長島フォーラム21

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国会質疑

2008年4月25日

【会議録】衆議院安全保障委員会

【嘉数委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

民主党の長島昭久です。
きょうは防衛省改革に対する一般質疑というふうに認識をしておりますが、大事な問題なので、先日の名古屋高裁で出ましたイラク派遣に関する違憲判決というものについてまず最初に幾つか質問をさせていただいて、その上で、防衛省改革の一つのポイントであります新たな任務、国際平和協力活動のあり方について議論をさせていただきたいというふうに思います。
先ほども今津委員の方からお話がありましたように、それからまた衆参の同僚議員の中からも既にこの違憲判決については何度か質問があったというふうに認識しておりますが、違憲判決が出たけれども政府としてどうなんだという観点が主だったような気がいたしますので、私はあえてもう少し違う角度からお話を伺いたいと思いまして、きょうは法務省の方にもお見えをいただいています。
まず最初に、事案の概要ですけれども、これは名古屋にお住まいの住民の方千百名、その中には外務省のOBの方も若干一名入っておられたように記憶しておりますが、イラク特措法に基づいてイラクに自衛隊を派遣したことが違憲ではないか、こういうことで、三つ求めていますね。一つは、派遣の差しとめ、もう一つが、派遣が憲法九条に反して違憲であるということを確認しろということ、そして三番目は、派遣によっていわゆる平和的生存権というものが侵害をされた、したがって損害賠償を請求する、この三つが争われた事件であります。
本判決は、三つのことについていずれも、却下、却下、棄却ということでございまして、まず第一に、差しとめ請求については、行政訴訟として具体的な権利性がない、具体的権利の侵害がないということで、原告適格を欠いてこれは不適法、したがって却下、門前払い。それから違憲確認請求についても、原告の権利義務に関するものではないので権利の利益がなくて、これも不適法、したがって却下、これも門前払い。さらに、損害賠償請求については、派遣によって控訴人らの具体的な権利あるいは法的保護に値する利益というものが侵害されたとは認められないので請求棄却。こういうことで、原判決をすべて支持いたしまして、国としては勝訴。
しかし、ここで一つトリッキーなことがありまして、本判決、いわゆる主文ではないところで、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊による輸送活動というものが憲法第九条に違反する活動を含んでいる、いわゆる違憲判決を主文ではないところで判示した、こういうことになっています。
一つ、率直に疑問を感じるのは、先ほど紹介いたしましたように、主文のところで、違憲確認請求をしていて、それは権利義務に関するものではないからといって却下をしているわけです。これは一審も同じように却下をしています。したがって、どうして却下をしなきゃならないのかという理由を述べるならばもちろんいいわけでありますが、違憲確認は却下をしておきながら、実は違憲でしたということを判決の中で述べているわけでありまして、第一の疑問は、この違憲判断をした部分というものが本判決の中でどのような位置づけになっているのか。つまりは、今言った違憲確認請求を却下するという結論を導く上で必要があったのかどうか、ここが第一の疑問なんですけれども、お答えいただけますでしょうか。

【始関政府参考人】

お答え申し上げます。  今、委員から判決の事案の内容を御説明いただいたわけでございますけれども、その御説明にもありましたように、この違憲判断の部分は、判決の主文、結論であります主文を導き出すのに必要なものではなくて、いわゆる傍論と言われるものであろうと理解しております。

【長島委員】

もう少し明確にお答えいただきたいんですけれども、といいますと、結論を導くには必要だったんでしょうか、必要なかったんでしょうか。

【始関政府参考人】

必要でなかったというふうに理解をしております。

【長島委員】

一般的には、裁判所というのは、結論の判断にかかわらないような事柄について判決理由に書き込むことが通例なんでしょうか、そうでないんでしょうか。

【始関政府参考人】

お答え申し上げます。
 民事訴訟の判決書には、主文と理由を書かなければならないと定められているわけでございますけれども、その理由をどのように書くべきかということについては特段の規定はございませんで、解釈問題ということになるわけでございます。一般に、民事訴訟の判決理由には、判決の結論である主文を導くために必要な争点について、論理的整合関係に従って判断を示すのが適切であるというふうに解されております。
 しかしながら、裁判所は、当該紛争の抜本的な解決、当事者の納得等の観点を考慮いたしまして、判決の結論を導くために論理的には不可欠でない事項、いわゆる傍論でございますけれども、それについても、必要と考える範囲で判断を示すことは可能だという考え方が一般的のようでございます。

【長島委員】

当事者の納得というポイントを示されましたので、後でそれについては伺いたいと思います。
 これは名古屋高裁、高等裁判所の判決でありますけれども、これまでにも同じような訴訟が全国各地で多数提起されていると認識をしております。どのくらい提起をされているのか、そして、これから先判決が控えている同趣旨の訴訟がどのくらいあるのか、高裁、地裁、具体的に御説明いただければありがたいと思います。

【貝阿彌政府参考人】

お答えします。
 委員御指摘のとおり、今までにも多数同種の訴訟が起きております。本件の一審判決を含めまして、これまでに既に六十以上の判決がされております。そして、現在係属中のものは、福岡、札幌の高等裁判所、それから岡山の地方裁判所に係属しております。
 先ほどの件でありますけれども、これまでの六十以上の判決はすべて、平和的生存権は具体的権利性がないということなどを理由としまして、憲法判断はすることなく、訴え却下あるいは請求棄却の判決をしております。  以上です。

【長島委員】

そうしますと、今回の高等裁判所の判決というものが、これから岡山、札幌、福岡で控えている判決にどんな影響を与えると考えられるか、お答えいただけますか。

【始関政府参考人】

お答え申し上げます。  我が国は、英米におけますような判例法主義というものを採用しておりませんので、下級審の裁判例はもとよりのこと、最高裁の判例であっても、厳密な意味での先例としての法的拘束力はないと一般に解されております。
 したがいまして、今回のような下級審の違憲判断は、それが、傍論でされているわけでございますが、その場合はもちろんのこと、判決の結論を導くのに不可欠な部分でされたものであっても、同種の事件が後に係属した裁判所の裁判官に対して、当該判断に従う法的義務を負わせるものではございません。ましてや、先ほども申し上げましたように、今回の件は傍論として述べられた、結論を導くのに必要な部分ではありませんので、何ら法的な意味はないということになろうかと思います。

【長島委員】

確かに、法的拘束力がない、英米法と違うから先例主義ではないということでありますが、しかし、全く影響がないかというと、これはそうも言えないんだろうと思うんですね。
 特に、これは今回言いっ放しになっているんですね。国側が基本的には勝訴しておりますので、傍論の論理に不服があるからといって上告する道は閉ざされておりますので、最高裁に行って違憲か合憲かということを争う道がなくなっている。こういうことの持つ意味は、実はそれほど軽くないと私は思っております。  これは法務省に伺いたいんですけれども、こういう形で違憲判決がある種確定したまま残る、最高裁できちっと争うことができない、こういう状況をどう考えておられるか。
 私の見解を申し上げますと、我が国は三審制です。そして、最高裁をもって憲法判断の終審裁判所と憲法八十一条に書かれているわけです。その最高裁における判決を待たずにというか、そういうものの入り込む余地をあらかじめ封じておいて、傍論という形でこういう議論をして、そして、その判決が形式的ではあっても、一応現状における最高の裁判所の判決ということで残る、このことの意味をどう考えているか。
 もう一つつけ加えるならば、上訴の権利が封じられている、このことについて、法務の担当者としてどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。

【始関政府参考人】

お答え申し上げます。  今、委員御指摘のとおり、下級審の場合には、その憲法判断が最終的な形になってしまうということは、本来好ましくないものであろうというふうには思っております。
 ただ、理由にどこまで書くことが許されるのかということについては、先ほども申し上げましたように解釈問題でございまして、こういう憲法判断が最終的となってしまうような形での下級審の判決での理由というものが許されるのかどうかということについては、必ずしもこれまで十分な議論がされていないようでございます。
 委員がおっしゃられたような考え方、つまり、その憲法判断が最終的な形になってしまうような判断を傍論として述べることは許されないという見解も一部にあるようでございますけれども、必ずしもそうとは考えられていないようでございまして、当不当の問題にとどまるというふうに考えている考え方も多いようでございます。
 したがいまして、今回の判断が許されないものであるということは申し上げにくいわけでございますけれども、少なくとも妥当ではなかったのではないかというふうに思っております。

【長島委員】

許されないなんて言ってもらおうと思って質問しているわけじゃないんですけれども。
 これから先の話になりますと法務委員会の範疇でございますので、余り詳細に入り込むつもりはありませんが、先ほど当事者の納得というお話をされました。これはやはり、私が国側の代弁をしても仕方がないんですけれども、上訴できないということでありますし、そういう意味でいうと、国側の裁判を受ける権利をある種侵害しているような今回の判決だと私は思いますし、これはもしかすると憲法改正の、憲法裁判所の設置というようなことに議論が展開していく一つの余地を見出すような判決だったのではないか、法学部の学生にとっては非常におもしろい題材になったのではないだろうか、こういうふうに思うわけですが、これはしかし、石破大臣、行政府、わけても違憲と言われた自衛隊の最高責任者としては看過すべからざる判決だというふうに思うんですね。
 といいますのは、これからの判決に対しては法的拘束力はない、先ほどこういうふうにおっしゃいましたけれども、それでは行政府に対する拘束力、この判決の傍論で述べられた違憲だという判決の行政府に対する拘束力をどう考えておるのか、法務省から、その後大臣。

【始関政府参考人】

お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、傍論というものは本来必要のないものを書いているだけのことでございますので、それには何ら法的な意味はないわけでございまして、行政府に対する拘束力ももちろんないわけでございます。

【長島委員】

ただ、さはさりながら、社会的な影響力というのは相当大きなものがあるんだろうと私は思います。
 したがいまして、裁判の場では反論の機会がなかったようなので、ぜひ石破大臣に、この違憲判決に対する反論をこの場でしていただきたいと思うんですが、この判決、自衛隊の最高責任者として、そして派遣命令をされているお立場としてどう受けとめておられるか、大臣から御説明いただけますか。

【石破国務大臣】

国が勝訴しておりますからどうしようもない、反論をこれ以上する立場を封じられているので極めて困ったことで、だとすれば、こういう場で申し上げるしかないと思います。
 あるいは、私が気にしておりますのは、この後それぞれの特措法の期限が参ります。補給新法の期限の方が早く来ます。そして、来年のうちにはイラク特措法の期限が来ます。そのときにこれが影響なしとは私は思っておりませんで、本当に一般法の議論というものをちゃんとしなきゃいかぬというのは、それも含んだ上で私は必要性を感じているのです。
 あえて申し上げれば、バグダッドは戦闘地域だ、こういうふうに言っておられますが、私どもはバグダッド空港というふうに申し上げておるわけで、バグダッドが戦闘地域であるかどうかというような議論はしたことがございません。そこは判決として、この法律の持つ意味あるいは構成、よく御理解をいただいていないのではないかというふうに考えております。
 そして、何ゆえこれを戦闘地域であると。たとえ、イラク特措法が九条に合致したものであるとしてもなお、今の航空自衛隊がやっておることは憲法違反である、こういうことを言われますが、では、判決は国際紛争というものをどのように定義をしているか、戦闘地域というものをどのように考えているか、それが憲法九条一項に言うがところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というものとどう関連づけられるのかというのは、私は判決を何度読んでもわからないんですね。
 これは、御党のメーンストリームの議論とは反するのかもしれませんが、国際紛争というのは国と国が主体なんです。国際紛争というのはそういうものですから。そういうふうにつくってありますから。九条もそれに基づいて書かれている。
 バグダッド空港において現出している状況の中に、国際紛争の主体は登場しているとは思いません。それは、アルカイダがザ・ベースというふうに英語で訳されますように、国という一定の支配領域を持っているわけでもない、アルカイダ国民というものがいるわけではない、そしてアルカイダ統一組織というものがあるわけではない。そのほかのいろいろなテロあるいはゲリラ組織においても同様であります。それが国際紛争の主体たり得ない以上、少なくとも今の憲法九条一項に抵触するという論理には全くならない。
 だとすれば、憲法を変えるという議論がなければおかしいわけで、憲法違反という議論をするのであるならば、今の憲法九条が禁ずるものは何なのか、そこの主体は何なのかということをきちんきちんと詰めて議論をいたしませんと、国会において議論の末できた法律とは一体何だったんだということになるはずなので、私は正直言って、論理の組み立て方が極めて不正確かつ粗雑である、粗雑という言い方が失礼であるならば、緻密でないというふうに言わざるを得ない、このように思っております。

【長島委員】

事実認定については、後で細かくやろうと思っていました。
 ただ、大臣、今の御説明、私ももう何度も伺った。大臣は滑らかにおっしゃいますから、何となく引き込まれるところもあるんですが、しかしそういう説明が、つまりバグダッドはまだしも、我々が相手にしているのは、バグダッドという地域の中にあるバグダッド空港の話をしているんですよ、そこにおいては現に戦闘は行われていない、将来にわたって行われる可能性がない、だから大丈夫だという話にはなかなか、一般の国民から見るとどうも詭弁に聞こえる。
 こういうあいまいなところを今回の判決ではついたという部分は、私はフェアに考えて認めざるを得ないというふうに実は思うんです。その話をします。
 ちょっとその前に、イラクに派遣されている航空自衛隊の皆さんからすると、今回の判決というのは余り好ましい判決じゃないと思うんです。空幕長が、そんなの関係ない、こういう発言もされたように報道されておりますが、航空自衛隊の派遣部隊の方々に対する心理的な影響について、防衛大臣としてどのように考えておられますか。そして、それに対してどういう措置というか処置というか対処というか、されるおつもりですか。それとも、おつもりはありませんか。

【石破国務大臣】

これは、先ほど来法務省からもお話がありますように、私からもお話ししましたように、行政に対して法的拘束力を持つものではないというお話でございます。ただ、こういうものが出たということ、またこれによって力を得るというか、そういう方々がおられる、画期的な判決だと。敗訴して画期的判決というのも不思議な話だと私は思うのでございますが、そういうことは影響なしと私は思いません。したがいまして、これは統合幕僚監部の方から現地の部隊に対して、こういうことのきちんとした内容を伝達し、しかしながら政府としてはということを伝えるということは行っております。
 また、航空幕僚長が、その表現が適切であったかはともかくとして、ただ、後でよく検証してみますと、私よく存じ上げないのですが、最近人気があるお笑いタレントの方を念頭に置いておっしゃったのではないらしいのですね。おちゃらけて言ったのではなくて、本当にそういうのは関係ないのだ、政府の方針は毫も揺らぐものではないということをおっしゃったということでもあります。
 私自身も委員から、詭弁に聞こえるというふうな御批判をいただきました。国際紛争とは何かとか、その主体とは何かとか、そういう一種、マニアックなとは申しませんが、法的にぎりぎり詰めたような議論をすると、やはりそれはすとんと落ちないところがあると思うのですね。戦闘地域というのは危険な地域に決まっているじゃないかという方が、よほどすんなり入りやすいところはあるわけです。
 私は、日本国憲法九条第一項は日本国特有のものではなくて、特有なものは第二項のはずであって、第一項的な規定というのはあちらこちらの国にございますから、日本特有の現象なのかといえば、これは何でそういうことになるのかという気がいたしております。ここのところがやはり、主権者たる国民の方々が、ああ、そうだねというふうに思っていただけるような論理の展開というのができないかということは、私自身ずっと、前の長官のときから考えておるところでございますが、なかなかいい知恵が浮かばない。
 そこのところは、委員ともこの間議論いたしましたように、結局、主権国家というものを主体に構築されている今の国際法システムとかあるいは国連のシステムとか、それをどう考えるんだという問題に逢着せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
 ここにおいて、委員から、こういう考え方でどうかとか、やはりここはこう変えねばならないのだとか、そういうような御指摘をいただければ、私も本当にそれを糧としながらよく考えてみたいと思っております。

【長島委員】

その提案をさせていただこうと思っています。
 その前に、事実認定、先ほど防衛大臣が、何度判決文を読んでもロジックがよくわからぬ、こういうお話でありましたけれども、二つ言っていますね。一つは、バグダッドが戦闘地域だと言っている。戦闘地域というのは、国際紛争が現に行われているんだ、こういう言い方をしていますね。それからもう一つは、航空自衛隊の輸送対象は武装兵員だ、武装した多国籍軍の兵員だ、したがって武力行使とまさに一体化しているんだ、こういう判示であります。
 実は、これは私が防衛大臣にいつも不満を言っているポイントなんですけれども、十分な情報を国会ももらっていないんです、どういうものを輸送しているのか。物資のトン数は出ているんだけれども、あるいは輸送の回数、飛行回数は出ているんだけれども、何を、どういう形で、どこからどこへというのは、我々ですら情報を得るのはなかなか難しい、こういう状況だったはずですね。
 にもかかわらず、これだけこの高裁の裁判官が断定的に事実認定をしているということは、防衛省としてこの裁判所に対して何か、我々が得られていない、つまり国民が得られていないような特別な情報提供をされたんでしょうか。

【石破国務大臣】

この点においては、このことがそもそも争点になっているわけでもございませんので、私どもの方からそういう情報を、つまり国会にも提示していないような情報を裁判所に対して提示したということは一切ございません。

【長島委員】

それでは、もう一つ疑問がわくんですけれども、裁判所はどのような情報に基づいてこういう事実認定を行ったのか。
 現地の状況、あるいは航空自衛隊の活動内容、これがはっきりしていないと、この違憲判決の、違憲という判決の結論ではないんですけれども、違憲という判断の根拠の正当性が疑われることになると思うんですが、いかがでしょう。

【貝阿彌政府参考人】

今の御質問の点ですけれども、判決書によりますと、控訴人、一審原告の提出した証拠書類及び証人の証言等が挙げられております。
 具体的に言いますと、国会議事録、防衛白書、新聞記事、軍事史研究家の証言などの証拠が挙げられております。

【長島委員】

私は野党の立場ですからなかなか言いにくいんですけれども、非常に証拠としては精度を欠くというか一方的というか、この判決を見る立場として、ここはやはり必要な視点ではないかな、そんな感想は持っております。
 ただ、そうであったとしても、この判決の持っている意味というのは非常に重いと思うんです。特に、これから一般法を議論していこうという我々にとっては、政府解釈の泣きどころといいますかあいまいさというものをかなり効果的についているんじゃないかなという感じを私は持っているんですね。
 一つは戦闘地域、非戦闘地域の概念の問題、それから武力行使の一体化とは何ぞやという問題、この二つについては、先ほど防衛大臣は、何度読んでもわからぬ、こういうお話だったんですが、例えばバグダッドでいわゆる国際紛争のようなものが現に行われているではないか、こういうくだりがあるんですね。
 ちょっと要旨を読み上げますと、現在のイラクにおいては、多国籍軍と国に準ずる組織と認められるような武装勢力との間で、一国国内の治安問題にとどまらないような武力を用いた争いが行われており、これは国際的な武力紛争が行われているものと言うことができる。特に、首都バグダッドにおいては、平成十九年に入ってからも、十九年に入ってからもですから、一年前で少し古いですが、アメリカ軍がシーア派及びスンニ派の両武装勢力を標的に多数回の掃討作戦を展開し、これに武装勢力が相応の兵力をもって対抗し、双方及び一般市民に多数の犠牲者を続出させている地域であるから、国または国に準ずる組織同士の戦闘ですから、まさに国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為が現に行われている地域と言うべきである。したがって、イラク特措法に言う戦闘地域に該当するものと認められる。こういう論理展開なんです。
 大臣、バグダッド空港は現に戦闘が行われていない、政府はそういう定義づけをされていると思いますが、バグダッドを中心とする今のイラク、アメリカ軍を初めとする多国籍軍とスンニ派、シーア派の民兵を中心とする国に準ずるような組織との間での武力闘争だ、そういう観点はお持ちでしょうか、お持ちでないでしょうか。

【石破国務大臣】

委員のおしかりを覚悟の上で答弁をすれば、私どもは、バグダッド空港ではなく、バグダッドあるいはイラクのほかの地域において、国際紛争を解決する手段としての武力の行使が行われているか、いわゆる戦闘行為が行われているかということを判断するということはいたしておりません。また、この法律もそれを要求しているものではございません。防衛省としてお答えできる範囲はここまででございまして、その点は容赦できないとしかられればそれまででございますが、そういう答弁しかできない。
 ただ、一言言わせていただきたいのは、今委員が引かれました判決、その中において、なぜそれが国または国に準ずる組織というふうに法的に評価されるのかというロジックが抜けていると私は思うんですよ。国とは何ぞやといえば、それはやはり、領土であり、国民であり、統治機構なのではないか。いや、そうではない、戦車を持ち、戦闘機を持ちというようなことで、それが高度の武力を有し、能力を有している、だから国に準ずるんだというのは、それは論理としてはおかしくないでしょうか。
 仮にそういうものを持っていないとしても、ちっちゃな島で、そこに人々が例えば二千人しかいないとしても、それが領土を有し、そしてまた国民の帰属意識がきちんとあり、そして統治の体制がある、それは国に準ずる組織でしょう。しかしながら、どんなにいろいろな武装を持っていて、それが組織化されていたとしても、それがなぜ国または国に準ずる組織という法的評価になるのか、私にはそこが理解できないのでございます。

【長島委員】

今の話は、もう少し詰めていかないといけないと思っています。
 過去の答弁例を私は持っていないのでにわかに反論できないんですけれども、たしか国または国に準ずる組織というのは、例えばイラクにあった、サダム・フセイン前政権のバース党が持っている軍事組織とか、あるいはシーア派とかスンニ派の民兵組織も、これは国に準ずる者という規定を政府はされていたような気がするんですね。そうでないのは盗賊だとかゲリラとか匪賊とか、そういうものが国に準ずる者ではないという認定だったような気がするんですが、きょうはそこまで細かくやろうと思っていませんでしたので、ぜひ次回ここはやりたいと思います。
 今大臣も、苦しい御答弁だったというふうに、冒頭に許してもらえるかどうかわからないというようなニュアンスの話をされましたけれども、事ほどさように、この非戦闘地域かどうかという議論、あるいは後で触れます、武力行使と一体化しているかしていないか、この議論というのは極めてまだ説得力に欠けるんです。政府の説明も恐らく、聞いている国民の皆さんに対する説得力に欠けるんです。
 この問題をあいまいにしたまま一般法の議論をたとえ始めていっても、私は、結局は自衛隊が活動する地域が非戦闘地域だみたいな答弁に終始して、最終的に不毛な議論から抜け切れないというように思いますので、やはりこれは立法府として、我々も含めて、どういう基準を設けることが、現場の自衛官にとっても、国際社会から見ても、国民にとっても、政治家にとっても、政府にとっても納得がいくのかということを、もう一回知恵を絞っていかなきゃいかぬ、こういうように思うんです。
 その中で、一体化の議論がよく言われるわけです。この一体化の議論も、今回の判決の中で、武装兵士を輸送することは一体化だ、こう言っています。そのことについてどう解釈をされるかということが一つなんです。
 そもそも、政府の解釈ですら、例えば武器弾薬の提供は、一概には武力行使の一体化にはつながらないけれども、しかし活動からは排除すると言っていますね。つまり、もしかすると武力行使の一体化に触れる可能性もあるというニュアンスだと思うんですね。それから、戦闘作戦に直接発進していく作戦準備中の航空機に対する給油や整備、これは周辺事態法で武力行使と一体化するというおそれがあるので、たしか活動から排除された経緯がありますね。
 今回の判決では、武器弾薬の輸送については全く触れていないんですが、武装した兵員を輸送することは一体化だと言っている。政府の説明を聞いても、あるいは判決を読んでも、何が一体化で何が一体化でないのかというのは、にわかにわからないんですね。
 これは、国際法的にはどういう位置づけなんでしょうか。武力行使の一体化というのは、日本だけの議論なんでしょうか。それとも、国際法上通用する議論なんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

【小松政府参考人】

お答え申し上げます。  今、国際法との関連でという御質問でございますので、国際法の側面に限りまして御答弁を申し上げます。  この点につきましてはこれまでも、外務大臣を含めまして外務省から御答弁を申し上げているところでございますが、武力行使との一体化ということは、日本国憲法の憲法上の判断に関する解釈であるということは申し上げているわけでございます。
 国際法との関係でどうかということを申しますと、これも御答弁を申し上げているところでございますけれども、国際法に限ります限りは、武力行使に当たらない行為が他国の武力の行使と一体化をすることによって、自分自身も武力行使をしているというふうに判断をされる法理があるというふうには承知していないわけでございます。
 ごく簡単に、学問的な学会の御意見というものも紹介をさせていただきますと、例えば典型的には、国際法学会という学会が日本にございまして、そこの季刊誌でございますけれども、国際法外交雑誌というものがございます。権威のある雑誌でございますが、この二〇〇六年の中で有力な国際法学者の方が論文を書いておられまして、ごく短くそこから引用をさせていただきますと、「先行する違法行為とそれに対する支援行為は別個の行為とみなされ、支援行為が国際法上違法とされるのは、支援行為の対象となった違法行為の違法性に由来するのではなく、あくまで当該支援行為自体の違法性に基づく評価である以上、「武力行使との一体化」論のように、こうした二つの行為を「一体」とみなして法的な評価を行うことは国際法学での理解とは異なるものといわなければならない。」こういうことでございまして、私どもも基本的にはこのように考えてございます。

【長島委員】

今、非常にいい引用をしていただきました。私も実は、常々そういうふうに思っていまして、日本の議論というのは日本でしか通用しない議論に陥っているんだなということを思いました。
 国際法局長のお立場ですから、慎重な言い回しをされました。国際法に限ってという、国際法の空間が何か特別な空間のようなおっしゃり方をしましたけれども、まさに国際社会の中に日本というものが位置づけられているわけですから、国際法上どう考えられているかということは常に、こういう国際的な問題を考える際には我々も念頭に置いていかなきゃならぬ、このように思っております。
 このように、どうしても国際標準から外れるような政府解釈が今まで積み重ねられてきた、その都度その都度野党からの追及に遭って、何となく、これは法制局からすると不本意な言い方かもしれませんけれども、その場しのぎの法律的な、アクロバティックな解釈を積み重ねてきた、こういう気がするのであります。
 これは大臣に伺うのが適切なのかどうか、こういう政府解釈を、これから一般法の議論をしていく中で、今言ったような、先行している違法行為とそれを支援する行為とは分けて考えるべきなんじゃないかというような国際的な標準的な議論を踏まえて、これまでの政府解釈をこの際、国民に対する説得力もないし、裁判所のこういう判決も出ていることだし、今まで積み重ねた政府解釈を、一般法の議論に合わせてもう一度見直してみるおつもりはないんでしょうか。

【石破国務大臣】

必ずしも、私が政府としてという立場でお答えするのは適切ではないと思っております。  ただ、この一体化論というのは、私も随分勉強してみたつもりですが、日本独自の議論であって、何を評価して一体というのかというんですね。まさしく今、発進準備中の戦闘機のお話がございました。それは多分、時間的に近接しているとか、そういうような論理になるんだと思うんですね。時間的にどうか、距離的にどうか、行為の態様としてどうかみたいな話ですが、これは相当動き得る概念なんだろうと思う。一つのきちんとしたスケールがあって、それで判断するという話じゃないと思う。
 だとすれば、基地を提供しているという行為はどうなんだと。基地がなければ飛行機は飛ばないわけですよね。甲なかりせば乙なかりしみたいな議論を展開するということになると、これはどうなんだ、いえいえ、距離的にも時間的にも行為の態様からしても一体とは認められませんと。そこのところの考え方をどうするんだという議論を、私は、一度行わなければいけないのだと思う。
 私の立場として、一体化論を否定する立場にはございませんが、例えばインド洋における補給は違憲であるという論理が一つあるとしますね。補給は、イラクにおける他国の艦船の行為と一体化だという議論、これがまたどこかにあるわけですよ。だとすれば、それは一体どうなんだと。つまり、それがなければこっちもないという話になりますと、これは論理をぎりぎり突き詰めていきますと、周辺事態法はどうなの、日米安全保障条約はどうなの、そういう話になってくるわけで、私は、どれが正しくてどれが間違っているということを言う立場にはございません。政府としての立場を変えるつもりは全くございませんが、論理というのは常に一定の整合性を持っていかなければいけないものであります。
 その点、委員がおっしゃいますように、一般法の議論をします際に、政府としてもきちんとそれを整理してお示しをしなければならないし、議論の過程において、御党においてもいろいろな議論をなさった上で、先ほど来申し上げておりますように、どこが政権をとったからといって安全保障政策が変わっていいものだとは思いませんので、一般法の議論において、政府、党あるいは議会の間において論理の整合を図るべきではないか、私はそのように考えます。

【長島委員】

ありがとうございます。  まさに、前の安倍政権ではそういう問題意識のもとに、政府の中にいわゆる安保法制懇という懇談会をつくって、四類型をある種ピックアップをして議論を始めたところで福田政権になって、それが今どういう状況になっているのかよくわかりませんが、報告が出されたらそのとき考えるというような趣旨の総理の答弁があったと思います。
 その四類型のうちの二つは、国際平和協力活動に関するものですよね。一つは後方支援、もう一つは武器使用と武力の行使。この二つについてたしか四類型の中で議論をされたと思いますが、現在その議論はどうなっているんでしょうか。そこで出た成果を、先ほど防衛大臣ぎりぎりおっしゃっておられましたけれども、一般法の議論の中で役立てていこうとされているのか。たしか、きょうは内閣官房に来ていただいていると思いますが、答弁いただけますか。

【浅利政府参考人】

お答えいたします。  先生御指摘のとおり、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、いわゆる安保法制懇におきましては、四つの類型を中心に、結論を予断することなくさまざまな観点から議論が行われてきております。
 四つの類型につきましては、若干かいつまんで申し上げますと、一番目が、米国の艦船が公海上で攻撃された場合の我が国自衛隊の艦船の対応。二番目が、我が国同盟国である米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合の自衛隊の対応。それから第三番目が、先生先ほどおっしゃいましたPKOなど国際的な平和活動における武器使用の問題。それから第四が、同じく国際的な平和活動における補給、輸送、医療などといった後方支援の問題ということでございまして、懇談会においては、この四つの類型を中心に、さまざまな観点から議論が行われてきているという状況でございます。
 他方、安保法制懇の今後の段取りというものについては未定でございますけれども、総理は先般、先ほど御指摘のとおり、結果が出てから考えたいというような御趣旨の御答弁をされているという状況でございます。

【長島委員】

安倍政権、功罪半ばしていると思いますけれども、この問題、せっかく議論を始めたのに政権がかわっちゃうと議論が終息してしまうというようなことは、私は許されないんだろうと思うんです。
 これからまさに一般法の議論をしていく、きょうは、実はここから先の議論が私のメーンの質疑だったんですけれども、次回、ぜひ引き続きやりたいと思います。よろしくお願いします。
 やはりこの議論は、日本の政治として一度きっちりやって、乗り越えて、前進させなきゃならない。もちろん、反対意見もたくさんあるんだろうと思いますけれども、一度煮詰めていかなければならない。先ほど国際法局長が非常に苦しい御答弁をされたのにも象徴されるように、克服しなければ、一般法の議論も結局今までの議論の積み重ねになってしまいますので、そこは、私どももアイデアを出しながら、政府と一緒にこの問題を前進させるように努力をしていきたいというふうに思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
 質疑を終わります。ありがとうございました。