうすると、まさしくテロであるとかゲリラであるとか、あるいは大震災であるとか、蓋然性が高いと見込まれるもの、そういうものにシフトをしていくということは、まず大事なことなのだろうと思います。
 もう一つは、やはり機動力というものを高めていかねばならない。密にあちらこちらに部隊を置いておくということは、それはベストに決まっているのですが、例えばCXという飛行機が将来的に入る、そうすると従来の三倍ぐらいの輸送能力を持つわけですね。そうすると、その大きな輸送力を持った飛行機であるとか、あるいは、輸送艦でも最近は非常に大型化しておるわけでございます、そういう機動力を使うことによって、従来ほど密に置かなくていいのではないかという考え方があり得るだろうと思います。
 やはり、従来の北方重視からやや南西方面へシフトをしていくということも考えていかねばならないだろう。他方、今出しておりますのは、ゴラン高原だけでございます。もちろんネパールにも出しておりますが、ネパール、ゴラン高原、この二つですね。かつては、サマワに出しておった、その前は東ティモールに相当大きな部隊を出しておった。
 これから先、一般法の御議論にも係ることだと思いますが、やはり我が国が世界の平和を維持するために、さらにこの役割を拡大するということはあり得るのだろうと思っております。それに見合った改編というものも順次行っているところでございますが、それに見合った装備あるいは能力あるいはその根拠法たる法律、そういうものをきちんと確認しながら、海外任務にも柔軟に対応できるようにしていきたいと思っております。
 委員もお触れをいただきましたが、私は、定数も大事なんですけれども、定数はきちんとそろっているが、でも充足率は全然足りない、偉い人はいっぱいいるけれども、中の部隊は余りいないというようなことはあるべきではないというのは、これは共通認識でございます。やはり、充足率というものに配意をしながら、それぞれの部隊が持っている能力というものをきちんと発揮できるようによく配意をしていきたいと思っております。

【長島委員】

機動力、それから南西重視、幾つかキーワードを言っていただいたんですけれども、新たな脅威に対応しなければならない、それから、今おっしゃっていただいた、国際的な安全保障環境の改善にも寄与していかなきゃならない。一般法がこれからつくられていって、そして、今は五十数名に、今PKO部隊、少なくなっていますよ、プラス航空自衛隊がイラクに出ている。今のところ、あとはインド洋が少し入っていますけれども、数の点ではそれほど大規模な国際平和協力任務に出ていない状況ですよね。でも、これからは、そういう方にも出ていかなければならない。
 それから、さっきもちょっと触れましたけれども、ゲリラ・コマンドー対応ということで、今盛んに市街戦、狭いところで訓練をするようになっている。そうすると、逆に、戦車や火砲、もちろん先ほど本格的な着上陸侵攻みたいなケースというのはなかなか考えにくいというお話でしたから、シフトしていくことはやぶさかではないんですけれども、そういう中で、やはり、陸上自衛隊の中には火砲や戦車の訓練に割く時間が最近は大分少なくなっている。これは、アメリカも実はそういう状況があるそうですね。海兵隊は今イラクに行く、アフガニスタンに行く、もうとにかく陸軍と同じように陸上でやっているので、艦艇に乗ったことのないマリーンが最近はかなり出てきてしまっている。
 こういうことでありまして、私がちょっと気にするのは、陸上自衛隊、そして今アメリカの海兵隊もそうですけれども、アイデンティティークライシスに陥らないかということなんですね。自分たちはどういう任務で、どういうミッションで、そして将来陸上自衛隊においてはこういう方向性であるということを、やはり石破大臣ですから、明確な方向性をぜひ示していただきたい。そうしないと、定員は実数に合わせた、しかし中が何となく心理的に混乱している、こういうことになりかねないというふうに思いますので、今、これから国際貢献の任務がふえていく中で、そのことをぜひお考えいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、日米同盟の話に行きたいんですけれども、一般法の議論も後でやります。国際任務についても、日米同盟をこれから改革していく上では非常に大きなかぎを握っていると思いますので、そこに触れたいと思うんです。
 よく日米問題は、双務的だけれども非対称性があると。お互いに義務は果たしているんだけれども、その果たし方について非対称の状況にある。この非対称性というものが、どうもこれまで日米同盟関係を不安定にしてきた、何か起こるたびに動揺させてきた、そういう原因ではないかというふうに思うんですね。
 石破大臣、ここで大臣として、この非対称性というのをどのようにとらえておられるか、何が一番根本にあって非対称的な関係になっているかということを少し国民の皆さんにわかりやすく説明していただけますか。

【石破国務大臣】

政府として、現在の日米の安全保障の関係というもの、これを維持する、さらに信頼性を高めていくという方針には全く変わりはございません。
 これは、委員といつも議論をすることですが、人と物との関係になっている。アメリカがいろいろな国と結んでいる条約の中で非対称的な双務関係にあるのは日米だけだという認識は、私たちはきちんといつも持っておかねばならないことだと思います。それは、能力があるとかないとか、そういうお話ではありません。アメリカ合衆国を守り得る能力なんて持った国は、実は世界じゅうどこにもないのであります。
 しかしながら、同盟であるからには、やはり対等な関係というものが常に志向されて、人と人との関係が合衆国が結んでいる二国間の関係である。ただ、日米のみが人と物、すなわち、アメリカは日本を守る義務を負う、日本はアメリカを守れない。なぜならば、それは集団的自衛権が使えないからである。自衛の必要最小限度を超えるので、憲法上これを行使することはできないという立場に立っておるわけでございます。
 そうすると、アメリカは日本を守る、日本はアメリカを守れない。では不公平じゃないかという話になって、日本の独立と平和、そして極東の平和と安全に寄与する合衆国軍隊に施設または区域を使用させるという関係に立っておるということだと思います。
 私は、この日米の関係というものが、今まで日米にとって非常に有益なものであったし、国益が重複する日米において今後もこれが維持されるべきであるというふうには考えております。しかし、根幹は何かといえば、そこにおいて憲法のいろいろな考え方によって日米というものがそのように非対称的になっておるということは、よく認識をしておかねばならないことだと私は思います。

【長島委員】

大変わかりやすい御説明をいただいたというふうに思います。
 私も、自分なりの言葉では、有事のリスクはアメリカ、平時のコストは日本、これが今の日米同盟の基本構造になっている。これは、今まで有益だったというふうに大臣は積極的に評価されました。私も集団的自衛権の行使については、大臣と恐らく同じ見解にあって、今閣内に入っておられますので、そんな大それたことはおっしゃれないと思うんですけれども、私は、ここは集団的自衛権の問題は一つ克服しておかないと、ほかの国の同盟関係とは異質な日米関係になっていると。
 そこで、有事のリスクはアメリカ、平時のコストは日本という非対称的な関係である、それが有益であると。しかし、不安定なんですね。今回の特別協定の議論を見ても、やはり出てくるんですね。何でバーテンダーとかバナナボートの監視員の負担を日本がしなきゃいけないんだ、全く国土交通省の無駄遣いと似たり寄ったりではないか、こういうような議論になってしまっている。
 そのコストについては、リスクについてきちんと分担がし切れていないので、コストについては日本は多少の無理もせざるを得ないという関係であるということは、私は、与野党問わず認識を共有しておかなきゃならない、こういうふうに思うんです。
 したがって、リスクについて日本が踏み込んだ役割分担をしない限り、コストについて、その細かいところについてああだこうだと言うのは、これは納税者の代表としては当然成り立つ議論ですけれども、アメリカ側に対してどれほど説得力があるのかというのが私の問題意識なんですよ。
 例えば、駐留軍の経費と呼ばれているものは、約五千七百九十九億円と言われています。そのうち七五%を日本が負担している。しかし、アメリカの会計検査院、GAOの、たしか二〇〇〇年のリポートには、アメリカの日本周辺への前方展開にかかるコストは二百五十億ドルという数字、試算が出ているんですね。つまり、今我々が議論している駐留軍の総経費と言われているものの約五倍ぐらいを、兵力を前方に展開するためにアメリカは既に負担をしているんです。ですから、コストの議論を細かくしていくと、何だ、こっちももっと負担しているじゃないか、まだ足りないじゃないかみたいな議論になりかねないんです。  ですから私は、やはりこの不安定の芽を、もちろん集団的自衛権の問題にいきなり行くのは難しいと思いますけれども、少しずつでもそういう不安定の要因は取り除いていく必要が、我々、政治にはそういう責任があると思っております。さっきのリスクとコストの議論に倣って言えば、リスクもコストも日米間で適正に配分できるような関係をつくっていけないものか、これが私の従来からの問題関心なんです。
 私は、それで、以前に本を書かせてもらったこともあるんですけれども、その中で、こういうことを書きました。やはり日本の安全保障に対する関心のレベルがアメリカとちょっと違っている。これは、何ができるかということは、それは、それぞれ国力が違いますから差があっていいと思うんですけれども、関心とかあるいはコミットメントみたいなものまで差があると、これはなかなか、日米間で同じテーブルに着いて、同じような対等な議論ができないと思うんですね。
 それはなぜかというと、日本の議論というのは、いつも日本の防衛と、せいぜいその周辺事態に対して日本はどうするかという議論にちょっと陥りがちなんですね。プラスして、今回、去年ですか、本来任務化された国際的な安全保障の議論もようやく始まったわけです。
 きょう皆さんのお手元に、三枚目に配らせていただいた国際平和協力活動についての概念図を見ていただいたらわかると思うんですが、これは、それぞれフェーズごとに、平時から危機、そして紛争、そして停戦があって安定化、復興、平時、こういう軍事的なリスクの度合いが折れ線グラフになっていますけれども、こういうフェーズがあるわけですね。
 そこで、例えばアメリカが国際的な安全保障を考えたときに、このすべてのフェーズで頼りになるのは同盟国でどこかいなと。イギリスやオーストラリアは、この平時から、危機、紛争、安定化、復興、すべてのフェーズで恐らくアメリカと、レベルの差はあれ、かなりの程度リスクは共有できる立場だと思いますね。では、日本はどうか。予防は少しやれるかもしれません。PSIに参加をしたり、情報共有したり、あるいは、最近は海洋の安全保障ということで、マリタイムセキュリティーというような分野にも日本はこれから踏み出していくべきだと思います。
 では、日本は、危機や紛争ではなかなか役に立たないけれども、せめて停戦が終わった後、治安の維持あるいは平和構築、復興支援、こういう部分では頼りになる同盟国になるべきだと私は思うんですね。今、ドイツやカナダやフランスは、恐らくそういうアメリカに対する同盟国になっていると思うんです。
 停戦が終わった後は、例えば今、アフガニスタンがそうだ、イラクでもそうだ、アメリカと一緒に、あるいは多国籍の国々と一緒に有志連合ということでやっている。日本の場合は、実はこの部分も、後方支援を中心に一部しかできない。今現状では、特措法で個別事象にしか対応できない。それから、いつ参加してくれるのか、いつ国会の承認が出るのかおぼつかない。これでは、本当の意味でリスクを共有しているとは言えない。そういうふうに思うんですね。
 ですから私は、ここで日本としても、こういう分野に、つまりは、せめて停戦が終わった後の国際的な平和活動には日本も積極的に出ていく。そういうことでアメリカと有事のリスクを、軍事的なリスクもシェアをするという関係を築いていかなかったら、コストを下げていく、コストの分担でアメリカと適正に配分していく、つまりは、こんなことまで日本は面倒見切れませんよ、自分たちでやってくださいねとは言い切れないと思うんですね。
 大臣の御所見を伺いたいと思います。

【石破国務大臣】

私は、基本的に委員とほとんど同じ考え方なのだと思っております。
 アメリカの議論は、確かにおっしゃるとおりなので、アメリカはどれだけ負担していると思っているんだということがあるわけですね。日本は、この負担はほかの国に比べて重いじゃないかということを言いますと、アメリカが決まって言うのは、いやいや、ほかの国にも日本を見習ってほしいんだというようなことを言っておるわけで、非常に認識にそごがあるなというふうに私は思います。
 やはりそこは、同盟の対等性というものをどれだけ高めていくかという話と、実際にそれを、具体的にどういう部分でリスクをシェアするかというお話をしていかなければ、やはりそういうことができないんだったらお金を出してちょうだいねという議論になるということだと思います。
 では、どうやってリスクをシェアしていくかということを考えた場合に、極東の平和と安全のために、現行憲法の範囲内でどれだけリスクがシェアできるかという議論が一つあるんだろうと思っております。余りこの議論というのは正面から行われたことはないんだけれども、現行憲法の範囲内でどれだけ、日米同盟に言うがところのこの極東の、何もそれは地域を限定したものじゃありませんが、極東の平和と安全に寄与するために日本はリスクをシェアできるかということが一つ。
 もう一つは、今委員が御指摘になったここの部分でどれだけシェアをできるか、この図の中でどこまでできるかということでございます。
 ここの場合には、すべてが憲法論になるわけではなくて、イラク特のときにも議論をしたと思いますが、例えばオランダがやられた、あるいはオーストラリアがやられた、現地の治安を守っているそういう軍がやられたと。では日本は、それを助けに行けますかというのは、必ずしも憲法問題にダイレクトではない。
 テロやゲリラに襲撃をされているということを前提とするならば、それは自衛権を行使しているわけではないのだから、それを救出に行くということは、必ずしも集団的自衛権の問題ではないであろう。あるいは、治安当局と協力をしながら現地の治安を守るということを支援する、治安維持そのものは現地の責任を持った当局がやることですね、日本が外国で治安なんか維持はできませんが。それのサポートをするということも、これは必ずしも憲法問題ではないのではないか。
 そういう、憲法の中で許されたいろいろなメニューを並べて、今、日本にとってやるべきことは何なんだろうかということを政府が提示をし、国会がそれについて御議論をいただき、事前とか事後とかいろいろなお話はあるんでしょうが、そこにおいて国会がきちんとした承認をいただくということが、私は、世界の平和のために日米がリスクをシェアするということではないのだろうかというふうに思っております。
 それが、日本における納税者の負担を減らすということのためにやっているわけじゃありませんけれども、まさしく委員のお言葉をかりれば、適正な負担とは何なのだという中身をきちんと精査をする、そこのプロセスにおいて必要なことではないかと私は思っております。
 今後、国会において御議論を賜りたいと存じます。

【長島委員】

今大臣、非常に重要なことをおっしゃいました。
 三枚目のこの図を見ていただきたいんですけれども、これは、おととしの五月にロードマップで日米合意をした日米協力の重点項目十五項目を表にしたものでありますけれども、左の二列と右の二列、左の二列は今大臣がおっしゃった極東の平和と安全、そして右の二列が、これは国際的な安全保障環境。特に、RMC、任務、役割、能力の分担ということで、今、ワーキングチームか何かできているんですよね、たしか政府の中で。
 それで、点線、破線の丸の中におさめられているのが、国際的な安全保障環境を日米で共同で改善していこう、こういう努力の一端なんですけれども、今、もう時間がありませんけれども、日米間でこのRMCの分担の議論というのはどの程度進んでいるのかということが一点。
 それから、それは私の質問なんですけれども、もう時間がないので私の意見だけ申し上げますと、さっき大臣がおっしゃっていただいた、まさに憲法問題にまで至らないで、しかし、極東の安全そして国際的な安全を日米間でシェアできる分野がどこまであるのかというのがまさに一般法、恒久法の議論の核心だと思いますので、それは、きょうはもう時間がありませんのでできませんが、また引き続きやりたいと思います。
 その前に、終わる前に大臣に伺いたいのは、日米間の任務、役割、能力分担の作業チームの作業がどの程度進んでいて、どういう見通しであるかということを最後にお伺いしたいと思います。

【石破国務大臣】

昨年五月に行われた2プラス2で、検討の進展について確認をし、その一部を共同発表の中に書いているということでございます。
 中身といたしましては、委員御案内のことだと思いますが、計画検討作業の持続的進展、何となく直訳調ですが、持続的進展、それから、大量破壊兵器による攻撃を受けた場合の対処について検討するための化学・生物・放射線・核防護作業部会の設置、危機及びそれ以前における柔軟な二国間の省庁間調整メカニズムの構築等々について項目が挙げられておるわけでございます。
 それぞれ深化をさせておりますが、私としては、この二国間の省庁間調整メカニズムというもの、これが本当に動くのかどうかということについて、より具体的な、実証的な作業をしていかなければいけないと思っております。いざというときにお互いの思惑が違うということではだめだ、調整に物すごい時間がかかるということでもだめだ。どういう事態にどのような役割を分担し、意思の共有化みたいなプロセスをどのようにしていくかということについて、私は非常な関心を持っておるところでございます。
 この地域における平和を構築するために、日米間が任務、役割、能力について、本当に具体的なお話をきちんきちんと詰めていきたいというふうに思っておりますので、今後とも御教導賜りたく存じます。

【長島委員】

リスクとコストを適正に配分できるような、そういう健全な日米関係を築いていくために、この任務、役割、能力分担は非常に重要な課題だと私は思いますので、ぜひゲーツ国防長官とも折に触れて議論をしていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。