長島フォーラム21

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国会質疑

2015年3月25日

【会議録】外務委員会

【土屋委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

民主党の長島昭久です。 外務大臣は就任から二年を超えて、聞くところによりますと、現職の議員の外務大臣では在任期間最長ということだそうでありまして、宏池会の大先輩の宮沢外務大臣の在任期間を超えた。ただ、大平さんは四年やっておりますので、しばらく頑張っていただきたいというふうに思います。
それでは、質問に移りたいというふうに思います。 一昨日ですか、沖縄で新しい翁長知事が大変重大な決断をされたようでありますが、非常に気がかりであります。 報道によれば、沖縄防衛局に対して、今やっているボーリング調査、去年の八月からやっているボーリング調査の停止を指示した、従わない場合には、仲井真前知事が承認をした埋め立て、これを不承認にするということも視野に入れている、その前段階として、岩礁破砕許可を取り消す意向を表明した、こういうことでありますが、まず、防衛省から現状の報告をいただきたいと思います。

【山本政府参考人】

お答えいたします。 一昨日、二十三日、沖縄防衛局は、沖縄県知事から、代替施設建設事業に係る岩礁破砕等の許可に関し、同県による調査が終了し、改めて指示するまでの間、海底面等の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示する旨の文書を受領いたしました。 これを受けまして、昨日、二十四日、沖縄防衛局職員が沖縄県庁を訪問し、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置が許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破壊許可手続の対象とされていないこと、一部区域におけるアンカーの設置を理由に全ての施行区域における全ての現状変更行為の停止を求めることは不当であること等の説明をいたしました。
防衛省といたしましては、これらの理由から、一昨日、二十三日の沖縄県知事の指示は無効なものであり、現在行っている作業を中断する理由にはならないとの考えを同県に説明させていただき、その旨を記載した文書を手交いたしました。 また、本件指示自体が無効なものであることを明らかにするため、昨日、二十四日、沖縄防衛局長から農林水産大臣に対しまして、審査請求書及び執行停止申し立て書を提出したところであり、今後、法令にのっとって適切に審査されると認識をしております。 これらのことを含めまして、防衛省といたしましては、必要な措置を適宜適切に講じ、粛々と作業を進めてまいりたいと考えております。

【長島委員】

 一昨年の十二月に、仲井真知事が埋め立ての申請に対する承認を与えましたね。そして、昨年の八月に岩礁破砕を許可した、こういう経緯だと思いますが、その際に、破砕許可のときに九項目の条件がついており、場合によって取り消す可能性がそこに記されている、こういう報道があるんですが、その点はいかがですか。

【山本政府参考人】

お答えいたします。 先生御指摘のとおり、破砕許可に当たっては幾つかの条件がつけられたところでございます。 一方、本件破砕許可につきましては、水産資源保護法という法令の趣旨にのっとった形で運用されるべきものというふうに考えております。 その観点から、先ほど申しましたように、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらないこと、また、これまでの沖縄県と沖縄防衛局との調整の経緯に反する内容の御指示をいただいているということから、今回の沖縄県知事からの御指示は無効なものであるというふうに判断しているところでございます。

【長島委員】

 無効なものであるという政府の主張はわかるんですけれども、この岩礁破砕の許可の取り消しをひっくり返すことは事実上できるんでしょうか。 沖縄県は何と言っているかというと、岩礁破砕許可を取り消せば政府側はボーリング調査を行うことができない、そういうふうに主張しているんですが、これをひっくり返すことはできるんでしょうか。

【山本政府参考人】

 お答えいたします。 防衛省といたしまして、今申し上げましたように、本件沖縄県知事の御指示は無効であるというふうに判断をいたしましたことから、昨日、農林水産大臣に対しまして、先日の沖縄県知事の指示は無効であり、取り消しを求める内容の審査請求、そして、審査請求の裁決までの間、沖縄県知事の指示の効力を停止するよう求める執行停止の申し立てをしたところでございます。
その理由といたしましては、繰り返しになって恐縮でございますけれども、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破壊に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置について許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破壊許可手続の対象とされていないこと等を挙げさせていただいているところでございます。 今後、農林水産大臣におかれまして適切に審査が行われることを防衛省としては期待しているところでございます。

【長島委員】

 期待はわかるんですけれども、農水大臣がその処分の取り消しをするまでの間、防衛省として、ボーリング作業は続行することになるんでしょうか。

【山本政府参考人】

 お答え申し上げます。 沖縄県漁業調整規則におきましては、海上ボーリング調査は、沖縄県知事と協議をすることを前提に、原則として、岩礁破砕許可を要しない行為として整理をされております。 このため、沖縄防衛局は、沖縄県と協議の上、海上ボーリング調査につきまして、岩礁破砕の許可は不要である旨の回答を受け、その後、工期等を変更するに当たっても、沖縄県から協議不要との回答を得て調査を行っているところでございます。 これらのことを踏まえますれば、海上ボーリング調査は岩礁破砕許可に基づく行為ではないことから、引き続き粛々と進めてまいりたいと考えております。

【長島委員】

 これは、外務大臣、新しい知事が誕生しました、ああいう形で、前の仲井真さんとは全く百八十度政策が違う知事が誕生されたわけです。これは、政府からすれば、やりにくい知事さんだと思いますよ。しかし、これが直近の沖縄の民意でもあるんですね。そういう知事さん、沖縄の民意を代表する知事さんと、きょう、加藤副長官もおられますけれども、今のこの安倍政権、真摯に向き合ってこられたのかなということを私は非常に疑問を持っているんです。 外務大臣、新しい知事さんとお会いになったことはありますか。

【岸田国務大臣】

 翁長知事とは、知事に就任されてから後はお会いしたことはありません。

【長島委員】

官房長官がこの件は主管されていると思うんですけれども、総理もお会いになっていない。官房長官もまだお会いになっていないと思いますよ。外務大臣も、それから防衛大臣もお会いになっていない。つまり、安倍政権の主要閣僚、沖縄に対して向き合っている主要閣僚で、新しい知事といまだに、もう半年近くたっても、まだどなたもお会いになっていない。 これは、私は正常な状況ではないと思います。外務大臣としてどう思われますか。このままでいいと思われますか。こういったことも、恐らく、そういう行き違いが、亀裂がどんどんどんどん拡大していった結果ではないかというふうに思うんですが、外務大臣としていかがですか。

【岸田国務大臣】

まず、さまざまな課題に対する取り組みは、法律に基づいて行われなければなりません。 しかしながら、やはりこうした政治的にも重要な課題につきましては、関係者の意思疎通あるいは信頼関係が大変重要であるということは言うまでもありません。相手のあることではありますが、こうした意思疎通、信頼関係の構築には努力をしながら課題に取り組んでいかなければならないと存じます。
そして、閣僚として翁長知事にお会いしていないという御指摘をいただきました。たしか山口沖縄北方担当大臣はお会いさせていただいていると思います。また、私自身は、お会いするとしたならば、恐らく、まず事務的に調整が行われることと思います。調整が行われて、合意ができれば、お会いすることはぜひ考えてみたいと思っております。

【長島委員】

 今、大臣、大事なことをおっしゃいました。法律に基づいて行わなければならないが、やはり相互信頼というのは非常に大事だ、こういう御指摘だったと思うんですが、私も全く同感です。この基地の問題というのは、特に沖縄の基地の問題は、これだけ負担をされているわけですから、私たちも政権時代、苦しみましたけれども、やはりアメリカとの信頼関係もさることながら、沖縄県との信頼関係は本当に大事だと思います。 その点において、二〇一三年の十二月十七日、つまり仲井真知事が、埋立申請に対する承認を行う直前に東京に来られて、総理と官房長官にお会いになって、四項目の要請、これは沖縄政策協議会に対して要請したことになっていますが、一つは、普天間飛行場の五年以内の使用停止、牧港の補給地区の早期返還、日米地位協定の改定、これは環境条項だと思いますけれども、そして、オスプレイの訓練を県外分散、推進する、この四点だというふうに認識しておりますが、これは今も生きているんでしょうか。これは大事な四項目だと思います。

【岸田国務大臣】

 御指摘の要請につきましては、政府として全力で取り組んでおります。相手のあることではありますが、できることは全て行う、これが現在も政府の基本姿勢であります。

【長島委員】

 それで、その中で、第一項目の普天間飛行場の五年以内の運用停止、これを最初に私は聞いたときに、実は非常に違和感を持ちました、本当にできるのかなと。 大臣、できることは何でもやる、これは総理の答弁もそうなっているんですよ、日本政府としてできることは全て行うと。しかし、沖縄から四項目を受け取って、これはただ受け取っただけなんですか。相手もあることなので、一応相手には伝えておくよという程度なんですか。それとも、もう少し高い、強いコミットメントがある話なんですか。そこをまず一点伺いたいと思います。

【岸田国務大臣】

 当然のことながら、政府としましても、こうした要請を受けて、真剣に受けとめ、取り組まなければならない課題だと考えております。 そして、御指摘の要請も含めて、沖縄の負担軽減につきましては、翁長知事を含む全国の知事の協力があってこそ初めて実現するものであると考えています。普天間飛行場の五年以内の運用停止など、この御要請についても同様であると考えています。 ぜひ、政府としましては、沖縄の負担軽減、政府にとりましての最重要課題のうちの一つであると認識をしております。米国側ともしっかりと協議をし、取り組んでいきたいと考えています。

【長島委員】

 では、ちょっと事実を伺いたいんですけれども、この五年間というのは、起点はいつなのか、そして、期限はいつなのか。政府としてどういう認識ですか。

【辰己政府参考人】

 お答えします。 起点につきましては、二〇一四年の二月ということで考えております。 そういう前提のもとで、先ほど外務大臣からお話があったように、できることは全て行う、これが政府の基本精神でございます。

【長島委員】

 期限はいつですか。起点が二〇一四年の二月、終点は、期限はいつですか。

【辰己政府参考人】

 二〇一四年二月から五年ということで、二〇一九年二月、五年後ということになると思います。

【長島委員】

これは、政府のコミットメントなんでしょうか。

【辰己政府参考人】

この普天間飛行場の五年以内の運用停止につきましては、先ほど来御説明しているように、政府としてはできることは全て行う、こういう考え方で臨んでいるということでございまして、これまでも、KC130の十五機全機を岩国飛行場に移駐する、あるいはオスプレイの県外における訓練をするなど、できることは全て行うという姿勢で取り組んでいきたいと考えております。

【長島委員】

 では、大事なことを聞きましょう。 運用停止という、その言葉の定義はどう認識していますか。

【辰己政府参考人】

 普天間飛行場の危険性の除去を少しでも早く実現する観点から、仲井真前知事からの普天間飛行場の五年以内の運用停止の御要望については、官邸に設置された会議体や個々の会議などを通じて、地元の意向を伺いながら進めてきている、そういう状況でございます。

【長島委員】

 全然答えていないですね。 防衛副大臣がおられるから、防衛副大臣、お願いします。運用停止の定義、お願いします。この認識が一致していなかったら、コミットメントもくそもないですから。

【左藤副大臣】

 お答え申し上げます。 これは、政府全体で連携しつつ、さまざまなレベルで地元との対話を行っていく中で、知事との対話の機会が設けられていくものと考えておりますけれども、その際に、日本の安全保障や普天間の位置づけを含む沖縄の負担軽減といった全体像で話をしている中で、今おっしゃった状況、停止というのは、運航の停止だと思っています。

【長島委員】

運用の停止。運用の停止というのはどういうことですか。運航、運用、もう一度お願いします。もう一度お願いします、大事なことだから。

【左藤副大臣】

運用停止です。ごめんなさい。

【長島委員】

 いやいや、済みません、運用停止の定義を聞いているので、運用停止ですと答えられても全く納得できません。 ちなみに、沖縄県は、県議会で沖縄県が答えているんですよ。沖縄県の定義は、米軍機が普天間の上空を飛ばないこと。これを五年間でできますか。

【左藤副大臣】

 この点については、先ほど政府委員から答えがあったように、官邸に設置された会議体や個別の会談などを通じて、地元の意向を伺いながら進めていきたいと思っております。

【長島委員】

 これを答えないと先に進めないんですよ、副大臣。外務大臣。

【岸田国務大臣】

運用停止につきましては、起点と終点につきましては先ほど答弁があったとおりであります。 そして、運用停止の定義につきましては、従来からの議論を見ますと、沖縄関係者と官邸におきまして、これまでも普天間飛行場負担軽減推進会議等さまざまな会議が設けられてきました。こうした会議等を通じながら、沖縄県の関係者としっかり意思疎通を図った上で、運用停止というものの内容について、確認する、すり合わせる、こういった方針で臨んでいたと承知をしています。

【長島委員】

 私が最初に、五年間で運用停止するということを聞いたときに違和感を持ったのは、まさにこの点なんですよ。沖縄の人たちと一緒にこれから定義についても考えていきましょうという今の大臣の御答弁を百歩譲って受け入れたとしても、では、アメリカ側はどう考えるかなんですよ。 さっきから大臣がおっしゃっているように、相手があることなんですよ。アメリカとすり合わせもしないで、まさか沖縄との、沖縄の要望を受け取って、約束らしきものをしてしまったんですか。これは、下手すると空手形になりますよ。大臣、そこはどうお考えなんですか。

【岸田国務大臣】

 沖縄負担軽減につきましては、当然のことながら、米国政府とも緊密に意思疎通を図りながら対応してきております。

【長島委員】

 答えになっていないんですけれども、では、防衛省に聞きましょう。 要するに、運用停止ということは普天間飛行場の機能が停止するということですよね。それは、新しい辺野古の代替施設ができて移設が完了する前に、普天間の機能を停止することはできるんでしょうか。

【辰己政府参考人】

 繰り返しになりますが、この普天間飛行場の五年以内の運用停止につきましては、相手のあることではございますが、できることは全て行う、こういう政府の方針に基づいて一生懸命やっていきたいというふうに思っています。

【長島委員】

防衛の専門家に伺いたいんですけれども、移設が完了する前に、普天間から辺野古に、辺野古かどうかわかりませんが、今の海兵遠征軍の、アメリカの海兵隊の機能が移駐される前に、移設される前に、運用を停止することは可能ですか。

【辰己政府参考人】

 普天間には、今もいろいろな機能がございました。 まず、先ほど申したように、その一つは固定翼の機能でございます。固定翼の大部分を占めるKC130、この十五機については、全機、昨年の八月、山口県、岩国市などの協力を得て、岩国飛行場に移駐いたしました。 それから、オスプレイですね。 オスプレイにつきましては、これは自治体の協力を得ながら、沖縄県外における訓練などを初め、できることは全て行うということでございまして、そういったことを含めまして、できることは全て行うという姿勢で取り組んでいきたいと思っています。

【長島委員】

いいですか、沖縄の人たちは、飛行機が飛ばないこと、これを期待しているんですよ。今の話は全然違う、訓練の移転なんというのは。そんなものは、前からずっとやってきているんですよ。 では、基本的なことを言いましょうか。 まず、先ほど私が申し上げたとおり、埋め立てがまだ始まっていない、ボーリングも継続できるかわからない、こういう状況ですよ。うまくいって、順調にいったら、この八月から、夏から秋ぐらいにかけて埋め立て始められるかなという状況でした。着工してから完成するまで、何年かかりますか。

【辰己政府参考人】

 現在の計画では、二〇二二年またはそれ以降ということでございます。

【長島委員】

 運用停止が先ほど二〇一九年の二月とおっしゃっていましたね。運用停止が二〇一九年の二月。基地が完成するのが、どんなに早くたって二二年の前半。 日米で統合計画、二〇一三年の四月に合意しました、これは二二年に移転完了と明記されています。それから、二〇〇六年のロードマップを、二〇一二年の四月、2プラス2の合意で修正しました。ここには、普天間からグアムへの移転完了は二〇二四年と書いてあります。それから、アメリカの国防総省が米議会に提出をした在沖縄海兵隊のグアム移転に関するマスタープランによれば、普天間は少なくとも二〇二三年まで継続使用し、二四年に辺野古新基地へ移設する見通し、こう明記されている。 さっきの二〇一九年二月までに運用停止というのは、どういう約束ですか。

【岸田国務大臣】

 沖縄からの要望、五年以内の運用停止の要望ですが、この五年以内の運用停止の要望も含めて、さまざまな内容が盛り込まれています。 こうした要望全体に政府として真剣に応えなければならないということで、先ほど答弁の中にもありましたように、KC130の全機移駐ですとかオスプレイの訓練移転、これはできることからどんどん進めているところであります。 そして、運用停止の定義につきましては、先ほど申し上げました、引き続き沖縄の関係者とさまざまな会議等を通じて意思疎通を図った上で明らかにしていかなければならない課題だと思っています。 こうした全体をしっかり受けとめて、政府としては引き続き、できることは全てやる、そういった思いで努力を続けていきたいと思っています。

【長島委員】

 我々も総理大臣の県外、国外という発言にかなり振り回された経緯もありますので、そういう経験も踏まえて私はあえて忠告を申し上げたいと思いますが、余り実現可能性のないことをお約束されて、かえって沖縄県の皆さんの期待を失望に変えてしまって、そしてできることもできなくなってしまうということを、ぜひ注意していただきたい。 また、アメリカ側も困惑していますよ。
 報道によれば、昨年の十月二日、日米合同委員会が開かれた、その直前に、九月十七日に、菅官房長官、官房長官は内閣改造で沖縄基地負担軽減担当大臣も兼務されている、そういうお立場で、五年以内の運用停止時期を沖縄側に明示されたんですね。二〇一四年を起点として、二〇一九年二月初めまでに運用停止することを初めて明言した、こういう報道になっているんですね。 それを聞いた米側は、こう言っているんです。一九年二月の運用停止という一方的な発表に驚いた、米側と調整もなく発表したことは迷惑で、米国を困った立場に追いやると。しかも、さらに米側は、それまで日米両国が二二年を現実的としてきた経緯に触れて、移設がですよ、辺野古沿岸部の代替施設が完成し移駐するまで、普天間の運用は停止できないとはっきり言っているんですよ。そして、一九年二月の目標設定をめぐり、今後も外交ルートを通じて反対していく、こういう日本側のやり方は同盟の流儀に反すると。 外務大臣、いかがですか。

【岸田国務大臣】

 今の発言、米側の誰の発言なのか、一度確認はしてみたいと思いますが、我が国としましては、沖縄の負担軽減につきましては、翁長知事を初めとする全国の知事、あるいは関係者の協力なくして実現するものではないと思っていますが、あわせて、米国の協力なくして実現はしない、これは当然のことであると思っています。 ぜひ、こうした関係者の理解を得るべく、結果を出すべく、しっかり努力をしていかなければならないと思っています。

【長島委員】

 大臣もおわかりだと思いますが、この件は本当に慎重にも慎重を期して進めていただきたいというふうに思います。そのことを申し上げて、次に行きたいと思います。 先週末、ソウルで日中韓の外相会談が行われました。前回が二〇一二年、ちょうど野田政権、私も補佐官で、一緒に北京に参りました。温家宝総理との間で、東シナ海をめぐってかなり厳しいやりとりがあったのを今でも覚えております。三年ぶりの開催で、ちょっと中身を聞きたかったんですが、先を急ぎたいと思います。 その中で、日韓の外相会談をやりました。その日韓の外相会談において、主要な議題、特に日韓の二国間に横たわる主要な議題について、もう少し絞って聞きます。特に岸田外務大臣の方から提起をされた議題はどんなものがあったでしょうか。

【岸田国務大臣】

 日韓の外相会談につきましては、今回で尹炳世長官とは五度目の会談になりますが、今日までのさまざまな対話、信頼関係に基づいて、充実した意見交換ができたと考えております。それぞれの具体的な関心事についても議論を行い、二国間関係あるいは地域情勢についても率直な意見交換ができたと思っています。 そして、私の方から提起した課題としましては、旧民間人徴用工をめぐる裁判の問題、産経新聞前ソウル支局長の起訴をめぐる問題、あるいは日本産水産物の輸入規制強化、こういったあたりが大変重要な課題として挙げられるのではないかと考えています。

【長島委員】

その中で、私がきょう取り上げたいのは、産経新聞の前ソウル支局長、今、起訴という話がありましたけれども、もちろん、起訴をされたことにも、その起訴事由を見たときに非常にびっくりしましたが、これは長期に出国停止になっているんですね、ずっとこれまでの間。もう七カ月以上、出国できない状態が続いているんですね。 この点についてもう少し詳しく、外務大臣の方から尹炳世長官に対してどういうお話をされて、先方はどういう回答をされたのか、伺いたいと思います。

【岸田国務大臣】

 この問題につきましては、報道の自由、表現の自由、さらには日韓の二国間関係の観点からも大変重要な、深刻な課題であり、韓国政府に対して適切な対応を求めたところであります。 そして、裁判そのものもそうなんですが、特に出国禁止措置につきましては、韓国の国内法におきまして、出国禁止というのは行政処分であるということを踏まえた上で、韓国政府に対しまして対応を求めたところであります。 それに対する韓国側の反応につきましては、今、現時点では、私の方からつまびらかにすることは控えさせていただきたいと思います。

【長島委員】

 今大臣がおっしゃったように、これが起こったのが、事件といいますか、記事がネットに配信されたのが八月の上旬です。去年の八月八日にソウルの中央地検からいきなり出頭命令が出されて、それ以降、七カ月以上も出国禁止処分が八回にわたって延長されている。これは行政処分ですよ。 そして、せんだって、今や被告になっているわけですけれども、加藤さんという支局長さん、行政手続の取り消し請求の訴訟を起こされました。その訴状にこう書いているんですよ。
その訴状では、原告になりますからね、原告は、被告の、被告のというのはその行政処分を行った側の、処分により、日本への出国が不可能であり、原告の私費で家賃を負担し生活しているため、出国停止期間が延長されることによる経済的負担は非常に大きい状況です。ここから先が大事。また、原告は三人の子供を養う一家の家長です。ことし長女が大学に入学するなど、思春期の原告の子供たちは、父親である原告と多くの会話を交わし、心を通わせ合う必要性が非常に大きい時期ですが、出国が停止されている原告は、経済的な状況等を考慮すると、家族と顔を合わせることが事実上厳しく、一度も会っていませんよ、それによる原告及び家族の精神的苦痛も甚大なものです、こう書かれている。 大臣、まあ相手の反応はおっしゃらなかった、大臣がどのぐらいの強い口調で尹炳世長官に迫ったのか、それはわかりませんが、これまで七カ月間、外務省として韓国政府に対して、まさに大臣いみじくもおっしゃった、これは司法ではなくて行政処分ですから、どういう働きかけをしてきたんですか。

【岸田国務大臣】

 この問題につきまして、当然のことながら、我が国政府としましては、さまざまなレベル、さまざまな機会を通じまして我が国政府の懸念を伝えてきました。残念ながら、今日まで何ら事態が改善していないということ、まことに残念に思っています。 裁判そのものにつきましても、表現の自由あるいは報道の自由、日韓関係、こういった観点からも大変重大な、深刻な課題ではありますが、特に出国が禁止されているということ、このことにつきまして、特に適切な対応を求めたところであります。
 韓国の出入国管理法は、法務部長官が同法に規定された一定の外国人に対して出国を停止できる、こういった規定になっています。こうした行政の対応が規定されているわけですので、そういった点も踏まえて、韓国側に適切な対応を求めたところであります。 そして、日韓の間においてはさまざまなレベルの対話を続けているわけですが、特に、ほぼ月に一回行われています局長級協議、この局長級協議におきまして、具体的な課題についてやりとりを行っています。この局長級協議におきましては、当然のことながら、毎回取り上げ、我が国の問題意識、遺憾の意をしっかり伝えているということであります。

【長島委員】

何度も言っています、遺憾の意を表明しています、政府から聞こえてくるのはそういうメッセージだけなんですよ。本当にどういう働きかけが行われているのか。 もちろん、さっき大臣おっしゃったように、表現の自由、報道の自由の問題も、これは極めて大事。つまり、こういうことが続けば萎縮効果が出ますから、際どい報道をしようとチャレンジするケースが少なくなると思いますよ。これは別に産経新聞だけの話じゃない、朝日だって、毎日だって、読売だって、外国のメディアはどのメディアでも、みんな注目していますよ。 加えて、この出国停止、行政処分なんですよ。 法務省、きょう来ていただいていると思いますが、我が国で裁判を受けている被告、身体を別に当局から拘束されていない、身柄を拘束されていない状況の中で、こんなにも長期間出国を停止するような、そういう法制度、我が国はどうなっているんですか。我が国はこういうようなことはありますか。あり得ますか。

【杵渕政府参考人】

 お答え申し上げます。 入管法上、重罪、具体的には死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役等に当たる罪につき訴追されている外国人、また、これらの罪に関し勾留状等が発せられている外国人につきましては、関係機関から通知を受ける場合には、その者の出国の確認を二十四時間に限り留保するということができます。 そのような場合を除き、身柄の拘束を受けずに裁判中の外国人の出国を差しとめることができるといったような規定はございません。

【長島委員】

 外務大臣、二十四時間ですよ、日本の法令は。もちろん、韓国の法令とは違うと言われればそれまでかもしれませんが、常識的に考えて、証拠隠滅をするおそれがあるとか、あるいは、出国したらどこに行っちゃうかわからないとか、こういうことでもあれば、百歩譲って、別かもしれません。しかし、日本の主要紙のソウル支局長までやった方ですよ。これだけ世界が注目しているわけですよ。国外に逃亡してどこかいなくなってしまうなどあり得ないじゃないですか。 場合によっては日本政府がそういう、加藤支局長がどこか行かないようにきちっとギャランティーをする、だから出国はさせなさいと。行政処分なんだから。韓国の入管法によれば、法務部長官が出国停止の延長を許可することができるとなっているわけでしょう。まさに大統領府、そしてそのキャビネットの一員である法務部長官ですよ。行政と行政の関係じゃないですか。 日韓が最も大事な隣国関係だとすれば、過去の問題とかいろいろありますけれども、しかし、現在進行の、日本人の身体、移動の自由を奪っているこの状況、外務大臣、不退転の決意でこれを解決するとこの外務委員会の場でお約束ください。

【岸田国務大臣】

 御指摘のこの裁判の問題、特に出国禁止措置は、先ほど申し上げました表現の自由、報道の自由、さらには行動の自由にかかわる重大な問題ですが、さらに、現状を見ますときに、人道上の問題であるとも認識をいたします。そういった思いでしっかり対応しなければならないと存じます。 そして、この問題につきましては、国際社会もさまざまな反応をしています。ソウルの外信記者クラブも、韓国検事総長宛ての公開書簡で深刻な憂慮を表明していますし、アメリカを初め各国も表現の自由等の重要性を指摘しております。
 我が国としましては、こうした国際社会に対してもしっかりと思いを訴えていかなければなりません。その関係で、今月二日ですが、現在ジュネーブで開催されております第二十八回人権理事会におきまして、我が宇都外務大臣政務官を派遣させていただきまして、スピーチを行わせていただきました。日本として、報道の自由は民主主義の基礎をなすものであり、ジャーナリストは書いた記事によって恣意的に罰せられるべきではない、こうした訴えを行ったところであります。 ぜひ、国際社会あるいは国連の場等を通じましても、適切な機会にこうした働きかけを行っていきたいと考えます。

【長島委員】

 人権理事会でのアクションは極めて適切だと思います。 ただ、今、表現の自由の話だけしかされませんでしたけれども、それも大事ですよ、精神的自由の根幹をなすものですから大事ですけれども、身体の自由も奪われているということですよ。この点もぜひ国際社会で訴えていただきたい。
 私が何でこんなにしつこく聞くかというと、外務省の本件に対する姿勢というのは、ちょっと弱いというか真剣味に欠けている気がするんですよ。 例えば二月十三日に、一番最近の出国停止処分の延長があったとき、そのときの外務省の外務報道官のコメントがここに出ているんですよ。報道、表現の自由と日韓関係の観点から極めて遺憾だ、韓国側が何の措置もとらず、事態が何ら改善していないことはまことに残念で、引き続き適切な対応を求めていく。 これはコメントとしてどうですか。残念だ、引き続き適切な対応を求めていく。もう少し毅然とした表現を使えないんですか、外務大臣。そういう指導をされた方がいいと思いますよ。全く伝わらないですよ、これでは。 しかも、報道、表現の自由と日韓関係の観点からと言っているけれども、今問題なのは、身体の自由ですよ、移動の自由ですよ。出国できない、家族と会えない、こういう状況が起こっている。 この点、外務大臣、ぜひしっかり指導をしていただきたいと思います。
 最後に、この点で伺いたいんですけれども、先日、自民党の大実力者である二階総務会長が、千数百人の日本の、企業関係者かどうかわかりませんが、連れて韓国を訪問しているんです。ちょうど二月十三日なんですよ。そして、にこやかに朴大統領と会談されているんですよ。 しかも、安倍総理は、メッセージを託しているんですよ、二階総務会長に。日本国民はみんな心配している、自由に日本に渡航し家族と会えるようになることを望む、これを伝えたことになっているんです。 そのときに、外務大臣、ここから大事、朴大統領はこう言ったというんですよ。問題は司法の場に移っており、司法の判断に委ねるしかない。 これは事実誤認ですよね、外務大臣。いかがですか。

【岸田国務大臣】

 先ほど申し上げましたように、出国禁止の部分に関しては、行政のかかわる問題であると考えています。

【長島委員】

 これは本当に行政処分ですから、しっかり、外務大臣からもそうですし、日本政府全体、きょうは副長官がお見えですから、副長官にも一言伺いたいと思います。 この点について、本当に速やかに、日本政府として、韓国政府に対してきちっと行政処分の撤回を求めていただくこと、お約束いただけますか。

【加藤内閣官房副長官】

 今、外務大臣からもお話ありましたように、政府としても、これまでも、そうした表現の自由、行動の自由に加えて、身体の自由も含めて対応してきたところでありまして、引き続き、そうした今のお話も含めて対応させていただきたいと思います。

【長島委員】

 これは特段のアクションをぜひ起こしていただきたい。 安倍政権は、第一次政権のときから、価値観外交、こういうことを標榜してきたし、国家安全保障戦略の中にもそういう表現があります。これは本当に基本的人権にかかわる重要な価値の問題でもあると思います。 人権、人道の観点から、外務大臣のしっかりとしたリーダーシップを求めて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。