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【江渡委員長】
次に、長島昭久君。 【長島委員】民主党の長島昭久です。 両大臣、大変お疲れさまでございます。 まず防衛大臣に、QDR、アメリカの四年に一度の国防政策の見直し、これは一九九七年からずっと続けられていまして、今回で五回目、その報告書が先月の四日に公表されました。読まれましたでしょうか。 【小野寺国務大臣】内容について説明を受け、認識しているということです。 【長島委員】私も実は全文は読んでおりません。エグゼクティブサマリーをさっと流した程度なんですけれども。財政的に厳しい状況がかなり強調されているなということを感じました。 先日、台湾から研究者が何人か来られまして意見交換をしたんですけれども、彼らがおもしろいことを言っていました。このQDRを読んで愕然とした、国防省にとって最大の脅威は中国でも北朝鮮でもなく財政削減だ、そんなくだりがあった、そういうことを言っておりました。財政が厳しくなってくると、この地域に対するアメリカのコミットメントも徐々に減らされていくんじゃないかということを、やはり最も切実に感じているのは台湾であり、我が国なんだろうというふうに思っているんです。そういう意味では、非常に台湾とは利害を共有するところが大であります。 そういう観点も踏まえて、このQDR、これは二年前に出された国防戦略指針をベースに、かなり踏襲しているというふうに評価されていますけれども、その辺も含めて、大臣なりの観点で、このQDRをどう評価しておられるか、少しお話をいただきたいと思います。 【小野寺国務大臣】QDRが出る前に米国の指針というのも既に出ており、私どもとしてまず一番この問題に対して対応が必要だと思いましたのは、やはり、米国の議会を含めた予算の削減、あるいは、どのように今後のリバランスを行うかということだと認識しておりました。大臣就任以来、外務省にお願いしまして、できるだけ、米国の議会の方が訪日する際に防衛省にも来ていただきたいということでお願いし、既に三十人以上の上下院議員と議論をさせていただきました。 私どもとしては、東アジアの安定、これは日本、アメリカ、韓国、台湾のみならず、中国あるいはロシアを含めて今後、経済の成長センターになる場所でありますので、今もそういう場所でありますので、安定のためには米国のプレゼンスを落とすことはよくない、やはり間違ったメッセージを伝えてはいけないということで、繰り返しこのプレゼンスについての要請をさせていただきました。今回のQDRが出た中でも、少なくとも米国についてはアジア太平洋地域のリバランスを継続する、ここを重視するという考え方は変わっていないと思っております。 今後とも、日本を含めた日米の同盟関係の維持のためにも、東アジアの安全保障のためにも、アジア地域でのアメリカのプレゼンスを継続すること、これを政府としても米側にこれからも継続して働きかけていきたいと思っております。 【長島委員】今、プレゼンスについて大臣が注目しておられることはよくわかったので、私も意を強くしたんですけれども、なぜプレゼンスが必要かということを考えると、特に今回のQDRで注目したのは、やはり中国の能力ですね。特に、接近拒否、領域拒否、A2ADと言われていますけれども、この能力が拡大している。 私はこの前、本会議での戦略、大綱、中期に対する質問の際にも、この中国のA2AD、特に日本が乗っかっている第一列島線、小笠原からグアムの第二列島線、こういったラインを念頭に置いて中国のA2AD能力が拡大していくと。そういうことに対して、まずはアメリカが、今はQDRの話ですから、その後で日本との関係の話もさせていただきたいと思いますが、アメリカとして特に意を用いていかなきゃならない。 前回のQDRでは、A2AD能力については中国という名前と明示的には結びつけないで記述されていましたけれども、今回は踏み込んで、中国のA2AD能力ということをはっきり書いてありましたので、そこに対するアメリカの対抗戦略といいますか、エアシーバトルとかと昔から言われておりますけれども、どういった対応策を米国としてQDRににじませているのか、この辺のところをどう受けとめられているか、お考えを伺いたいと思います。 【小野寺国務大臣】
委員が御指摘されたように、今回のQDRにおきましては、中国などの国家によるA2ADアプローチを通じた米国の軍事力への対抗の追求を指摘するという内容になっております。米国の優先投資分野の一つとしてA2AD能力に対抗するための能力の構築を挙げているということを、今回かなり強く打ち出しているということは、委員と共通の認識であります。
【長島委員】プレゼンスというのは、まずは抑止力ですから、何かを起こさせない、そういう意味でプレゼンスは大事。それからもう一つは、この地域で何かが起こったときにアメリカが戦力を投射する、パワープロジェクション能力を発揮する、ある意味でいうと中継基地といいますか、前線基地といいますか、そういった部分が大きいと思うんですね。それをアジア太平洋地域全体をにらみながら担っている、その基盤を提供しているのは紛れもなく日本であります。 もちろん朝鮮半島にも米軍はいますけれども、この朝鮮半島の在韓米軍は専ら北朝鮮向けのものですから半島に張りついているわけでありまして、特に沖縄にいる海兵隊を含めてこの地域全体ににらみをきかせる、あるいは抑止力を構築する、そして何かあったときには来援部隊の基盤を提供する、こういう意味で大変大事な、それをある意味で寸断しようというのがA2ADの考え方だろうと思っています。 その点で、次に、日本が去年の暮れに、戦略の後に策定いたしました防衛計画の大綱、見直しをしましたね。この大綱と、今回発表されたQDRと、私の認識では、QDRが出る前から、あるいは大綱を日本が出す前からずっと日米の間では、特に去年の2プラス2以降、ガイドラインの見直しも含めて、ずっと継続的に防衛省、国防総省の間で議論してきたと思うんです。 そういう中で、小野寺大臣として、今回の日本の大綱で強調している部分と、今まさにおっしゃっていただいたQDRで強調された部分、A2ADに対してアメリカのパワープロジェクションケーパビリティーをどう担保していくか、こういう観点で、日本とアメリカとの協力においてどんな点に意を用いたのか、これも国民の皆さんにわかりやすく説明していただければありがたいと思います。 【小野寺国務大臣】
中国のA2ADについては、アメリカのQDRの中で言及されているということであります。
そしてまた、日米で常日ごろこの地域の安全保障の議論をする中で大切なのは、特定の国ということでの想定というよりも、東アジア全体での安全保障をこれからも担保すること、これが重要な役割だと認識しています。例えば、今回、中国のA2ADに対応するアメリカのさまざまな役割の中で、当然、日米ではこのことも含めて議論をしていることが従前からの状況であります。
そして、大綱の中では、委員にもたびたび御指摘いただいておりますが、例えば警戒監視能力を、これを日本としてもしっかりとした対応をとり、そして日米が連携できる体制をつくることが大切だと思っておりますし、また、いわゆる列島線の議論がありますが、日本としては、今まで比較的手薄でありました南西、先島、こういう地域においてしっかりとした警戒監視の対応をすること、これが重要だと思っております。
その一環として、例えば、与那国に警戒監視の部隊が今後配置される予定にもなっておりますし、特に、南西重視、今回、警戒監視の航空団が南西地域に新編されるという予定にもしておりますので、これは、日米で情報共有をするという中で、役割としては、日本にとって重要な役割になると思っております。
【長島委員】ありがとうございます。 第一列島線をめぐるせめぎ合いというのは、まさに日本の防衛そのものであります。ですから、そこは、今大臣がおっしゃったように、もちろん、ISRも大事、警戒監視能力の向上も大事でありますが、もう一つ、これは防衛大臣だとなかなか踏み込んでおっしゃれないと思いますので私から申し上げますと、やはり日本として、中国のA2AD能力に対する日本なりのA2ADというか、中国がこれ以上圧迫してこないような体制をつくっていく必要があるんだろうと私は認識しています。 そういう中で、QDRを見ると、あえて、日本におけるアメリカの海軍プレゼンスの向上ということが書かれているんですね。ですから、そういうものと、日本の陸海空統合、まさに統合機動防衛力ということが大綱の一番の眼目になっているわけですから、そこを接着していく、そういう意義が非常に大きいんだろうと思っておりますので、その点、私なりに強調させていただきたいと思います。 もう一つ、QDRにおもしろい概念が出ていまして、それが、ニュープレゼンスパラダイム、こういう考え方であります。ニュープレゼンス、プレゼンスというのは、アメリカのプレゼンスという意味でありますが、新しいプレゼンスのパラダイムをつくりたいんだ、こういうことが書かれています。 私はエグゼクティブサマリーをここに持っておりますが、それはどういうことかというと、今言った、海軍の前方展開部隊を追加配備する、艦艇、航空アセット、それから地域配備またはローテーション配備、あるいは陸上部隊の特に即応部隊、こういった組み合わせをつくりながら、言ってみれば共同訓練を重ねていったり、あるいはローテーション配備を工夫していったりということで、新たなプレゼンスのパラダイムというものをつくっていきたいと。 これは、大臣なりにどう受けとめられていますか。 【小野寺国務大臣】
私の理解ということでお話をしますと、例えば、民主党政権下でつくっていただきました二二大綱のときの考え方、動的防衛力、従来の基盤的防衛力からむしろ動的防衛力という形でさまざまな状況に対応できるという考え方、これが、米側も従来の考え方から新しい安全保障の考え方として今そういう方向に向かっている、一つの流れだと思っています。
今回、統合機動防衛力としましたのは、逆にその動的防衛力をさらに今の安全保障環境を踏まえて質、量ともに充実させていきたい、あるいは統合運用の中で必要な整備ということで統合機動防衛力ということをさせていただきましたが、基本はやはり動的防衛力の考え方、これが二二であります。
そして、米側も今同じように、例えば、そこに一つの部隊がいることだけではなくて、それがある面で、この東アジアの中で、特に今後は例えばグアムもありますし、ハワイもありますし、オーストラリアもあります、いろいろなところに移動する中で一定の抑止力を担保する、そういう方向に動いているんだと思っております。
【長島委員】私も全く同感です。 これは、むしろ日本の方が先に、ダイナミックデタランスというふうに私たちは呼んでいましたけれども、動的防衛力、それをさらに統合機動防衛力という形で進化していただきました。日本側がコンセプトを出して、そしてそれにアメリカ側が後からプレゼンスという形で表現しているという意味で、これまでのように、アメリカ側が何かを提案して日本側がそれに飛びつく、あるいは値切る、そういう関係をかなり脱しつつあるなということを非常に感じていますし、今大臣がおっしゃっていただいた認識と全く私も重なりますので、さらに意を強くしたわけであります。 そこで、特に、今まさに大臣がおっしゃった、平時の、プレゼンスというものをただ固定的に置いておくだけじゃなくて、いろいろな、オーストラリアなども巻き込んだ形で地域に動的なプレゼンスというものを構築していく、これはまさに私たちが大綱の中で盛り込んだ内容にぴったり符合するわけです。 特に必要なこと、日本としてこれから努力しなきゃいけないことは何かといったら、それはやはり、平時から危機、有事に至る、いつもシームレスというふうに言いますけれども、特にグレーゾーンをめぐって、最初の段階からアメリカとある程度協議しながら、この地域のまさに危機がエスカレートしないようにまず抑え込む、そして仮にエスカレートしていった場合には迅速にそれに対処していくという、まさに、日本の中でもシームレスですけれども、あるいは日本の省庁間でもシームレスですけれども、日米の間でもシームレスな対応ができるような体制を早くつくっておくということが、この地域の安定を乱そうとしている勢力がもし仮にあるとすれば、そういう勢力に対する効果的な抑止になるし、乱そうという彼らの行動を抑制させる力になるんだろうと思っています。 次に、ガイドラインの話を伺いたい。 コンセプトは大臣が今おっしゃったとおりでありまして、日本が出したコンセプトにアメリカが乗っかってきて、コンセプトワークはかなりビューティフルというか、きれいになっていますけれども、それを実態的な、具体的な計画にまで落とし込んでいくのは、まさに年末で期限を区切られている日米防衛協力のガイドライン改定の核心だと私は思っています。 大臣に伺いたいんですけれども、進捗状況はどうなっているか。余り詳しいことは言えないというようなことをずっと答弁で聞いてきましたけれども、これはもともと、手前みそで恐縮ですが、森本大臣とパネッタ国防長官との間で、やろうと。これも実は日本側から提案させていただいて、それにパネッタが合意して、その後、私が副大臣のときにカーター副長官との間で、ぜひやろうということで実務的なレベルで作業が始まり、それを去年の2プラス2でオーソライズしていただいた、こういうことなんですけれども、進捗状況はどういうふうになっているか、具体的なお話をいただければありがたいと思います。 【小野寺国務大臣】
委員がおっしゃったとおり、一昨年の森本大臣、長島副大臣のときにガイドライン改正についての問題提起が行われ、その後、協議を重ねまして、昨年の2プラス2で見直しが合意されました。その過程におきましては、江渡委員長が当時副大臣としてカーター副長官とも議論していただきました。それを前提として、今回、ガイドラインの見直しの議論が進んでいるというところであります。
現在のところでありますが、まず、昨年の2プラス2での本年末までの作業の完了ということは合意でありますが、このことを踏まえて、今、事務レベルで継続的にさまざまな議論を継続させていただいているというところであります。
【長島委員】その2プラス2の文書、私は実はこのタイトルが非常に気に入っていまして、「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」と。いよいよ日米同盟はここまで深化してきたかという思いを強くしているんです。 その中で、肝は日本の役割の拡大。この文書を読むと、「日米同盟の枠組みにおける日本の役割を拡大するため、米国との緊密な調整を継続する。日本はまた、国家安全保障会議の設置及び国家安全保障戦略の策定の準備を進めている。」もうこれは出ました。「さらに日本は、集団的自衛権の行使に関する事項を含む自国の安全保障の法的基盤の再検討、防衛予算の増額、防衛計画の大綱の見直し、自国の主権の下にある領域を防衛する能力の強化及び東南アジア諸国に対する能力構築のための取組を含む地域への貢献の拡大」をと。最後のところはさっき遠山さんが指摘された部分でありますけれども、こういうことをバックグラウンドの上に日本の役割を拡大していく。 具体的にどういう役割を拡大しようとしているんでしょうか。 【小野寺国務大臣】これは今回の大綱の中にも位置づけさせていただきましたが、まず我が国としての基本は、我が国の領土、領海、領空を我が国としてしっかり守り抜く、そういう体制の整備が必要だ。その上で、どうしても日米の同盟関係の中での役割分担がございます。その役割分担を今後さらに再確認する中で、この地域の安全保障環境をさらに一層充実させていきたい、そういう方向であります。。 【長島委員】今の御答弁ですと、今までのと大して変わらないんですよ。 日本の役割を拡大するということは、アメリカと日本とのまさにRMC、役割分担があった、これまでの役割分担を、このタイトルでいけば、より大きな責任の共有をしていきたいと。これは、アメリカは別に今まで制約がなかったんですが、日本の方が実はシェアとしては非常に低かった、それを拡大していこうというのがまさにこの2プラス2ににじみ出ている意欲、意図だと私は思うんですけれども、もう少し踏み込んで御説明いただけませんか。 どういう日本の役割を拡大しようとしているのか。日米同盟協力の中で今までやってこなかった、しかし、これからどういう分野でもう少し日本は役割を担おうとしているのか。七項目ぐらいの具体的な目標が定められていると思います。そういうことも含めて、ちょっと説明していただければと思います。 【小野寺国務大臣】
まず、十六年前のガイドラインのときの安全保障環境と、現時点で私どもが直面している安全保障環境というのはかなり大きな違いがあるという中で、当然、日米の役割分担というのは早急に見直す必要がある、そういう問題意識から、これは委員が副大臣のときに森本大臣とともに提唱されたことだと思っております。
特に、安全保障の問題の中で、日米の関係というのは、二国間だけではなくて、よりグローバルな役割が日米の中に期待されていると思っております。例えば、テロ対策、海賊対策、平和維持、能力構築、人道支援、災害救助、あるいは装備、技術の協力といった包含するような大きな意味の拡大が日米の役割として今後期待される、その中に日本として積極的に今後コミットしていくということがまず主体だと思っております。
【長島委員】では、私から申し上げましょう。 私たちがガイドラインを視野に入れたときに、自分たちの政権でできるかどうかは別にして、やはり集団的自衛権の問題は念頭にあったんですよ。 つまり、今まで日本の行動が制約されていた、しかし、日本の安全保障にとって欠くべからざる部分というのは当然あるだろう、それは集団的自衛権の行使、今まさに限定的な行使ということが議論になっています。私は、非常に穏当な結論に近づきつつあるなというふうに見ているんですけれども、そういったものを視野に、だって、まさにこの2プラス2の文書に明記されているわけですよ、集団的自衛権のことを議論していると。ですから、そういうことを念頭に置いて、そこで日本の役割が拡大していく、そういう方向感が日米の間で共有されていると思うんですが、一言どうぞ。 【小野寺国務大臣】
日本の国内で、今委員が御指摘されているような議論というのは、与野党を問わず議論がなされていると承知しております。
そして、政府としては、基本的に、安保法制懇の中の議論が今進みつつあるということが前提で、今回、2プラス2の中でも、国内での議論、そして特に安保法制懇での議論、それが行われているということが事実としてここに記載されているものと私どもは承知しております。
いずれにしても、安保法制懇の最終的な方向が出た中で、政府としてそれをどのような形で検討していくかということは、政府全体で検討する課題だと思っております。
【長島委員】確かに、お答えしにくい課題なんだろうと思いますけれども、米側の人と話をすると、やはりここが肝だと。 ここが、つまり、限定的かどうかは別にして、集団的自衛権をめぐる日本のスタンスが決まらないとガイドラインの実質的な議論が、だって、そうでしょう、今まで日本ができることは目いっぱいやってきたんですから。さらに日本が役割を拡大するとしたら、この分野しかないんですよ。この分野における日本のスタンスがきちっと確立して初めて、実質的な、例えば周辺事態に対してどうするか、あるいはさっきお話が出ていたシーレーンの安全確保について日米がどう協力できるかということが決まってきて、そこで初めて共同作戦計画ができて、有事に対応できる、こういう体制ができるわけでしょう。 だとすれば、私は、与党内で今いろいろな議論がなされていることは知っていますけれども、防衛大臣として、この議論がきちっと着地しないとガイドラインの実質的な議論ができないなということで、大臣としてじりじりされているんだろうと思っているんですよ。そういう意味で、ことしの年末でガイドラインの策定の期限を切っておられますけれども、この集団的自衛権の議論が延びれば延びるほど、実質的な議論をする期間がどんどん短くなっていくというこの状況について、大臣、どうお考えでしょうか。 【小野寺国務大臣】
ガイドラインの検討を行うに当たっては、現時点で私どもとして政府の方針というのはまだ確定しておりませんので、今、集団的自衛権の議論についての言及が委員からございましたが、現時点でのガイドラインの中の議論というのは、あくまでも、例えば、日米同盟のグローバルな性質を反映させるため、テロ対策、海賊対策、能力構築等の分野を包含するような協力の範囲の拡大や、あるいは宇宙及びサイバー空間といった新たな領域での課題への対応の確保、こういうことで相互の能力がどう役割分担されるか、こういうこともガイドラインの議論の中では大変重要な議論の一つだと私は思っております。
いずれにしても、今後、もし一定の政府の方針が出るのであれば、それを踏まえたガイドラインへの反映というのも当然なされるものだと思っております。
【長島委員】ヘーゲル国防長官も今月いらっしゃるということでありますから、ぜひそういう場では突っ込んだ議論をしていただきたい。こういう場ではなかなか大臣としては、官邸から箝口令も出ているのかもしれませんが、おっしゃりにくいのかもしれません。これはこれで、ぜひそこは念頭に置きながら、日本のしっかりとした役割を果たしていける、そういう日米同盟深化に臨んでいただきたいと思っています。 残り十分ぐらいですけれども、集団的自衛権の問題に行きたいと思います。 きょうの日経新聞にも「他国では原則行使せず」、産経新聞も「集団的自衛権 行使を限定」、せんだっても朝日新聞に「集団的自衛権行使を限定 政府素案 他国領土・領海派遣せず」、こういった臆測記事が躍っているわけでありますが、もし仮にこういう方向で話がまとまるのであれば、私は非常に穏当だと思っているんですよ。こういう内容であれば、我が民主党も十分正面から受けとめられる。良識派の中川先生もきょうはおみえでありますが、私は率直にそう思っています。ですから、そういう意味でいうと、ぜひこの議論を深めていただきたいんですね。 それで、最近話題の砂川事件最高裁大法廷判決、昭和三十四年十二月十六日。今、公明党の山口代表と高村自民党副総裁との間で若干の論争が惹起されているようでありますが、私は、この砂川判決、非常に練られた、今から半世紀近く前にこんな見事な自衛権に対する解釈があったのかと改めて感嘆しているわけです。一番最後のパラグラフの二行目ですけれども、「わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」。内閣法制局の解釈なんかよりよっぽどいいですよ、こっちの解釈の方が。 個別的とか、集団的とか、わけのわからない区別はしないし、「国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」、物すごく主体的な、見事な判決だと私は思うんですが、外務大臣、御感想を一言。 【岸田国務大臣】
まず、自衛権につきましては、国連憲章第五十一条におきまして、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、個別的または集団的自衛の固有の権利を害するものではないと規定されている中にありまして、昭和三十四年の砂川事件判決におきましては、我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではないと、こうした固有の自衛権という表現を使っていると承知しております。その上で、御指摘のような判決の内容になっております。
この固有の自衛権という表現につきまして、またこの司法府の判断につきまして、行政府の立場からそんたくすることは控えなければならないと存じますが、こうした判決等があり、それをもとに今、与党内において議論が行われているということにつきましては承知しております。
【長島委員】ちょっと、砂川判決に対するコメントはいただけなかったんですけれども。 今、仄聞する与党内の議論、私たちももう議論しています、維新の会もきょう何か考え方が出ていましたけれども、大分平仄が合っているような気がするんですね。ポイントは、一つは、限定的な集団的自衛権の行使にとどまるというところです。肝はそこだと思っているんです。 念頭に置くオペレーションとしては、一つは周辺事態、これはまさに我が国の存立に直結するわけですね。安全保障に直結する。プラス、先ほど遠山議員からソフトな面の紹介がありましたけれども、もう一つ、ハードな部分のシーレーンの安全確保。先ほど武藤さんも答弁されていましたけれども、通商国家であり海洋国家の日本においてこのシーレーンの安全確保というのはまさに生命線でありますから、ここにおいて日本は、今までのようにアメリカにただ乗りというか、アメリカに全面的に依存するという形ではなくて、もう少し日本の役割というものを果たすべきだと私は個人的に思っています。 さっき、前方プレゼンスの議論を防衛大臣とさせていただきましたけれども、財政に非常に厳しい制約が課されてくる前方プレゼンス。兵力の六割をアジアにリバランスすると口では言っていますけれども、これはなかなか、このプレゼンスを維持し続けるということはいかにアメリカでも大変だと思うんですね。そういうプレゼンスの持続可能性というものを担保するためにも、前方に出てきているアメリカ軍を場合によっては守る、そういう日本の役割というのは私は大事だと思っています。 その際に、やはり国民の皆さんは、おいおい、周辺を越えて公海上をどんどん行くのか、地球の裏側まで行くのか、こういう議論になりかねないわけであります。そういう危惧が当然のことながらあるのは私も承知しております。 それに対する歯どめとして今言われているのは、他国の領土、領海には、領域国の承認というか、要請みたいなものがない限り派遣しない、あるいは武力行使しない。こういう原則をここで確認することは極めて穏当な方向性だと私は思うんですが、この点について、外務大臣、いかがですか。 【岸田国務大臣】御指摘のように、ただいま与野党において限定的な集団的自衛権の行使という議論が行われているということ、このことにつきましては私も承知しております。そして、現在、安保法制懇、有識者会議におきましても、憲法第九条による制約についてどう考えるかも含めてこの議論が行われております。 まずはこの議論の結論を待ちたいとは思いますが、懇談会の議論の中でも、例えば、個別的自衛権について憲法第九条による制約がかかっているならば、当然、集団的自衛権についてもかかっているのではないか、こういった議論が行われているということ、これは既に公にされています。 こうした議論が行われた上で、安保法制懇の最終報告書が出されます。それを待って、政府としましては、与党ともしっかり議論した上で政府の方針、結論を出したいと考えております。 こうした議論の行方につきましては注視していきたいと考えています。 【長島委員】防衛大臣、いかがですか。 【小野寺国務大臣】
基本的には、今、外務大臣から答弁されたとおりだと思っています。
【長島委員】わかりました。 最後に、ポイントです。こういう話をすると、我が党では、解釈改憲、憲法解釈を変えるのか、けしからぬ、こういう批判も出るんですね。そこで、私はきょう、五十年前の林内閣法制局長官と岸総理の答弁を持ってまいりました。何が言いたいかというと、政府解釈をよく読むと、今回、歯どめとして議論されていることを踏まえて考えると、これは実は、これまで積み上がっている憲法解釈の延長線上の議論にうまくなっているんですね。ちょっと見てください。 まず、林法制局長官。前段のところはちょっと省きますが、「密接な関係のある他の外国が武力攻撃を受けた場合に、それを守るために、たとえば」、これがポイントですね、「外国へまで行ってそれを防衛する、こういうことがいわゆる集団的自衛権の内容として特に強く理解されておる。この点は日本の憲法では、そういうふうに外国まで出て行って外国を守るということは、日本の憲法ではやはり認められていないのじゃないか、かように考えるわけでございます。」と。 岸総理はこれを受けて、「いわゆる集団的自衛権というものの本体」、佐瀬昌盛さんは中核概念と言っていますけれども、「集団的自衛権というものの本体として考えられておる締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその国を防衛するという意味における私は集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は持っていない、かように考えております。」と。 これを読む限りでは、集団的自衛権の中核概念、最も本質的な概念というのは、外国まで出ていって、つまり同盟国といえども他国の領土、領空、領海まで入り込んでいって、そこで攻撃を排除する、そういう権利というふうに意識されているわけです。 したがって、集団的自衛権を今回限定的に認めるとしても、他国の領土、領空、領海、ここに入り込んでいってこれを行使することをある意味除けば、この昭和三十五年で言われているところの裏を読むと、他国の領土、領海、領空まで出ていって行使するという意味での集団的自衛権は憲法上持っていない、こう言っているわけですよ。ということは、そうでない、そこにまで至らないレベルでの集団的自衛権の行使については否定していないんですよ、明らかにこの解釈は。 そういう限定つきの集団的自衛権、例えば公海上における行使であるとか、周辺事態における行使であるとか、これが我が国の安全保障に直結するということであれば十分考え得ると私は思うんですが、最後に、外務大臣から、今の私の解釈、検討の方向性についてコメントをいただきたいと思います。 【岸田国務大臣】
委員のただいまの御意見を承りまして、大変深い見識に裏づけられた、傾聴に値する議論だとは承りました。
政府の立場としては、先ほど申し上げましたように、安保法制懇の最終報告書を待って、その上で、政府として、与党ともしっかり調整した上で政府の方針を確定するということであります。そうした委員のただいまの御議論等も、その議論の中で参考にされるものではないのかなと想像はいたします。ぜひ、充実した議論に資するよう、政府としてもしっかり対応していきたいと考えております。
【長島委員】これは閣議決定で済む話じゃないので、最終的には立法府に戻ってくる課題でありますので、私は、こういった歯どめも含めて、安保基本法のような形で、立法の形で与野党が一緒になってこの集団的自衛権の問題を考えていく、そういう場を後半の国会でぜひつくっていただきたい、そのことをお願い申し上げて、質疑を終えたいと思います。 ありがとうございました。 |
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