長島フォーラム21

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国会質疑

2014年5月8日

【会議録】憲法審査会 参考人質疑

【保利会長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

参考人の皆さん、きょうは早朝から、大変お忙しい中、ありがとうございます。  大変明快な最初のプレゼンテーションをしていただきました。改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。  きょうは、いよいよ午後には総括的な質疑、こういうことでございますので、もう一度、問題点を再整理するという意味で、三つの宿題を中心に、参考人の先生方に伺いたいと思います。  まず、十八歳の選挙権実現等のための法整備について、田中参考人、南部参考人。それから、公務員の政治的行為に係る法整備について、松繁参考人、水地参考人。そして三つ目、国民投票の対象拡大についての検討、これはまた南部参考人それから水地参考人にお伺いしたいと思います。  まず、最初の十八歳選挙権実現等のための法整備についてでありますが、田中参考人の方から、国民投票権それから選挙権、いずれも十八歳に引き下げることの積極的な意義について非常に簡潔に御説明をいただきました。既にその年齢の三割近くが自活している、それから若年層の政治参加を促す意味がある、それから国際スタンダードはもう既に確立している、この三点だというふうに認識しております。  南部参考人、この十八歳に引き下げるべきだという積極的な意義について、改めて御説明いただければありがたいと思います。

【南部参考人】

十八歳選挙権、投票権の流れは、もう理由だけで七つぐらいありますので、一つ大きな論点といいましょうか、この憲法審査会にかかわることだけ申し上げておきますと、中山太郎先生が特別委員会の委員長だったとき、それから憲法調査会の会長だったときも含めてですけれども、海外調査に行かれて、各国の国民投票制度を、いろいろと回られて調査をされました。それらの国々のほとんどが十八歳選挙権で、国民投票年齢についても同じ年齢で参政権を統一している国ばかりである。  そこで、日本にこの法制度を導入する場合に、既存の法律は、公選法、民法は二十であるけれども、やはり世界標準をこの際取り入れるべきではないか、そういうコンセンサスが今から約七年前、八年前に既に醸成されたんだというふうに理解しております。  その他は、いろいろな、日本の社会で起こっている少年の凶悪な事件による少年法の引き下げでありますとか、各地の住民投票条例で、十八歳、中には十六歳とか非常に低年齢の有権者を認めた例がありますので、そういったいろいろな議論の潮流があって今回の議論につながってきたのかなと理解しております。

【長島委員】

ありがとうございました。  そして、お二人とも、民法上それから刑法上の成年年齢の十八歳への引き下げについても肯定的、積極的というふうに認識しておりますが、田中参考人にお伺いしたいと思います。  よくある批判、批判というか懸念、消費者として契約主体となり得るのかという問題、あるいは、物すごく少年犯罪もふえているんですけれども、まだ更生可能性のある少年に対する厳罰化というのが適当であるのかどうか、こういった一般的な批判や懸念に対して、先生の御意見をお伺いしたいと思います。

【田中参考人】

民法につきましては、特に、消費者として契約の主体になれるということが懸念されている。現に、現在でも二十歳の段階での消費者被害というもののパーセンテージが高いというようなことがあるわけでございますが、逆に言えば、二十で被害に遭いますと、例えば親に相談するとか友達に相談するということになるんですが、大学生だった場合、なかなか、本人から申し立てがない限り、大学ではケアができないということがあるわけですね。  それに対しまして、むしろ十八歳ですと高校三年生のレベルですので、被害に遭わない方がいいわけですけれども、消費者教育もしやすいですし、また、何かあったとしても学校に相談ができるということで指導もしやすいというようなメリットもございます。  そういう意味で、九割方が高校三年まで在学しているという、世界的に見てもこれは非常に希有な国でございまして、民法も選挙権も含めまして高校で指導できるというのはむしろメリットというふうに考えた方がいいのではないかと思います。  少年法につきましては、これはいろいろな御議論もございまして、建前的に言えば、もちろん権利と義務との関係がございますので、バランスをとりながら十八歳にそろえていくという、長い意味では方向性がございますが、十八、十九歳の更生可能性等、これはやはり専門家の方も交えて議論していただいて、しかるべき措置をとっていただくのがよろしいのではないかと思います。

【長島委員】

ありがとうございました。 十八歳に投票権を引き下げる、選挙権を引き下げる、こういうことになりますと、当然のことながら、教育的な側面からの施策というのは大変重要になってくると思っています。  先ほど田中参考人の方から、これまでのような公民教育ではだめだ、知識偏重型ではだめだ、もっと体験型、参加型でいこう、こういうお話もありましたし、無力感から効力感というのは非常に端的な表現だったというふうに思っていますが、具体的なカリキュラム、こういうカリキュラムが必要だというアイデアがもしあれば、田中参考人、それから南部参考人にそれぞれ伺いたいと思います。

【田中参考人】

ありがとうございます。  現在、子供たちが抱えている問題の中の一つに、やはり社会との接点が非常に少ないということがございまして、昔のように、地域社会とか大人社会との接点があった時代、そういう時代とは違ってきているということがございます。  そういう意味で、教育の現場でも、特に小学校、中学校を中心に、地域に出かけていって地域の人たちから学ぶとか地域の文化を尊重するとかいうような、特に総合学習なども含めて進んできているわけでございます。あるいは、社会との接点のための、よのなか科というような科目をつくったり、市民科というような科目をつくっている学校もあるわけですね。  やはり、これは高校が一番、そういう意味ではなかなか社会との接点が持ちにくい教育課程であるわけですけれども、小中同様、やはり高校におきましても、地域社会、自分たちの生活に、高校生の生活に、あるいは将来の生活にかかわるような事柄に関して積極的に考えていくようなカリキュラムをつくっていく。  その一つとして、先ほどもちょっと申し上げましたが、例えばアクションリサーチというような、地域に出かけていって課題を発見する、その課題を解決するにはどうしたらいいか。ただ発見するだけだと調べ学習で終わってしまうわけですけれども、調べ学習ではなくて、解決するために、市役所に行ってみるとか、議員さんに声をかけてみるとか、あるいはNPOの人に聞いてみる、住民に聞いてみる、そういう大人社会とのかかわりの中で解決策を真剣に考えて提案するような、そういう教育もなされているわけでございまして、私どもも、ESDとか開発教育の中で市民教育のカリキュラムを現在提案しつつあるところでございます。

【南部参考人】

 カリキュラムという点では、今、田中先生がおっしゃったことに尽きるんだというふうに思います。  それから、実践的な政治教育という点につきまして申し上げますと、例えば、選挙の当日の開票立会人とか投票立会人とか、そういう作業をぜひ若い人たちの目に触れるようにしたらどうかなということを私は常々思ってまいりました。  例えば、開票所におきましては、投票期日投票、期日前投票、不在者投票、在外投票、全ての投票用紙を一堂に集めて、開票管理者と立会人が全ての投票用紙をチェックするという作業をやります。そこにはいろいろな他事記載があったり無効票があるんですけれども、その有効、無効のチェックをしたりとか、まさに民主政治の一つの完結する部分がそこにはありますので、ぜひそうした現場を若い人たちの感受性に触れる場にしたいと私は常々考えてまいりました。ぜひ先生方もそういった御工夫をいただければと思っております。

【長島委員】

次に、公務員の政治的行為に係る法整備について、松繁参考人と水地参考人にお伺いしたいと思います。  本件の核心というのは、公務員の政治的中立性の確保と、公務員であれ国民投票運動への参加の自由、この二つをどうバランスするかということなんだと思うんです。  四月二十二日の本審査会での参考人の意見の中に次のような意見がありました。お二人に感想も含めて御所見を伺いたいと思うんです。  公務員や教員にも当然、意見表明の自由は認められなければなりませんが、全体の奉仕者としての立場や公務員、教員としての地位の特殊性などに鑑み、国民投票運動のもたらす弊害を防止するため、その組織的、党派的運動に制約が加えられることは、最高裁判決に照らしても当然であると思われます。猿払事件最高裁判決を引用しておりました。  さらに、もし、選挙運動以上に高度な政治性を有する憲法改正のための国民投票運動に、政治的、教育的に中立であるべき公務員や教員が自由かつ組織的に参加することになれば、行政や教育の中立性は侵害され、行政や教育に対する国民の信頼は著しく失墜することになるであろう。  こういう意見を表明された方がおられたんですが、御感想、御所見を承りたいと思います。  まず、松繁参考人。

【松繁参考人】

 お答えします。  最初のところで述べたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、私もその四月二十二日の憲法審査会の様子は拝聴しておりました。やはりここを、政治的なということと中立性の問題と、国民投票の問題をきちんと切り分けて考えていけば何ら問題が起こるものではないというふうに思っております。  最初に申しましたように、私たちはきちんと憲法を宣誓して仕事をしているわけですので、それから逸脱したようなことはやるべきでないし、地位を利用して何らかをするということになれば、それは、述べてきましたように、別な法で対処されるべきということですので、既に弊害が起こっているということも申しましたけれども、ここに何か規制を加えることによって、何となく全体として自粛しなければならないんじゃないかというムードをつくり出すことの方に危機感を持っております。  以上です。

【水地参考人】

 今の松繁参考人の意見とかなり重複するところでございますが、私どもも、先ほど述べましたとおり、中立性とそれから憲法についての意見表明の重要性、そのバランスをどうとるかというところであると思います。  先ほどの二十二日の御紹介の中でも、選挙等よりさらに重要であるのだからさらに弊害が大きいという形でおっしゃったと思うんですけれども、その点が意見を異にいたしまして、選挙というようなまさに政治的なことではなく、国の将来をどう決めるかという、憲法という最も重要な点について意見表明の機会というのを制限する、さらに、罰則等によって制限するのではないとしても、萎縮させるということの、その弊害の方がはるかに大きいというふうに考えますので、可能な限り意見表明の自由は尊重されるべきでありますし、松繁参考人もおっしゃいましたとおり、それが認められないところに踏み込むようなものであれば、それは現在も既にある法制によってすぐ制限されるわけですから、それ以上の規制を置く必要はないというふうに考えます。

【長島委員】

 ありがとうございました。  それでは、最後の論点、もう時間がありませんけれども、国民投票の対象拡大について伺いたいと思います。  今回の改正案では、附則の十二条が修正されまして、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性について検討を加え、必要な措置を講ずると。その前は、必要性の有無も検討するという文言だったんですが、それは削除されました。すなわち、予備的な国民投票制度に一歩前進をしているわけです。  南部参考人と水地参考人に伺いたいのですが、まず、この予備的国民投票制度創設についての御所見。それから、四月三日の八会派で合意された確認書では、これを超えて、さらに国政の重要課題についての一般的な国民投票制度のあり方についても検討すると。先ほど南部参考人は新たな知恵が必要だ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、この点についてお二人の御所見を承りたいと思います。

【南部参考人】

 制定法附則十二条は、いわゆる憲法改正問題予備的国民投票と言われるもので、憲法改正の本番の国民投票に先立って、ある意味、国民の、有権者として憲法改正についてどういう意向を持っているか、どういう意見を持っているか、あらかじめその多数意見を把握する中で、その後の本番の九十六条一項前段の手続に結びつけていく、そういうスキームだと思います。  確認書の五で言われているのは、いわゆる一般的な国民投票、これは国政問題国民投票で、一応その両者は区別して議論されるべきであるというふうに思っております。今後、定期的に議論されるということでありますので、ちょっと簡単に二点だけ申し上げます。  まず、内閣による発議は外した方がよろしいかと思います。各会派の先生方が一致して議員立法でもって発議をする。内閣がやるということになりますと、いわゆる時の独裁者、為政者が信任投票、人気投票のためにやるんじゃないか。そういう議論に先生方が引きずられてしまいますので、そういうことはあえて外した方がよろしいかなというふうに思います。  それから、二点目の、先ほど長島さんがおっしゃられた政治的な知恵ということなんですけれども、ただ単に、投票案件を決めて、投票期日を決めて、発議しておしまいではなくて、その審査するプロセスの中で、今回の法律案のように、政調の正副会長クラスの先生方がずらっと提案者に並んでいただいて、例えば私が質疑者ならば、この案件が多数だったら我が党はこうします、他方、こちらの案件が多数派だったら我が党はこうしますということを、一つ一つ、質疑の中で私はそれを尋ねていって、結果、その問題がどうなるか、政治の中でどういうふうに、間接民主制のプロセスの中でビルトインされていくかという、一つのマニフェストづくりになるのではないかというふうに思っています。  その国民投票の結果、約束を破った与党は当然その次に、国民投票が終わった後の、次の総選挙でまた政権交代が起きるかもしれない、そういう意味で結果が問われるということになるかもしれませんし、そういう仕組みを入れていくべきではないかなということを考えております。

【水地参考人】

 基本的に、国民自身が国の方向性に対して意見を述べる機会を与えられるということ自体はもちろん否定すべきことではないと考えますけれども、間接民主制との関係で、議員の方々がそこの意思決定をするということを国民から負託されているわけですので、そのこととの関係というのはやはり慎重に考えるべきであるというふうに思います。  そういう意味で、ストレートに法的効果を持つものではありませんけれども、国民投票を行った場合には、予備的なものであったとしても、事実上の法的な拘束力を持つということは否定できないわけでありまして、そういうことから考えますと、どのような事項についてどういった手続を踏んで国民投票にかけるかということは慎重に検討されなければいけないと思います。  特に、今回も意見書の方で述べております、本物の国民投票と同じように、それぞれのテーマについて十分な情報の提供がされて、国民がその問題について深く考えた上で、それは、何となく、本番の国民投票とは違うということでアンケート的な感じに意見を述べてしまい、それに国会が、各党といいましょうか、制約されるということがあってはいけないと思いますので、そういった国民投票を、ここに言っているようなものをとる場合にも、十分な情報提供ですとかそういったことが必要であるというふうに考えます。

【長島委員 】

 質問を終わります。ありがとうございました。