長島フォーラム21

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国会質疑

2015年6月5日

【会議録】我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会

【浜田委員長】

次に、長島昭久君。

【長島委員】

民主党の長島昭久です。 私も、午前中の憲法の話を少しさせていただきたいと思うんです。
 私も実は、きのうの憲法審査会の三人の憲法学者の方の違憲宣告には衝撃を受けました。午前中に出ていない大事な論点を一つ、法制局長官にお伺いしたいと思っています。 きのう、長谷部参考人がこう言っているんですね。「集団的自衛権の行使が許されるというその点について、私は憲法違反であるというふうに考えております。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんし、」これは午前中、大串委員がやったことですけれども、次が問題なんです。「法的な安定性を大きく揺るがすものであるというふうに考えております。」と。私も、この法的安定性は非常に大事な論点だというふうに思います。
 この四十年にわたって、一九七二年の政府見解をずっと維持してきた。その結論は、集団的自衛権は憲法上認められないということでずっとやってきたわけです。それによって自衛隊は組織されてきた、運営もされてきた。御家族の皆さんも、そのことを信じて自衛官の皆さんを守り立ててきた。装備も購入してきた。つまり、国家生活全体を政府見解に基づいて律してきたわけです。 それを、基本的論理は維持をしているというふうに先ほど来説明がありましたが、最終的な結論において集団的自衛権を認めるということに今回なったわけでありまして、そこにおける法的安定性についての担保はどのようにとられるというふうにお考えなのでしょうか。

【横畠政府特別補佐人】

憲法審査会における御議論につきましてコメントすることはいたしませんが、一般に憲法第九条に関する憲法学者の方々の御意見は、伝統的に、自衛隊は憲法第九条二項によってその保持が禁じられている戦力に当たり、違憲であるとするものが多いと承知しております。
昨年七月の閣議決定は、憲法第九条のもとでも例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるという昭和四十七年の政府見解の基本論理を基礎としたものでありますが、その政府見解は、まさに政府の見解であり、また国会においても御議論をいただいてきたものでございます。それ自体、残念ながら憲法学者の方々の御賛同が得られているというわけでは必ずしもないと認識しております。
今般、このような昭和四十七年の政府見解を維持し、この考え方を前提として、これに当てはまる極限的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとしたものであり、国際法上集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについてその行使を認めるものではなく、新三要件のもと、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものでありまして、これまでの政府の憲法解釈との論理的な整合性は保たれており、また法的安定性は同じようにしっかりと保たれているものと考えております。

【長島委員】

  憲法学者の大半が自衛隊違憲論であるということは私も存じ上げております。しかし、きのう、三人の憲法学者が意見をお述べになったうちの小林節という教授は私の指導教授でもありまして、私が学生時代から小林教授は自衛隊合憲論をずっと唱えていた、そういう教授でもあるわけですから。 そういう学者も含めて、この憲法の解釈、最高法規の解釈です。そして、行政の首長が、イニシアチブを発揮してその最高法規の解釈を変更して、そして国権の最高機関である国会に対する説明を、結論の部分を翻したわけですから、これは今の説明だけで法的安定性が担保されたとはなかなか言いがたいと私は思うんですね。そのことを恐らく長谷部教授はきのうおっしゃったんだろう、こういうふうに思うんです。 歴代政権は、ずっと踏襲してきたわけです。社会党の委員長が総理をやっていたときも、民主党の政権のときも、そして自民党の政権のときもそういうことで説明をつけて、全ての国家生活、つまりは、自衛隊を中心とする行政の部分についてはこれを維持してきたわけですね。その結論の部分を変えているわけですから、これは相当大きな、私は根本的な変更だというふうに思うんですよ。そこを、今のようにさらっと、法的安定性も担保されています、こういうふうに言われても、なかなか国民の腹にはすとんと落ちるものではないと私は思っています。 もうこれ以上はやりません。しっかりここはこれからも議論を深めていくべきポイントだというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、もう相当時間が食い込んでしまいましたので、本題に行きたいと思います。 皆さん、お手元の二ページ目、読売新聞の二十九日金曜日の一面を持ってまいりました。「南シナ海で掃海想定せず 首相答弁 例外ホルムズ海峡のみ」。 この見出しが一面で躍っておりますが、私もずっとこの質疑を聞いておりまして、あるいは報道ぶりを見ておりまして、あたかも存立危機事態はホルムズに限定されているかのような、そういう印象が実は広がりつつあるんですね。私、これは大きな誤解だと思っているんです。 法制担当大臣の中谷防衛大臣、ぜひ明確にお答えいただきたいと思いますが、新三要件に合致すれば、ホルムズ海峡であろうがどこであろうが、集団的自衛権の行使を含む武力行使の可能性を持った存立危機事態を認定することは可能ですね。いかがでしょうか。

【中谷国務大臣】

どのような場合にどのような武力行使が想定されるかは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に照らして総合的に判断する必要があるためにあらかじめ申し上げることは困難でございますが、外国領域における武力行使について、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに、現時点で具体的な活動を念頭に置いているわけではございません。

【長島委員】

 そういう話ではないんですよ。 私はきょう、南シナ海の問題を正面から質疑しようと思って準備をしてまいりました。ホルムズの機雷掃海というのは、私たちから言わせると、ほとんど蓋然性のない事例なんですね。むしろ、後でずっとるる議論させていただきたいと思いますが、今の南シナ海の状況の方がよほど不安定なんですよ。南シナ海の方が存立危機事態あるいは重要影響事態が起こりやすい、地球上のどこよりも起こりやすい、そういう環境にあるんですよ。起こるかどうかわかりません。
 そういう中で、今、領域とおっしゃいましたが、領域とかは関係ないんです、公海上も含めて。ホルムズ海峡以外のところでも、数日前の総理の答弁では中東、インド洋という話が出ました。南シナ海も含めて、新三要件に当てはまるような、そういう事案が発生した場合には、存立危機事態を認定する可能性は排除しませんね。 されなかったんでしょうか。

【中谷国務大臣】

  長島委員とは二十年来安全保障について議論をいたしておりまして、特に海賊の対策とか邦人救出とか、いろいろと現実的な政策を導くために御提言をいただいております。 今回の議論につきましては、やはりシーレーンという我が国にとって非常に重要な場合の安全保障を議論しなければならないわけでありまして、この南シナ海のケースにつきましては、我が国の輸入の原油の約八割、天然ガスの三割が南シナ海のシーレーンに依存をいたしております。 これは、依存度につきましてはホルムズ海峡と同様ですが、どこが違うのかというと、ホルムズ海峡というのは非常に狭隘な海峡、狭まっておりまして、本当に大事な海峡でございます。ここが寸断されますと、シーレーンがとまってしまう。
 片や、南シナ海におきましては、迂回路のないホルムズ海峡とは異なって、さまざまな迂回路があり得るというわけでありまして、ホルムズ海峡のような狭い海峡とは異なって、機雷で封鎖することは容易でないと考えられます。 したがいまして、御指摘のような事態は容易に想定できるものではないと考えますが、いずれにせよ、いかなる事態で存立危機事態に該当するかにつきましては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即しまして、政府が全ての情報を総合的に、客観的に、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難でございます。 法理的には、この三要件に合致した場合は法の理論としては可能であるということでございます。

【長島委員】

  最後の結論に来るまで相当時間がかかったんですけれども、法理的には、新三要件に当てはまった場合には事態認定をすることも辞さない、こういうことであります。それは、地域を限定するものではない。海峡が狭隘であるとか、そういうことではないですね。場合によっては、そういう事態が発生すれば存立危機事態あるいは重要影響事態を認定することも排除しない、こういう御答弁だというふうに理解をしております。間違っていたら、また後で訂正してください。 それで、そういう判断をする枠組みが、私、実はいま一つはっきりしないんです。今、存立危機事態と重要影響事態を並べて私もお話をしたし、中谷大臣も同じように並列で答弁されましたけれども、この法案を見ても、事態認定をするときの判断プロセスについては何も書いていないんです。例えば、重要影響事態だったら、第二条、政府は、重要影響事態に際して、適切かつ迅速に、後方支援云々、こうなっているわけです。
 ですから、私が聞きたいのは、新三要件は何度もこの場で答弁をされていますので、ああ、あの三要件にはまる事案が起こったら認定されるんだなとわかるのでありますが、重要影響事態の場合、累次にわたる答弁を聞くと、当事者の意思や能力、事態の発生場所云々かんぬんで、両事態ともに、ほとんど要素は同じなんです、考慮要因は。それをどういうプロセスで判断するかということを少し詳しくお話を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

【中谷国務大臣】

  重要影響事態に該当すると評価をされたり、特定の対応措置を実施する必要があると認める場合には、対応措置を実施すること及び対応措置に関する基本計画を閣議決定で決めた上で、閣議決定した基本計画を遅滞なく国会に報告し、自衛隊の部隊等が実施する後方支援活動、捜索救助活動及び船舶検査について、これらの対応を実施することについて、原則として事前に国会の承認を得るということでございます。

【長島委員】

  いや、大臣、よく聞いてください。 事態認定をするその判断のプロセスを教えてください。後で何をやるかという話はもういいんですよ。それはわかっています、ここに書いてあるんだから。
 そうじゃなくて、どういう判断をして、どんな事態、例えば、では言いましょう。周辺事態は、野呂田六類型というのを出しました。あの類型に当てはまった場合には事態認定がなされるんだなという、ある意味では予見可能性があるわけですよ。しかし、今回の場合は、重要影響事態はそのまま六類型を引き継ぐんですか。それがまず一点。それを引き継ぐとしたら、例えば具体的にどんな事象が起こったときに事態認定の判断を下すんでしょうか。それをお答えください。

【中谷国務大臣】

 まず、重要影響事態というのは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であるということでございまして、事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して、我が国として主体的に判断するものでございます。
いかなる事態が重要影響事態に該当するかということにつきましては、政府が全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるために一概に申し上げることは困難でございますが、具体的に申し上げれば、実際に武力紛争が発生し、または差し迫っている場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に当事者の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移等を初め、この事態に対応する状況を総合的に判断して、特に、我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の影響の重要性等から、客観的かつ合理的に判断するということでございます。

【長島委員】

いや、全然質問に答えていないですよ。 では、外務大臣、答えてください。 どんな事態が生じたら事態認定するんですか、重要影響事態。これは外務大臣も無縁じゃありませんよ。これは野呂田六類型というものも過去にあるわけです。そして、これからどういう事態が起こるかわからない。どんな事態が起こったら、どんな事案が発生したら、重要影響事態の認定ができるんでしょうか。

【岸田国務大臣】

まず、御指摘がありました六類型、この六つの具体例につきましては、重要影響事態においても当てはまると考えます。 その上で、周辺事態では想定されなかったものですが、重要影響事態で新たに想定される、こういった事項をあえて申し上げるならば、当該六つの具体例のような場合において、日米安全保障条約の目的達成に寄与する活動を行うアメリカ合衆国の軍隊のみならず、その他の国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行う、こういった外国軍隊に対する支援措置が可能になると考えております。
 そうしたことを想定しながら、具体的な事例に即して総合的に判断する、これを先ほど来安保法制担当大臣からも申し上げているところであります。

【長島委員】

  防衛大臣、どうですか。判断の基準、どんな事象が起こったら重要影響事態を認定することができるか、そこを聞かせください。そうしないと国民はわからないですよ、全部ブラックボックスなんだから。

【中谷国務大臣】

  あえて申し上げれば、例えば、仮に中東、インド洋などの地域で深刻な軍事的緊張状態、また武力衝突が発生した場合であって、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶ可能性があり、かつ米軍等がこうした事態に対応するために活動している状況が生じたときは、その他の状況も勘案した上で、事態が重要影響事態に該当することはあり得るものと考えます。
 そしてもう一つ、どのように決めるのかということにつきましては、これは基本計画をつくらなければなりません。それは政府で作成をいたしますので、NSC、ここなどで関係閣僚が集まりまして、こういった具体的にどうするのかということを、情報等を用いまして総合的に判断するということでございます。

【長島委員】

  外務大臣、しっかりフォローしておいてください。今おっしゃっていただきました深刻な軍事的緊張状態が起こるとか、あるいは武力衝突が発生するとか、これは、また中東、インド洋とおっしゃいましたけれども、それに限りませんよね。これからお話をしますけれども、日本の周りで今一番そういう可能性のある地域というのは南シナ海なんですよ。ですから、そのことも念頭に置いて、政府は緊張感を持ってやっていただきたい、こう思います。 どこまで何ができるかということがはっきりしないのが、この法案の泣きどころなんです。 そこで、ちょっと私なりに法制局長官に伺いたいと思います。
 一枚目の私がつくった表なんですが、これは再三出ています、ホルムズ海峡と、仮に南シナ海を比較しました。 仮に、第一要件に当てはまるような事案が発生したとしましょう。これは存立危機事態の話です。そして第二要件で、他に適当な手段がないと。ホルムズの場合はどうしようもないわけです、他に適当な手段がない、迂回ルートもない、しかし、南シナ海の場合はたくさんある、これまでこういう御答弁でありました。 としますと、南シナ海の事案というのは、第一要件には当てはまったとしても、第二要件で、ほかに別ルートがあるから、これは三要件に当てはまらないということで、そこから先の検討にまでいかないんでしょうか。そこをちょっとお答えください。

【横畠政府特別補佐人】

  実際のこの新三要件に当たるかどうかの判断は、現実に事が起こってからの判断ということになるので、仮定のお話になりますけれども、仮に第一要件を満たした事態であるといたしましても、第二要件、すなわちその時点で他に適当な手段がない、つまり武力を行使する以外に手段がないという場合でなければ、武力の行使をすることはできないということでございます。

【長島委員】

  今、武力の行使をする以外に手段がないというのは、これまでの歴代内閣の答弁でいくと、ただ外交交渉で片がつくもの、こういうような答弁もあるんですけれども、そういうことを念頭に置いているんでしょうか。それとも、総理が再三使っているように、迂回ルートがあるなしが判断基準になっているんでしょうか。

【横畠政府特別補佐人】

御指摘のように、迂回ルートを利用することによって被害が避けられるということであるならば、第二要件は満たさないということになろうかと思います。

【長島委員】

  そして、第三要件なんですけれども、必要最小限度。
 せんだって、玄葉元大臣が少し首をかしげておられましたけれども、外国領域における武力の行使禁止原則の例外は、誘導弾の根元をたたく敵基地攻撃、それから受動的、限定的な機雷掃海、これが例外に当たるというような答弁をこれまでされていますけれども、昭和六十年九月二十七日の政府答弁書にはこう書いてあるんですね。
 「武力行使の目的をもつて自衛隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」、これは再三私たちも聞いてきました。その後、「仮に、他国の領域における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、」これは今の三要件でも生きているんだと思うんですが、「憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考える。」これは今でも生きているんでしょうか。

【横畠政府特別補佐人】

 今でも同じ考え方でございます。 ただ、その例外といいますのは、実際に念頭にありましたのは、昭和三十一年に御答弁申し上げた、誘導弾による攻撃が避けられず、他に手段がない場合という極めて例外的な場合を念頭に置いているものと理解しております。

【長島委員】

このときは誘導弾の話も出てくるんですが、その後なんですよ、これは。「仮に、他国の領域における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されない」、つまり、私のこの表はありますか、お手元に。「外国領域 機雷掃海のみ?」とクエスチョンマークで書いてありますが、必ずしも機雷掃海だけに限定されるものではないというのが六十年のこの政府答弁書の趣旨だと思うんですが、その趣旨を今でも引き継いでいるんでしょうか。

【横畠政府特別補佐人】

我が国に対する武力攻撃で、他国での武力行使をしないと防げないというものとして現実的に考えられておりましたのは、まさに我が国に対する誘導弾が多数降り注ぐような事態であろうかと思います。
 また、機雷の話は、今回の新三要件を満たす場合において、なお、他国の領域に敷設された機雷についてはそこまで行かないと除去できないわけですので、そういう意味でやむを得ない場合に当たり得る、そういう前提で議論されているものと考えております。

【長島委員】

  今の法制局長官の御答弁は、旧三要件、つまり個別的自衛権を前提とした御答弁のように私には聞こえました。我が国に対する攻撃を排除する、だから機雷と敵基地攻撃、限定的なこれしかない。
 しかし、今度は集団的自衛権でしょう。我が国に対する攻撃ではない、他国に対する攻撃を排除するために、もちろん目的は我が国の防衛でしょう、それは再三政府が答弁をしている、したがって、少し範囲が広がるんですよ。そういう場合であっても、今御答弁があったように、機雷と、誘導弾を排除するための敵基地攻撃だけに限定されるような、その御答弁じゃおかしいじゃないですか。
 六十年の時点でも、ほかに三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論として、つまり法理上はそのような行動、ほかの形態の武力行使もあり得ると昭和六十年に答えているんですよ。
 まさに、集団的自衛権を認めた今日にあって、今、この論理を後退させるような御答弁はおかしいんじゃないですか。

【横畠政府特別補佐人】

  後退でも前進でもないと考えております。 今回の新三要件のもとにおいて、国際法上は集団的自衛権によって違法性が阻却される、そのような自衛の措置というものをとれることになるわけでございますけれども、いわゆる集団的自衛権という言葉から、一般には、自国ではなく他国を守るために武力を行使する、外国まで戦いに行くのだというようなイメージが生じやすいところでございますけれども、この場でもるる御説明申し上げておりますとおり、今回のものはそのようなものではございませんで、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度のものにとどめるということでございます。
 第二要件で明示してありますとおり、我が国防衛のため必要やむを得ないものであること、第三要件におきましては必要最小限度ということで、従来の必要最小限度の考え方は一切変わっていないという前提でございます。

【長島委員】

  いや、必要最小限度の考え方が変わっていると言っていないんですよ。その手段として、機雷や敵基地攻撃にとどまるものではないんじゃないですか。ほかの武力行使の可能性だって、大臣、米艦防護なんというのがもう事例に挙がっているわけですよ。可能性はあるわけですよ、ほかのことも。それは排除されないでしょう、まさか。

【横畠政府特別補佐人】

  従前からも、我が国に対する武力攻撃が発生して、我が国が個別的自衛権を発動している場合において、我が国近海において我が国を守るために活動している米艦を守るということは、これは我が国を防衛するために必要な措置として可能であるということは、るるお答えしているところでございます。

【長島委員】

 まあいいや。次に行きましょう。 重要影響事態にもう一度戻ります。 まず、基本的な質問をしたいと思うんですけれども、重要影響事態のもとでは、これはメニューとしては後方支援しか上がっていないんですが、後方支援、この法案に上がっているメニュー以外はできないと考えていいんでしょうか。

【中谷国務大臣】

 後方支援に関しましては、法律に明記をした事項のみでございます。

【長島委員】

  では、少し違った角度で聞きましょう。 平時で許されているような行動は、重要影響事態でも後方支援以外でできることがあるんでしょうか。(発言する者あり) 岩屋理事から、もう少し具体的にという話がありましたので。例えば警戒監視、例えばアセット防護、こういったものは重要影響事態下でも後方支援に加えてやることができるんでしょうか

【中谷国務大臣】

 それは実施できますが、あくまでも武力行使と一体化するというようなことにならないという範囲でございます。

【長島委員】

  そうなんですね。武力行使と一体化の制約がかかってくるんですね。 これは、私、皆さんはシームレスだ、切れ目なくと。米側にもそういう説明をされていると思います。
 ここに、皆さんのお手元にも一番最後に、ガイドラインの見出しだけつけてまいりました。「4 日本の平和及び安全の切れ目ない確保」「A 平時からの協力措置」、ここにだあっと書いてあります。海洋安全保障、防空、ミサイル防衛、アセットの防護。 それから、一枚めくってください、最終ページ、「C 日本に対する武力攻撃への対処行動」、これは何でもできるわけですね。そして「D 日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」、これはアセット防護、捜索・救難、海上作戦等々書いてあるわけですね。
 ところが、「B 日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」、ここには後方支援のメニューしか書かれていないんです。「同盟は、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対処する。当該事態については地理的に定めることはできない。この節に示す措置は、当該事態にいまだ至ってない状況において、両国の各々の国内法令に従ってとり得るものを含む。」こう書いてある。 なぜここにアセット防護がないのかな、なぜここに警戒監視が書いてないのかなと私は不思議に思っていたんです。 今御答弁されたように、平素できることは重要影響事態下でもできる、こうおっしゃいましたね。アセット防護もできる。アセット防護もできる、これはそれでよろしいですね。

【中谷国務大臣】

 おっしゃるように、新ガイドラインにおいては、アセット防護、これは「平時からの協力措置」の節に記載されておりますが、「日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」の節の柱書きに明記されているとおり、日米両政府は、日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処に当たっては、平時から協力的措置を継続するというふうにしております。 したがいまして、日本の平和と安全に対して発生する脅威への対処に際しても、適切な場合には、自衛隊は、米軍は、平時から引き続きアセット防護を相互に実施していくということになると考えております。

【長島委員】

 平素におけるアセット防護においては、それができるエリア、できないエリアがあるんでしょうか。つまり、どこでもできるんでしょうか、それともできなくなるようなエリアがあるんでしょうか。

【中谷国務大臣】

 基本的には、この法律によりまして、我が国の防衛に資するということでございます。また、実施に際しましても、防衛大臣がその必要性があると認める場合に限定をいたしております。

【長島委員】

  したがって、何度も繰り返して恐縮ですが、法理的には地球上どこでもできる、こういうことになるんですね。よろしいですか。

【中谷国務大臣】

 我が国の防衛に資するという条件がついております。

【長島委員】

  それでは、防衛大臣が御決断をされることになるんだろうと思いますが、例えば南シナ海で警戒監視活動をアメリカと一緒にやる、あるいは日本独自でやる、こういう可能性は排除されませんね。

【中谷国務大臣】

 この項目は自衛隊法の九十五条の二に規定をするわけでございますが、どのような場所で適用されるかにつきましては、個別具体的な状況によって判断をされるものでございまして、あらかじめ申し上げることは困難でありますが、南シナ海におきましては、現在、自衛隊として継続的な警戒監視を行っておらず、その具体的な計画を有しているわけではございませんので、また、どのような状況になるのか判断するわけでありますが、防衛大臣としましては、我が国の防衛に資する、またその必要性が認められるという場合に限るということでございます。

【長島委員】

 アメリカのデービッド・シェアー国防次官補あるいは海軍のトーマス司令官、お二人とも、日本と一緒に南シナ海での警戒監視活動ができたらいいな、こういう意見表明をされていますが、防衛大臣として、そのことも含めて、平素、警戒監視、あるいは場合によっては九十五条の二を適用してアセット防護、こういうことも南シナ海の海域でやる可能性は排除されていませんね。確認をさせてください。

【中谷国務大臣】

 我が国といたしましても、現在、我が国周辺の海域等につきましては常に関心を持っているわけでございますが、警戒監視につきましては、自衛隊として、南シナ海において常続的な警戒監視活動は行っておりませんし、現在、その具体的な計画を有しているわけではございません。

【長島委員】

  では、南シナ海の状況にいきましょう。 皆さんのお手元、三ページ目をごらんになってください。五〇年代から中国が盛んに海洋進出を繰り返しているというこれはクロノロジーであります。
 問題は、今、南沙諸島で大変懸念が広がっておりますが、四ページ目をごらんください、海洋に関する法解釈がどうも、我が方、日本やアメリカと中国が少し異なっているんですね。 例えば、EEZ沿岸国への配慮。我が国、アメリカは、経済上の利益を侵さないこと、こう言っているわけですが、中国は、経済と安全保障の利益を侵さない。したがって、二つ下へ行きますと、EEZにおける他国の軍事活動への対応、我が国もアメリカも規制していません。しかし中国は、他国の活動に対する規制を具体的に実施しております。 したがって、二〇〇九年には、インペカブルというアメリカの海軍の音響探索船ですかが中国海軍によって妨害を受けたり、あるいは米海軍のEP3と中国の戦闘機が接触をしたり、こういう事件が後を絶たないわけであります。中国側は、EEZにアメリカが警戒監視であれ何であれ入ってきたらそれは規制をする、場合によっては接近してくる。 先日の事例では、わずか六メートルまで、P8というアメリカ海軍の哨戒機、二〇一四年八月、これに中国の戦闘機が異常接近してきた。こういう危険な事例が後を絶たないわけであります。まさに一触即発と言ってもいい。
 これに対して、アメリカは最近ギアを上げてきているんですね。 この前のシャングリラの場でも、カーター国防長官が何と言っているかというと、中国側を激しく非難して、最近行われている人工島、つまり埋め立て、この問題を非難しました。 それと相前後して、ラッセル国務次官補は、警戒監視活動を続けていく、そして国際的な海、空域である限り、航行の自由の権利を行使すると。 そして先月の二十日には、わざわざ米海軍はP8の対潜哨戒機にアメリカのCNNテレビのクルーを乗せてこの人工島に接近して、そして中国海軍からアラート、こちらは中国海軍だ、軍事区域に近づいている、直ちに退去せよ、こういう警告を受けている。本当に、そういう意味では、一触即発と言ってもいいような状況が今続いているわけですね。 こういう状況の中で、先ほど重要影響事態のところでまさに大臣がお示しになった、深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合で、しかも我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶような可能性がある場合には、先ほどるる大臣がおっしゃった、後方支援を含む協力活動をする、こういうことなんです。
 それで、大事なことを申し上げます。 今までは米軍だけだったんです、相手は。これは先ほどたしか外務大臣が少しお触れになりましたけれども、米軍のみならず、今回の法案では、外国軍隊に対しても、国連憲章の目的を達する、実現する、そういう目的に資する限り後方支援をする、こういうことを言っておるわけですけれども、では、アメリカだけじゃなくて、アメリカを離れて、例えばフィリピンやマレーシアとこういう協力をする可能性は南シナ海であるんでしょうか。

【中谷国務大臣】

 一般論ではありますが、特定の地域でございますので、現時点において言及することはお控えをさせていただきたいと思いますが、せんだってのシャングリラの会合におきましても、アメリカのカーター長官も、またオーストラリアの防衛大臣にしても、この海域における中国の行動等につきましては、非常に、法の支配を逸脱した、力による権益の拡大であるということで、基本的なスピーチにおきましてもそういうことを指摘いたしましたし、またその後、日米また日米豪の会談を行いましたけれども、こういった認識等につきましては、各国共通したものでございました。

【長島委員】

  皆さんの三ページにまた戻っていただきたいんですが、一九九二年に在比米軍が撤退をしました。クラーク、スービック両基地からアメリカ軍が撤退をした。その直後、このクロノロジーには書いてありませんが、中国が領海法というのを制定するんですね。公布するんです。この中国の領海法に基づいていわゆる九段線、今、中国が盛んに人工島を埋め立てているこの地域ですね、この九段線が決められるわけですね。もっと言えば、九段線というのが先にあって、それを後追いで領海法で、これは全部うちの領域だ、こういうふうに言ったわけですが、日本政府はこの領海法のエリアが中国の領海であるということを認めているんでしょうか、外務大臣。

【岸田国務大臣】

 九段線に関する我が国の立場ですが、この九段線に関しましては、中国側から法的な根拠等、詳細な説明は受けておりません。我が国の現在の立場は、中国側に対しまして、中国側の主張をしっかりと法的に説明するように求めている、これが我が国の現状の立場であります。

【長島委員】

  この場で、認めていないということを断言することはできないんでしょうか。

【岸田国務大臣】

 今現在の我が国の立場、考え方は、今申し上げたとおりであります。現状は、今、その段階にとどまっております。

【長島委員】

  問題は、領海を形成する、あるいはEEZを形成する基線ですね。島、岩礁なら岩礁、これは国際ルールがありますよね。単なる岩で、時々出てくるような、海面から頭を出すような岩では、これは領海を形成する基線、いわゆる領海基線とは認められない、こういうことになるんですが、日本政府として、そういうルールに基づいていますよね。

【岸田国務大臣】

 当然のことながら国際的なルールに従っているわけですが、この南シナ海における公海の有無等を判断するに当たりましては、排他的経済水域等の根拠となる地形を全て把握する必要があります。そういったことがありますので、現状においてこうした困難がありますので、公海等につきまして正確に確認するのは困難であるというのが我が国の立場であります。

【長島委員】

  わかりました。 なかなか外交上の理由もあって確たるお答えがいただけないんですが、例えばアメリカ合衆国。アメリカ合衆国は、この十二海里、中国が主張している人工島を中心とする十二海里の領海は認めていない、進入も辞さず、これはまさに公海だからどこの国の領海でもない、こう言っていますね。 このアメリカの姿勢は、日本政府としては支持するんでしょうか。

【岸田国務大臣】

 我が国として、第三国、米国等の他国の立場について解説する、申し上げる立場にはないと考えております。 こうした米国の取り組み状況につきましては、我が国としましても関心を持ちながら注視をしております。

【長島委員】

  これは余りごまかしていただきたくないんですね。 つまり、先ほど法制局長官とやりとりしたように、他国の領域の中でやれること、やれないことがあるんですよ。アメリカと同盟を結んで、場合によっては、アメリカと一緒になってこの海域で警戒監視活動をやるかもしれないんです。平時にできることが重要影響事態でもできるということになれば、アセット防護をやる可能性があるんです。
 そういう中で、アメリカが認めていない十二海里、しかし、日本政府としてはなかなかいわく言いがたい、これでは、日米の間の協力作戦は、いざというときですよ、こんなことは起こってほしくないです、難しいじゃないですか。シームレスにやるなんて大見えを切っていますけれども、本当にそのように一体なるんでしょうか。そこだけお答えください。

【岸田国務大臣】

 まず、我が国の公海等に対する立場、南シナ海における考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。公海についても正確に確認するのは困難である、これが立場であります。
 一方、米国の立場につきましては、特に米軍の軍の運用について一々申し上げる立場にはありませんが、いずれにしましても、我が国として、法の支配の貫徹という観点から、米国とも緊密に連携していかなければなりません。 我が国の現状については、今申し上げたとおりであります。

【長島委員】

 なかなか正面からお答えいただけないんですけれども、ただ、先ほど防衛大臣もおっしゃったように、これは、確認することは困難とか、やはり曖昧にしておいたら日米の計画策定ができないですよね。共同計画の策定、これに私は支障を来すと思うんです。だから、そういうことを含めてきちっとやっていただかなきゃいけない。もちろん、そういうことをやることがいいか悪いかについては、同僚議員からいろいろこれから質問があろうかと思いますよ。しかし、そこは政府としてきちっとした取り組みをしていただかないといけない。
 最初の話に戻りますと、ホルムズしか何か念頭にないかのような御発言を、これは今度総理と直接やりたいと思いますが、余りやり過ぎると、ほかのところはいいのか。抑止力、抑止力と言っておきながら、何か抑止力を阻害するような発言を繰り返している、政府の、大臣の皆さんが。これは私はよろしくないと思います。その点も含めて、正面から御答弁をいただくようにお願い申し上げて、質疑とさせていただきます。 ありがとうございました。